時代特有の生活様式や生活習慣の影響により、世の中で急増する疾患があります。現在、その代表例とされているのが「スマートフォン症候群」です。
これは、スマートフォンを頻繁に使用することによって生じる慢性的な不調のことで、非常に多くの人が何らかの症状を訴えています。
主な症状としては、①ストレートネック、②眼精疲労・ドライアイ(乾性角結膜炎)、③腱鞘炎などが挙げられます。
①ストレートネック
「ストレートネック」は正式な病名ではありませんが、首の骨(頸椎)がまっすぐになってしまった状態を指します。正常な頸椎は、中央部分が前に張り出し、上部が後ろに反り返るようなカーブを描いています。この角度が30度以下になると「ストレートネック」とされ、重度の場合にはまっすぐどころか逆に反ってしまうこともあります。
この状態は、スマートフォン使用時にうつむいた姿勢を長時間続けることが主な原因とされ、特に首の筋肉が弱い傾向にある女性に多く見られます。
症状としては、頸椎のカーブが失われることで血管や神経が圧迫され、また筋肉への負担が増すことにより、首の痛み、肩こり、頭痛、耳鳴り、難聴、めまい、吐き気、嘔吐、しびれなど、さまざまな不調が現れます。
治療を受けても短期間での改善は難しいため、予防として長時間の連続使用を避けることや、正しい姿勢を意識することが大切です。
②眼精疲労・ドライアイ
眼精疲労やドライアイは、スマートフォンやPC画面の長時間の見過ぎが原因です。軽い症状のように思われがちですが、慢性的なドライアイは決して軽視できません。
症状としては、目の刺激感、灼熱感、かゆみ、つっぱるような違和感、視界のかすみ、まぶしさなどがあり、目の機能が正常に働かなくなる恐れもあります。さらに、目の不調は頭痛やめまい、吐き気、嘔吐、さらには抑うつやイライラといった二次的な症状を引き起こすこともあります。
涙は目に酸素や栄養を届ける役割を担っており、目の健康維持にとって非常に重要です。通常、まばたきによって涙が目全体に行き渡りますが、PC画面や小さな文字を長時間見続けていると、まばたきの回数が約3分の1に減少してしまいます。これにより一時的なドライアイが常態化し、慢性ドライアイの原因になるのです。
予防としては、意識的にまばたきをすること、エアコンの風が直接目に当たらないようにすること、暗い部屋でのスマートフォン使用を避けること、画面を目に近づけすぎないこと、そして長時間使用しないように注意することが挙げられます。
③腱鞘炎
腱鞘炎には、手首に起こる「狭窄性腱鞘炎(ドケルバン病)」と、指に起こる「弾発指(ばね指)」の2種類があります。スマートフォンの長時間使用だけでなく、PCのキーボードやマウス、ゲームコントローラーの多用、また手や指、手首を酷使するピアニストやスポーツ選手にもよく見られる疾患です。
放置して悪化すると、痛みが強くなったり、指が伸ばしにくくなったり、手や指に力が入りにくくなることがあります。違和感を覚えた時点で、早めにケアを行うことが大切です。
一般的な治療法には、抗炎症薬の外用、重症例ではステロイド注射や一時的な固定などがあります。なお、プロ野球選手の田中将大選手や大谷翔平選手は、自身の血液から採取した血小板を利用する再生医療を受けており、体操の内村航平選手は、患部に衝撃波を当てる「体外衝撃波療法」を受けたことでも知られています。
予防のためには、自分の手のサイズに合ったスマートフォンを選ぶこと、片手での操作を避けること、長時間使用する際はスマートフォンを持ち続けずスタンドなどを活用すること、そして何よりも「長時間使いすぎない」ことがポイントです。
便利なスマートフォンですが、やはり正しい使い方を意識することが何よりも重要です。体に負担をかけない使用法を心がけ、快適なデジタルライフを送りましょう。
「男のヘルスマネジメント大全」(著:石川雅俊)より
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