終身雇用の終わりが取り沙汰され、起業家やフリーランスの活躍が注目される現代。「組織に依存せず、個人の力でも成功できるようになれたら…」と考えている方も多いのではないでしょうか。
今回、鈴木ふみ奈氏の書評コラム『道は開ける』特別編として、人気グラドル・倉持由香氏との特別対談が実現!! 倉持氏初の著書『グラビアアイドルの仕事論 打算と反骨のSNSプロデュース術』から、「個人の力で仕事を獲得し、成功する方法」をふみ奈氏に聞き出してもらいました。
■前回の書評はこちら→『成功の秘訣は「ゼロ」の自分にイチを足すこと!|鈴木ふみ奈の「道は開ける」』
グラドルが語る、すべての職業に役立つ「実践的仕事論」
――自らを「尻職人」と称し、「#グラドル自画撮り部」のハッシュタグを流行らせる等、セルフブランディングやSNSプロデュース術が話題を呼んでいる倉持さん。今回グラビアアイドル史上初の「ビジネス書」を出版されましたね。
倉持:以前、ビジネス系のメディアで私なりの仕事論をお話ししたときに、ページビューがすごいよくて、ツイッターのトレンドワードの3位にまでなったことがあるんです。それがきっかけで、出版社の方から声をかけていただいて。
鈴木:あの記事、話題になってたよね!
倉持:この本でも、メディアに出る仕事の方はもちろん、そうじゃない仕事の方にも役立つテクニックを書いたつもりです。今の時代、芸能人じゃなくても、セルフプロデュースとかSNSの使い方、仕事をもらう方法とか、意識されてる方が多いと思うので。
鈴木:読ませてもらって、「ほんと濃いなぁ」って思ったんですよ。実体験からの学びが凝縮されてて、共感できるところもあれば、逆に「そうなんだ!」って勉強になったところもたくさんあって。それこそ実際、もっちーがたくさん悩んで苦労してたことを知ってるエピソードもあって、「あのときってああいうふうに考えてたんだ。だから最後、うまくいったんだ」みたいな気づきが何度もありました。メディアに出る人はもちろん、そうじゃない人もすごく勉強になるんじゃないかなと思います。
あと、すっごく読みやすかった! 自然と言葉が入ってくるの。もっちーが思ってること、学んできたことを、もっちー自身の言葉でちゃんと伝えられてるのが素敵だなって。
倉持:「自分の言葉で書く」っていうのはかなり意識しました。ビジネス書って、よくカタカナのビジネス用語が出てきますよね。なんか難しいこと言ってる感じなんだけど、頭に入ってこない、「ふんふんなるほど、わからん」みたいなときある(笑) で、読み終わった後に全然吸収できてなかったらもったいない。だから、「とにかくキャッチーで、スラスラ読めて、ちゃんと一冊、吸収しやすい本にする」っていうのを目標にしました。
倉持:それと今回、中盤に「自画撮り術」を紹介するページがあって、カラーでグラビアも入れていただいて。それがなんか好評みたいで。
鈴木:それ見て思ったのが、私、よく集中力とか仕事術系の本を読むんですけど、何かに「会議室に水着のお姉さんのポスターを貼っておくと、効率が上がる」って書いてあって、この本、まさにそれだなって。読みながら効率を上げられる(笑)
「心におじさんを飼ってる」最強の顧客目線
――冒頭から印象的でした。幼少期から「女体」に興味があったのでグラドルになった、と書かれていましたね。
倉持:ずっとフェチ系の雑誌を読んでました、竹やぶで。なんでああいうのって竹やぶに落ちてるんですかね、だからなんか湿ってるんですよね(笑) もうずっと漁ってましたね、近所の男の子たちと一緒に、「エロ本探検隊」ですね。
鈴木:もうワードが面白すぎる、「エロ本探検隊」ってなんなの(笑)
倉持:楽しいよエロ本! やっぱり紙媒体のページをめくるドキドキ感っていうのが。今は電子書籍でスワイプって感じも多いですけど、やっぱり、あの紙の感じがいい。袋とじとかもね、わくわくしますよね。
鈴木:うちのマネージャーさんがすごい共感してた。「おじさんの心をよくわかってる」って。
倉持:恋愛対象は男性なんですけど、やっぱりなんか女体がすごい好きです。男性の体は全然興味ないです。女体しか興味ない。心におじさんを飼ってるんです。
