2018年にOECD(経済協力開発機構)が行った調査によると、日本人の平均睡眠時間は7時間22分であり、加盟国の中で最も短いことがわかりました。
仕事のストレスで眠りが浅くなる、つい夜更かしをしてしまう――そんな日の頭や体の状態を思い出してみてください。睡眠不足が慢性化すると、その状態が継続したり悪化したりするだけでなく、新たな不調や病気を引き起こす可能性があります。
睡眠時間と生活習慣病との関係についての研究では、睡眠時間が6時間未満の人は、6~8時間未満の人と比べて、がんの発症リスクが6倍、心筋梗塞が3倍、糖尿病が3倍、認知症が5倍、うつ病が5.8倍、自殺率が4.3倍にのぼると報告されています。
睡眠の役割については、「脳と体のメンテナンス」と大まかに言われることが多いですが、実際には睡眠中、生体の根本的なレベルで精妙かつダイナミックな活動が行われています。では、寝ている間に体内では何が起こっているのでしょうか? また、睡眠不足にはどのようなリスクがあるのでしょうか?
その一部ではありますが、7つ紹介します。
睡眠不足の8つのデメリット
1 細胞レベルで疲れが残る
入眠後20〜30分ほどで訪れる最も深い眠り(ノンレム睡眠)の間に、細胞の修復や再生を促す成長ホルモンが多く分泌されます。しっかり熟睡できないと、肌や筋肉、骨、内臓器官などの細胞が修復・再生されず、全身が慢性的に疲れた状態になってしまいます。
2 感染症にかかりやすくなる
睡眠が不足すると、B細胞やT細胞、免疫グロブリンIgAなどの免疫細胞が十分に産生されません。また、T細胞がウイルスなどの抗原情報を長期間記憶することもできなくなります。そのため、睡眠不足は感染症への抵抗力を下げてしまいます。
3 ワクチンの効果が低下する可能性がある
体内に侵入したウイルスに対する抗体は、睡眠中にB細胞によって活発に作られます。A型肝炎ウイルスを用いた研究では、ワクチン接種日によく眠った人は、徹夜した人の2倍の抗体が産生されました。睡眠不足は、ワクチンの効果にも影響を及ぼすと考えられています。
4 太りやすくなる
睡眠不足になると、食欲を抑えるホルモン(レプチン)が減少し、逆に食欲を増進させるホルモン(グレリン)が増加してしまいます。さらに、エネルギー代謝を促す成長ホルモンの分泌も減少するため、太りやすい体質になります。
5 血圧や血糖値が上昇し、生活習慣病のリスクが高まる
睡眠不足が続くと、交感神経が常に緊張状態になり、ストレスホルモンであるコルチゾール(副腎皮質ホルモン)が過剰に分泌されます。その結果、血糖値が上昇し、高血圧や高血糖の状態になりやすくなります。進行すると、糖尿病や狭心症、心筋梗塞などの重大な病気のリスクも高まります。
6 メンタルが不安定になる
コルチゾールはストレスによって分泌されますが、過剰になると脳の海馬を萎縮させ、過度な不安感や抑うつ状態を引き起こす可能性があります。精神的な安定のためにも、十分な睡眠が必要です。
7 学習能力が低下する
睡眠中、脳はその日に得た情報や経験を整理し、記憶として定着させています。研究では、記憶の定着には6時間以上、できれば8時間程度の睡眠が望ましいとされています。
8 認知症の予防機能が働かなくなる
脳内では睡眠中に、アルツハイマー型認知症の原因物質とされるアミロイドβの分解や除去が行われています。ぐっすり眠れない状態が続くと、アミロイドβが蓄積し、脳の神経細胞が破壊されるリスクが高まります。
現代の生活は刺激やストレスにあふれ、自律神経のバランスが崩れやすい環境にあります。また、シフト勤務や長時間の通勤、ネット視聴による夜型生活などにより、睡眠不足や睡眠障害のリスクも高まっています。
そのため、日常生活にリスク要因がある人は特に、良い睡眠をとるために環境や生活習慣を整えていくことが大切です。良質な睡眠習慣は、仕事で活躍するためにも、健康で長生きするためにも欠かせない重要な要素であることを、ぜひ心に留めておきましょう。
「男のヘルスマネジメント大全」(著:石川雅俊)より
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