たくさんのタスクを抱えている場合でも、その進め方は人によって異なります。ひとつのタスクを最後まで終えてから、他の仕事に手を付ける人もいれば、ある程度の区切りができるまでは、他のタスクに手が付けられないという人もいます。
几帳面な人ほど、こうした進め方をしているようですが、それでは後回しにしたタスクが、すべて遅くなってしまいます。
現代のビジネスはスピードが命ですから、すべてのタスクを同時並行で進めて、短時間のうちに全部のタスクをやり終える必要があります。これが、「マルチタスク」と呼ばれる仕事との向き合い方です。
集中力に限界がきたら休憩を
几帳面な人が、同時並行を苦手とする一番の理由は「頭の切り替え」ができないことにあります。上手に頭を切り替えて、すべての仕事を効率的に進めるためには、自分の「集中力」の限界点を見極めて、それを「切り替えスイッチ」として活用することです。
高校の授業は50分やって休憩、大学の授業は90分やって休憩、自動車の運転はカーナビが2時間で休憩を推奨するなど、世の中にはザックリとした切り替えの目安がありますが、集中力の限界点は人によって違いがあります。
「自分の集中力は60分が限界だな」と思うならば、その前にタスクがひと区切りしたら、すぐに別のタスクに取り掛かることが重要です。ここで休憩タイムを挟んでしまうと、せっかくフル稼働している「脳」を再起動させるのに時間がかかります。
人間の脳は別の刺激を与えることによって、「休憩」→「活性化」することが科学的に証明されていますから、他のタスクに取りかかることによって、集中力を持続することができます。
脳の集中力の限界点と、肉体的な疲労の限界点は異なります。タスクとタスクの合間に無理して休憩タイムを挟む必要はなく、「目が疲れた」とか「腰が重い」と感じ始めたら、その段階で休憩を取るだけで実は十分なのです。気持ちがノッているときは、休憩を挟まず、次の仕事に取りかかった方が早く終わるでしょう。
まずは平均70点を目指そう
マルチタスク的に同時進行で仕事を行っているのにどうにもうまく回らない、という人もいるでしょう。そのような人はすべての仕事で「100点」を目指しているせいで仕事が遅くなっているのかも知れません。
どんな仕事でも100点満点の結果を出すことが理想ですが、たくさんのタスクを抱えているならば、そのすべてで満点を狙うことは現実的ではありません。日本人には完璧主義の人が多いため、全部の仕事で100点満点の結果を狙いがちですが、仕事には必ず制限時間があります。満点を目指してひとつのタスクに集中してしまうと、時間切れで他のタスクまで手が回らなくなります。残りの仕事が全部0点になったのでは、何の意味もないのです。
優先度の高い仕事から始めて、全部のタスクで70点を目指しましょう。ひと通りの仕事が70点のレベルに達して、時間的な余裕や余力があれば、70点を80点へ、さらには90点に向かってブラッシュアップする……というスタイルです。
すべての仕事で満点を目指すと、プレッシャーに押し潰されながら、全力疾走する必要があり、仕事に「ムラ」が生じます。70点のアベレージでいいとなれば、不安やストレスを抱えることなく、自然体で取り組むことができますから、素早く仕事が進みます。短い時間で効率よく結果を出すためには、まずは70点を目指すことが第一関門だと考えています。
仕事を「短くやる」習慣(著:山本大平)より
『仕事を「短くやる」習慣』 (クロスメディア・パブリッシング) |