鈴木:それ、すっごい感じます。もっちーの視点って、普段からそういう感じなんですよ。グラドル仲間で集まってて、何気なく物を取ろうとしたときとかに、「ふみにゃんちょっと待って! そこ撮らせて!」って撮られたりとか。しかも自分が撮られ慣れてるから、被写体にかけたほうがいい言葉とかもわかってるんです。
倉持:私の中のおじさんレーダーがキュピーンってなって、「ああいいよいいよ、それいいねー」「いいお尻してるねー」みたいな、グラビア撮影が家で始まる(笑)
鈴木:いいなー、私の体にもおじさん引っ越してくれないかな(笑)もっちーは「顧客の目線=自分の目線」だから、最強ですよね。
鈴木:そう、顧客目線のところで、一つ思い出したのがあって。もっちーが出てたテレビ番組で、その場にあるものでモノボケしないといけなかったときに、すごいなって思ったのが、ザルを肩につけて「ザク」ってやったんですよ。
倉持:ああ、「プールでびしょ濡れモノボケバトル」。プールサイドにボールとかいろんなものが置いてあって、水着のグラドルがモノボケするって企画で。「グラドル好きの層に刺さるネタってなんだろう」って考えたときに、とっさに「ガンダムにしよう」って思いついて、ザルで「旧ザク」って。
鈴木:その発想がほんとすごい! 「自分をかわいく見せよう」とかじゃなくて、とっさに「おじさんに刺さるもの」っていう視点で発想できる。それに、「ザク」とか普段からアンテナ張ってないと出てこないと思うんですよ。
倉持:自分のファン層を考えて、顧客のニーズを想像するっていうのが大事ですね。
鈴木:そんな瞬時のモノボケにもマーケティングが入ってるんだね。
コンプレックス×SNS発信でニッチトップを狙う
――売れない貧乏時代が続き、ネットカフェで寝泊まりするなど、苦労が続いたという倉持さん。転機になったのが、「お尻が大きい」という自分だけの特徴をアピールし始めたこと。自分の強みを活かしてニッチトップを狙ったわけですよね。
倉持:それまでずっと模索してました。グラドル界ってかわいくて胸も大きい子が腐るほどいる業界なのに、私はどこも中途半端で。「どうしよう」って伸び悩んでたときに、なじみのカメラマンさんから「もっちーはその大きなお尻がいい。それ活かせなかったら無駄尻だよ」って言われて。それまでお尻が大きいのがコンプレックスだったんですけど、カメラマンさんって一番客観的に見てくれる人だし、信じてみるかと。やるなら徹底的にと思って、その日からとにかくお尻の画像をTwitterに載せ続けましたね。
鈴木:そこがすごいの。そんなすぐ実行できる人って意外と少ないよね。後輩とかにアドバイスしても、やらない子がほとんどだから。
倉持:行動力だけはあります。仕事に関しては。プライベートはそうでもないけど、食器洗いとかすぐ溜めちゃうし(笑)。
鈴木:個人的にいいなと思ったのが、「#尻時計」の裏話。「尻職人が3時をお知らせします」みたいに、お尻写真と一緒に定期的に時刻をツイートするもので。これ、「単純接触の原理」っていう、「人は接触回数が多い相手に好感を持つ」っていうのを応用してるらしいんですね。この原理は私も知ってたんですけど、それをSNSと掛け合わせてやったっていうのがおもしろいなって。
しかもこれ、かなりアバウトなんだよね。「尻職人が大体17時くらいをお知らせします」とか、17時じゃないんかい!みたいな(笑)
倉持:雑でいいやって(笑) 自分の負担が少ないように。
鈴木:それに結構衝撃を受けたんですよ。私、変に完璧主義者なので、「17時ぴったりに更新しなきゃ」とか思っちゃうし。発売前のグラビアの告知で、水着を隠さなきゃいけないときとかも、私は加工アプリですごくきれいになぞって消したりとかしてたんですけど、もっちーはすごい雑にやるんですよ、ざーって。でも、それがかえってエロかったりする。その絶妙なバランス、センスがいいんですよね。
倉持:「こんなもん、こんなもん」って。 SNS疲れしたら一番よくないんだよね。自分なりのペースで続けられることが大事なので。継続は力なりですね。
鈴木:そこはもう、めっちゃ勉強になりました。「一回載せた写真はもう載せちゃいけない」って思ってたけど、そうじゃなくて、「自分をアピールできる良い写真なら、何度もツイートして人目に触れさせるほうが大切だ」って考えるとか。そういうのを教えてくれたのがもっちーでした。
「グラドル自画撮り部」「ニトリズム」…キャッチーなコピーを思いつくには?
