健康を気遣う人が多数派になりつつある現在でも、包括的なマネジメントを実行している人はごく少数派です。やる気は十分でも、思いつきで実行したり、主観的な評価に終始したりするなど、効果を最大化する手法とは言い難い状況です。
ここでは、理想的なマネジメントプロセスの一つの基本サンプルをご紹介いたします。
ヘルスマネジメントの全体像としては、
「①データの可視化による現状把握」
「②プログラムの作成」
「③プログラムの実行(効果の推移を記録)」
「④評価、プログラムの修正」
「⑤実行」
という流れになります。
最初の段階で問題や課題を抽出し、優先順位をつけて目標を立て、実現するための行動策を包括的なプランとして立案・実行していきます。この進め方は、ビジネスのプロジェクト実行と基本的には変わりません。
ただし、目標達成後は「晴れて終了」ではなく、心身の良好な状態を維持するために、持続可能で緩やかなプログラムを生活に定着させていくことが求められます。
①データの可視化による現状把握
まずは現状を把握するために、必要なデータをそろえましょう。主なデータは以下のとおりです。
現在の検査データ
健康診断など過去のデータ
既往歴、家族歴
慢性的な疾患・不調リスト、体質の傾向チェック
食習慣に関するデータ
運動習慣に関するデータ
睡眠習慣に関するデータ
アルコール・たばこなど嗜好品の習慣と、それによる反応・不調
ストレスチェック
メンタルの疾患・不調リスト、精神的傾向のチェック
これらのうち、「体質の傾向」「精神的傾向」については、自分で思いつく限りリストアップしたものを用意し、医師に提出しましょう。診断基準などを参考にした問診やチェックが行われ、必要に応じて検査も実施されます。
また、ストレスチェックをご自身で行う場合には、できるだけ医学的観点から信頼性の高いチェック表を選ぶことが望ましいです。厚生労働省が推奨する「職業性ストレス簡易診断システム」に準拠したものは信頼性があります。
さらに、アルコールやたばこなどの嗜好品については、「何を」「どのくらいの量」「どのくらいの頻度」でたしなむかだけでなく、それによって心身にどのような反応が起こるのかも洗い出しておきたいところです。
②プログラムの作成
次のプロセスでは、収集したデータをもとに目標を設定し、メニューを組み合わせてプログラムを作成します。作成にあたっては、できれば医師に各問題の深刻度や緊急度を評価してもらったうえで、優先順位をつけて包括的かつ最適なプログラムに仕上げることをおすすめします。
早急に医療の介入が必要な不調や疾患はもちろん最優先となります。そのほかのマイナートラブルについても、潜在リスクや緊急度の判断は医師に委ねるのが最適です。
プログラムの内容としては、「食事」「運動」「睡眠」「嗜好品の摂取コントロールや離脱」「ストレスマネジメント」、そして「医学的治療」が主な領域となります。これらの最適な手法と目標を設定するためには、自分にとって注力すべき領域だけでも、専門家のサポートを受けることが望ましいです。
ヘルスマネジメントプログラムにおいて、専門家は「コンサルタント」「アドバイザー」「コーチ」「トレーナー」などの役割を担います。さらに、努力を間近で見守る理解者として、苦楽を共にするコンパニオンにもなってくれるでしょう。相性のよいパートナーと出会えれば、張り合いや楽しさを感じながら継続しやすくなります。
禁煙やダイエットについては、医療の力を借りることも可能です。安全性と有効性を日々高めている医療のサポートをうまく活用したいものです。
③プログラムの実行(効果の推移を記録)
このプロセスでは、できるだけ快適に、楽しくプログラムを実行し、「やめないこと」「継続すること」を主眼に置きます。そのためには、実行した内容や心身の変化を記録する「レコーディング」が非常に重要です。
現状や推移を“見える化”することは、直感的な把握に役立ち、強いインパクトを与えます。成果が可視化されることで、モチベーションの維持にもつながりやすくなります。
かつて流行した「レコーディングダイエット」は、1日に摂取した食事や体重・体組成、運動状況などを記録するだけの方法ですが、それでも効果があったからこそブームとなりました。ここにも“見える化”の力があらわれています。
記録には、アプリやソフト、さらにそれらと連動する体組成計やスマートウォッチなどを活用すると、手軽でグラフ化なども自動で行われ、より合理的に目標達成へと進むことができます。
④評価、プログラムの修正
健康レベルを高めるためのプログラムでは、当初のプランに固執することが必ずしも正解とは限りません。一定期間が経過した時点で、効果や適正さを評価し、必要に応じて修正することが求められます。
「継続できないほどつらい」「一般的なデータと比べて効果が著しく低い」「副反応がつらい」などのケースや、血液検査でネガティブな変化が見られた場合には、方法や強度・頻度の見直しを行いたいところです。
ただし、多くのケアやトレーニングには「停滞期」と呼ばれる効果が表れにくい時期があります。この時期を我慢して乗り越えるべきか、手法を変更すべきかの見極めが重要です。このような場合にも、医師やトレーナーなどの専門家のアドバイスを受けることで、プログラムの最適化がしやすくなります。
こうして、「評価とプログラムの修正」→「実行」→「評価と修正」→「実行」というサイクルを定期的に繰り返しながら、目標に向けてプログラムを進行させていきます。
ヘルスマネジメントには、アプリやツールの活用も非常に有効です。特にトレーナーや食生活アドバイザーなどをつけられない場合は、積極的に利用したいところです。
なかでも、体重・体脂肪率・筋肉量の変化をこまめにモニターできる高機能な体組成計は、必需品のひとつに挙げられます。体重と体組成に加え、モニターすべき主な項目としては、食事・運動・睡眠があり、これらについてもスマートフォンのアプリや、センサー付きのモニターなどが有効です。
ヘルスマネジメントの基礎について、ご理解いただけましたでしょうか。
最高のコンディションを実現するために、ぜひこのプログラムを生活に取り入れ、定着させていきましょう
「男のヘルスマネジメント大全」(著:石川雅俊)より
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