「楽しい気持ちは体の動きから」というサンフランシスコ州立大学のペパーとソンの研究があります。
この実験は、「体が先」であることを雄弁に物語るだけではなく、アクション次第で気持ちも変わることの面白さを教えてくれます。実験では、110人の大学生を、
◉背中を丸めてしょんぼりと縮こまった姿勢で歩くグループ
◉同じ側の手足を同時に大きく動かして歩くグループ
に分け、アクション後に元気度(幸福感・絶望感、楽しい・悲しい記憶の想起など)を自己評価してもらいました。
その結果、後者の、ある意味ヘンテコな動きのチームは、元気度が大幅に向上していたことがわかったといい、しょんぼりした姿勢のチームは、実験前の予備調査で元気度が高かった人たちでさえも、アクション後は元気度の大幅な低下が見られました。
つまり、楽しい動きは元気になり、しょげた動きは元気をなくさせるというわけです。
これは、「元気な楽しい動きをしているから、私は楽しいのだ」と脳が勘違いして、気持ちが楽しくなっていくことを示唆しています。また、ペパーらは、元気になった要因として、上を向いているような姿勢、そしてこうした動きが心拍数を上げるためとも分析しています。
心拍数を上げるトレーニングは、うつ病の改善策として用いられることもあるほどで、「体が先」がいかに効果的かを教えてくれます。
心で考えているよりも、身体で実感するほうがいかに大切か─。
みなさんも、そうした経験をどこかでしているはずです。小さなアクション、それこそヘンテコな動きをするだけでも効果があるというわけです。
感情は体の動きによってコントロールできる

ミシガン州立大学アナーバー校のシャファーらは、脳科学のさまざまな先行研究をもとに、感情は体の動きによってコントロール可能であることを実験で示しています。
シャファーらは、22人の被験者に、「ハッピー」「悲しい」「怖い」「中立的」な感情を表す動作をする動画を見てマネしてもらい、その際の脳の活動をfMRI(磁気共鳴機能画像法)で記録しました。
すると、飛び跳ねるような楽しい動作をしているときにはハッピーな感情に、肩を落とすような動作のときには悲しい感情になることが明らかになったといいます。
ちなみに、ハッピーな感情のアクション動画を見るケースでも試したところ、特にハッピーにはならなかったそうです。ただし、悲しい感情のアクション動画を見たときは悲しい感情になったというから、やはり人間はネガティブなものに敏感なのですね。
彼らは、理論と実験結果を前提に、「子どものようにスキップをすることでよりハッピーになる」可能性を論文のなかで例として挙げています。
気分が落ち込んでいるときは、意図的にヘンテコな動きやスキップをするだけで、気持ちは変わってくる……なんとも脳というのは、いい加減なものです。その構造を活用しない手はないでしょう。
世界最先端の研究が導き出した、「すぐやる」超習慣(著:堀田秀吾)より
<併せて読みたい>
脳機能を高めるには、有酸素運動をしたあとの「習慣」が重要だった!
![]() | 世界最先端の研究が導き出した、「すぐやる」超習慣(著:堀田秀吾)より」 (クロスメディア・パブリッシング) |
