厚生労働省が「健康日本21」のなかで、節度ある適度な飲酒として、1日平均、純アルコール量として20g程度と定義しています。これは、ビールなら中瓶1本、日本酒なら1合、チューハイ7%なら350㎖1本、ウイスキーならダブル1杯程度です。
日本人を対象に40歳から79歳の男女11万人を9〜11年間追跡調査した研究で、純アルコール0.1〜 22.9g/日の飲酒量で総死亡率が低下するという結果が出ています。総死亡で見ると、1日平均23g(およそ缶ビール350㎖程度)の純アルコール摂取がもっとも死亡リスクが低いという結果でした。
ただし、これは男女の平均値なので、アルコールの害を受けやすい女性では、より少ない飲酒量が適切と考えられています。そのほか、この研究では遺伝的なお酒への「強さ」の個人差は考慮されていません。
摂取したアルコールは、体内でアセトアルデヒドという物質を経て、酢酸に分解されます。アセトアルデヒドは気持ち悪くなったり、頭痛を起こしたり、いわゆる悪酔いの原因物質で、発がん性も指摘されています。
日本人にはこのアセトアルデヒドを分解する能力が低い遺伝子を持つ人が多くいます。沖縄・九州南部・東北地方では3割以下と少なめですが、九州北部や京都・大阪・愛知では5割前後と多くいます。
この遺伝子が1本の人はお酒に弱めではあるものの、習慣的に飲酒するとある程度分解酵素も増えるため、それなりに飲める場合もあります。しかし、この遺伝子を2本持つ人はいわゆる下戸と言われる、少量のアルコールでもすぐ顔が赤くなったり、フラフラになる体質になります。
下戸の人は、アルコールを摂取すると、アセトアルデヒドがなかなか分解されずに体に留まるため、体への害が非常に出やすいことがわかっています。
下戸の人でよくお酒を飲む人の食道がんの発生率は、お酒に強い人でよくお酒を飲む人と比較すると、約12倍にもなると言われています。そのため、このような下戸体質の人は、健康のために基本的にアルコールは飲まないようにするべきですね。
飲酒は40歳になってから!?
飲酒による体への影響は様々なものがあります。
・認知機能への影響
習慣的に過量の飲酒をしていれば、脳にダメージが加わり、認知機能が低下します。一方、全く飲酒をしないよりは、少量の飲酒は認知機能保護効果があるとの報告もあります。特定の遺伝子を持つ人の場合は、少量の飲酒も認知機能に悪影響をもたらす可能性が指摘されていますので注意が必要ですね。
・肝臓への影響
飲酒量が増えるほど、脂肪肝のリスクが高まります。アルコール性肝炎を起こす場合もあります。さらに悪化すると、肝硬変や肝臓がんといった病気にまで悪化する場合もあります。定期的な健康診断で、肝臓の数値を確認するなどして肝臓の健康を維持したいですね。
2022年に医学雑誌Lancetに掲載された、世界204の国と地域で様々な年代の飲酒と病気の関係を調査した研究があります。
それによると、39歳以下の年代は飲酒によって得られる健康メリットはほぼないという結果でした。むしろ、飲酒運転による事故や、自殺などの様々な飲酒による害が大きいということでした。
一方、40歳以上の年代で基礎疾患のない方の場合は、少量のアルコール摂取により心血管疾患のリスクが改善される可能性が示唆されています。
医師がすすめる エビデンスベースの「体にいい」食習慣(著:CHIEKO)より
![]() | 『医師がすすめる エビデンスベースの「体にいい」食習慣』 (クロスメディア・パブリッシング) |