――「尻時計」など、キャッチーなワードを考えるのが本当にお上手ですよね。こういったハッシュタグなどはどうやって考えているんですか?
倉持:「グラドル自画撮り部」に関しては、カタカナと漢字を入れようと思ってたんですよね。なんかその組み合わせが好きで、「丸の内サディスティック」とか「大正デモクラシー」とか(笑) 覚えやすいというか、耳障りがいいじゃないですか。AKB48の曲とかもそれが多いんです。「大声ダイヤモンド」とか。
そういう、キャッチーなフレーズの法則みたいなものがあるので、世の中で流行っているものや、自分がキャッチーだなって思ったものとか、たくさんメモして。それを眺めながら法則性を見つけたり、アレンジしたりしてるうちに、パッと思いつくんです。
倉持:あと、「自画撮り部」の「部」に関しては、青春感を意識してつけました。「全国大会に向けてみんなでがんばろう!」みたいに、目標を掲げて、部活のようにさわやかにやることで、ファンとグラドルとで一体感を感じられるかなって。応援してる子が全国行ったらうれしいですよね。そういう感覚になったらいいなって願いを込めて。
鈴木:センスありますよね。仲間やファンを巻き込んで、ストーリーをつくりながら広めていくっていうのもうまいし。
倉持:いずれそういう仕事に就きたいですね。マーケティングやPRに興味があって。今は「倉持由香」っていう商品を売ってるんですけど、別に倉持由香じゃなくてもいいし、それが誰か別の人とか、モノでもいい。何かを売る、広めるっていうのを仕事にしたいんですよ。
鈴木:なれそう、コピーライターとか。一言で人を引き付けるワードを作り出す力があるよね。この本も、ビジネス書ってちょっとお堅いイメージあるけど、「ニトリズム」とか気になる単語が出てきてとっつきやすいし。
倉持:ニトリズムは、相手の予想を上回る、「お、値段以上」の仕事をしようって意味なんですけど。ニトリって身近なお店だし、しっくりくるかなって。
失敗したときほど告知する!「仕事のおかわり」をもらう方法
――「相手の予想を上回る」って、大切なことですよね。
倉持:それが一番次につながることだと思っていて。「仕事のおかわり」をもらう条件というか。仕事ぶりが「妥当」だったとして、この先フレッシュな人が来ちゃったら、「飽きたからこっちの人でいいか」って取って代わられちゃう可能性がありますよね。そうならないためには、常に相手の予想を上回り続けないといけないんだなと。
鈴木:うん、本当にそう思う。もっちーってセンスや戦略もすごいけど、一番尊敬するなって思うのは、そういう努力家なところですね。こないだもっちーの家行ったら、泣きながらゲームしてるんですよ。「おじゃましまーす、ああ、もっちー泣いてる」みたいな(笑)
倉持:それは、仕事で格闘ゲームの大会に出ることになってて、泣きながら毎日練習してて。負けるのが悔しいというか、自分のミスがわかるのが悔しいんですよね。練習してきたことができない自分へのいら立ちとかで泣いたりして。でも、絶対毎日やる。
鈴木:もっちーって、格闘ゲームに関しては芸能界のトップレベルらしいんですよ。でも、「ゲームのプロの方の中に入ったときに、自分は……」って考え方なんです。プロ意識ですよね。「グラドルの中ではうまい」、で終わらないところを目標にしてるのが伝わってくる。
鈴木:あと、この本の「失敗したとわかっている仕事ほど、ちゃんと告知する」っていうのがね、響いた。これ、難しいことだと思うんですよ。自分で「失敗した」と思ったらやっぱり、普通の心理って「うわー、こんなの見られたくない」ってなりがちだと思うんですけど。
倉持:せめて告知することでちょっと帳消しというか、「ほら、私告知はしましたよ! 他の人の10倍くらい告知しました!」ってアピールしつつ、やっぱりオンエア見て、厳しい意見も聞いて、「そうだよなー」って悔しい思いをして、二度としないように気をつける、っていう。
鈴木:自分を客観的に見て、「今、これを自分にプラスに働かせるにはどうすればいいんだろう」って考えて、「ちゃんと告知をすることだ」って選択できる。それはすごいことだなって思いますね。
人生=自分クエスト。村人になるな、勇者になれ!
