男性も女性も更年期を過ぎると太りやすくなる
人生50年時代であれば、更年期以降というのは活動期を終えたあとであり、数年程度しかありませんでした。そのためか更年期という言葉を聞いてネガティブなイメージをもってしまう人も多いようです。
しかしながら、医学の進歩と食生活の充実により、人の寿命は急激に伸びていて、今や人生100年時代と言われています。更年期はそれ以降の30年から50年続く人生に備える折り返し地点として、前向きに更年期を認識するべきです。
しかしながら、男性も女性も更年期を過ぎると太りやすくなっていくことが知られています。理由のひとつとしては、男女ともに加齢とともに基礎代謝が低下してしまうことがあります。
なぜ、加齢とともに基礎代謝が低下するのでしょうか。
主な理由としては、筋肉などの除脂肪量の低下があげられます。筋肉などの除脂肪量が低下することによって、活動時のエネルギー代謝量が低くなってしまいます。また、活動量の低下などそのほか複数の要因が組み合わさり、総エネルギー消費量(24時間相当)も加齢に伴い低下していきます。
例えば、食事摂取基準2015年度版に示されている、日本人の年代別基礎代謝基準値でみると、性別を問わず加齢とともに基礎代謝量が低くなっていきます。具体的には、体重70㎏の男性の場合、基礎代謝量の推定値は、20歳代で1680㎉、50歳代で1505㎉となり、1日でおよそ175㎉の差になります。1カ月だと5400㎉もの差があるということですね。若いときと同じ食生活をしていたら太りやすいというのもうなずけますね。
内蔵脂肪増加に注意!
更年期を過ぎると太りやすいと言われるのは、基礎代謝の影響だけではありません。
オーストラリアでの研究では、更年期が近づくと、女性は平均2・1㎏体重が増加したということです。しかも、その際に増加した体脂肪のほとんどは、お腹まわりについてしまったというのです。
約100名の白人女性と約50名の黒人女性を対象に閉経前後のホルモンと体の変化を研究した報告によると、女性ホルモンのエストロゲンが閉経の約3年前から徐々に低下し始め、無月経となるとさらに大幅に減少しました。それにともない、体重と体脂肪の軽度の上昇が見られたということです。
しかし注目すべきは、お腹の内臓脂肪が増加するとともに、自発的な活動量がかなり減少していたということです。つまり、閉経期には女性ホルモンが減るとともに、何らかの原因で活動量も減り、結果として太ってしまい、とくに内臓脂肪が増えてしまう可能性があるということですね。
活動量が減る原因ははっきりしませんが、やはり更年期は女性ホルモンの変動によるいらいらや不安などの精神的な症状が出やすくなったり、ホットフラッシュや頭痛、肩こりなどの体の不調がでやすくなります。
そうしたトラブルがあると、どうしても家にこもりがちになったりして、活動量が減る傾向になってしまうのかもしれませんね。活動量が減れば、当然消費するエネルギーも減ってしまいますから、太りやすくなってしまいますね。内臓脂肪が増えると、体脂肪が増えるよりも炎症が起こりやすくなります。
更年期であっても、食生活を見直すことで、肥満を防ぐことはもちろん可能です! 更年期に特別なダイエット法があるわけではありませんが、健康な体をつくっていただければ幸いです。
医師がすすめる エビデンスベースの「体にいい」食習慣(著:CHIEKO)より
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