人間というのは、どうしてもあれこれ考えてしまいます。
意中の人をデートに誘いたいけど、「盛り上がらなかったり、喜んでもらえなかったりしたらどうしよう」。新しいことにチャレンジしたいけど、「ハズレを引いたらどうしよう」。旅行をしたいけど、「仕事仲間に迷惑をかけたらどうしよう」などなど。
考えることはすばらしいことです。
簡単にあきらめてしまうより、たとえそれが頭を悩ませる形になっても、考えること自体は、とても尊いことです。
「人は考える葦である」─。とは、哲学者、パスカルの有名な言葉です。
人は自然界の葦のようなちっぽけな存在にすぎないが、考えることができるという点で偉大なのだ、考えることが人間らしさなのだと、パスカルは唱えています。
ただ……考えすぎてしまうから問題なのです。考えすぎるからミスを恐れ、決断できなくなり、躊躇し、ときに心の病気になってしまうのです。
考えすぎないために、どう自分のルールを決めておくか。
そのため、「難しく考えずに(やってみる)」という考え方も、立派なルール化だと思っています。
デューク大学のアリエリーらは、興味深い実験を行っています。MIT(マサチューセッツ工科大学)の24人の学生を対象に、報酬の高低がタスクを遂行するうえで、被験者のパフォーマンスにどんな影響を与えるのかを調べています。
実験では、
◉単調でシンプルなタスク
◉複雑でクリエイティブなタスク
を用意し、これらを被験者である学生に課し、その際、異なる金額の報酬を提示したそうです。
その結果、単調でシンプルなタスクにおいては、高い報酬を提示されるほど、より高いパフォーマンスを発揮したそうです。
しかし、複雑でクリエイティブなタスクにおいては、高い報酬を提示されるほど、パフォーマンスが低くなったといいます。
アリエリーらは、高学歴ではないインドの貧しいとされる地域でも同じ実験を行ったのですが、結果は同じ。バックグラウンドに関係なく、複雑なタスクの場合は、インセンティブを与えたところでよいパフォーマンスにはつながらないということが示唆されたのです。
人間の脳というのは、ときに単純、ときに複雑です。わかりやすい報酬を与えたところで、複雑なタスクともなれば、結果はともないません。考えすぎると、むしろオーバーヒートを起こしてしまうんですね。
ですから、「考えすぎない」ことがポイントなのです。
考えるためには「リラックス」が必要

また、考えすぎとまではいかないものの、頭がオーバーヒート気味になっていると感じたなら、適度に休憩をとることを心がけてください。
リラックスすることは、人が考える葦である以上、貴重な「水分供給」の機会です。
イリノイ大学アーバナシャンペイン校のキムらが80人以上の韓国人を対象に行った調査は、効果的なリラックス方法を教えてくれます。
この実験では、休憩時間に行ったリラックス法が、昼食後、終業後にどのような影響があるかを10日間にわたって記録しました。
その結果、次のことがわかりました。
◉ボーッとする、ストレッチをするなど「リラックス系」の活動、もしくは、同僚とのおしゃべりなどの「社交系」のリラックス法をした場合
→仕事の大変さを軽減させることに役立つことが判明
◉新聞を読む、メールをチェックするなど「認知活動系」のリラックス法をした場合
→昼食後の仕事を大変だと感じやすくなり、終業後の疲労感が高まることが判明
◉お菓子を食べる、飲み物を飲むなど「おやつ・飲料系」のリラックス法をした場合
→基本的には無効果。ただ、カフェインの摂取は、仕事の大変さを軽減させることに役立つことが判明
このように、ぼーっとする、ストレッチをすることがもたらすリラックス効果は、ストレスの軽減に大きく関与するのです。
世界最先端の研究が導き出した、「すぐやる」超習慣(著:堀田秀吾)より
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