――ゲームと言えば、「人生はゲームのようなもの」と書かれていましたね。自分をゲームの主人公として、「自分クエスト」を積み重ねて経験値を溜め、より大きなクエストに向かっていくと。
倉持:そうですね、ゲーム脳だからかな。なんでもゲームっぽく考えるんですよね。そのほうが傷つかないから。「倉持由香」は芸名なんですけど、本名で全部物事を受け止めると傷ついちゃったりしてつらくなる。そんな豆腐メンタルな私が防御するための策として、「これはあくまでも『倉持由香』っていうキャラクターの『クラモチクエスト』の話であって、本体の私には関係ない」って思っておくんです。
鈴木:最近の書評で堀江貴文さんの『ゼロ』を取り上げさせていただいたんですけど、そこでも、「自分でルールを設けて、ゲームを攻略するような感覚で仕事をしていく」とあって。それならクエスト感があって楽しそうですよね。レベルアップを感じられるし。
倉持:そう、RPGゲームです、仕事も人生も。この本で伝えたいことは、「NPC、ノン・プレイヤー・キャラクターになるな」っていうこと。プログラミングされた「村人A」じゃダメで、勇者であるべきなんです。死んでも教会に行くだけで、やり直せるし。所持金は半分になるけど。
鈴木:それすごいリアル(笑) 現実でもそんな感じだよね。何か失敗しても、またやり直せる。お金は減るかもしれないけど(笑) 『ゼロ』にも、「失敗してもゼロに戻るだけで、マイナスにはならない。またイチから積み重ねていけば良いんだ」って書いてありました。
倉持:ちょっと痛いなってことがあっても何とかなるから。電源さえ切らなければ、コンティニューはできるんで、人生。なんか、自分の「人生クエスト」を放棄しちゃってる人が多すぎる気がするんです。考えることを放棄して、一生「ここはアリアハンの町です」って言い続ける人生って楽しくないじゃないですか。だから、勇者になろう。
鈴木:「今回の格言」ができた。みんな、勇者になろう!
〈今回の格言〉「みんな、勇者になろう!」
▼今回の書籍
『グラビアアイドルの仕事論 打算と反骨のSNSプロデュース術』 グラビアアイドル史上初のビジネス書!「グラドル自画撮り部」部長&「尻職人」倉持由香による、最新自己プロデュース術と実践的お仕事理論。 |
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1991年生まれ。ジースター・プロ所属。コンプレックスであったお尻を「100cmのもっちりヒップ」のキャッチコピーの下に推し始め、美尻を強調した自画撮りをTwitterへ投稿する「尻職人」として注目を集める。さらに「#グラドル自画撮り部」を立ち上げ、グラビアアイドルたちが同ハッシュタグを付けて自画撮りをSNSに投稿するムーブメントを生み出した。理論的にセルフプロデュースを行う姿勢と情熱はグラドルファンに止まらず知られ、グラビアアイドルとして活躍する傍らミスiD2018の審査員を務めるなど、プロデュース活動にも携わる。
鈴木ふみ奈 Suzuki Fumina
1990年生まれ。埼玉県出身。オフィスポケット所属。愛称は「ふみにゃん」。
日本大学芸術学部音楽学科サックス専攻卒業。2009年より雑誌グラビアを中心にデビューし、現在はタレント活動10年目に突入。ミス・ワールド・ジャパン2018審査員特別賞受賞。趣味・特技は麻雀、サックス、ピアノ、殺陣、ハイキック。最新DVD&Blu-ray「Golden Smile」好評発売中。オムニバス写真集「世界一えっちなハローワーク」(一迅社)が7月17日に発売。