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忘れっぽさは食事で改善できる?

 以前ならすぐに出てきた言葉や漢字が思い出せないことはありますか?

 若い時なら思い出せなくてもあまり気にしませんが、ある程度の年齢までいくと「ひょっとして認知症の表れかな?」と心配になるかもしれません。正常な老化であれば、ある程度認知機能が低下することは致し方ありませんが、それでも生活に困るレベルの認知力まで低下することはありません。

 この正常な老化と認知症との中間の状態、すなわち日常生活にはまだ支障がないけれども、年齢以上の認知機能の低下を認める状態を軽度認知障害(MCI)と呼びます。MCIは認知症にいたる過渡期と考えられています。

 MCIと診断された人のうち35%は5年以内に認知症もしくは認知症の一番の原因であるアルツハイマー病に移行すると言われています。MCIという状態も定義がバラバラで、どの段階が問題なくて、どの段階がMCIなのかははっきりと区別をつけることができません。自分の認知機能に疑いを持ったり心配になった段階で対策を始める必要があると考えた方がいいでしょう。認知症になってしまうと改善することは難しいですが、MCIの段階であれば十分進行を遅らせたり、改善したりすることができます。

 MCIの状態の時、脳の中では何が起こっているのでしょうか?

 認知機能の低下している人の脳の中では、栄養源である糖をうまく利用できない状態になっています。神経細胞内へ糖を取り込む能力が低下するなど、通常の脳よりも10%以上代謝機能が低下し慢性のエネルギー不足に陥っている状態です。

 では糖分をたくさん摂ればいいのか? 実際頭が疲れた時に甘い物が欲しくなる現象は、まさに脳へのエネルギー補給ですが、MCIや認知症の人にはそんな単純なことではありません。いくら糖が血液中に存在してもインスリン抵抗性という状態にあることが多く、糖が細胞の中に入ることができないのです。よって糖に変わるエネルギー源を補給するという考え方になります。

糖に変わるエネルギー源、ケトン体

 ケトン体は肝臓で脂肪酸から合成される代謝物で、全身の細胞で使うことができる糖に代わるエネルギー源です。脳細胞もケトン体を利用することができます。脳細胞の糖の取り込みが損なわれている状態でも、脳のケトン体の取り込みと代謝はMCIの人でもほぼ正常です。

 ケトン体を体の中で作り出す方法の1つがファスティングをすることです。

 すなわち何も食べずにいると体に栄養が入ってこないために、自分の脂肪を分解してケトン体というエネルギーを作り出します。このケトン体をつくる反応は、体に糖分が入ってこないために誘導される反応なので、食べながらケトン体を作り出す反応を引き出すこともできます。

 ケトジェニック食と呼ばれる高脂質、超低炭水化物食を行うことで、食べながらケトン体を誘導することが可能です。しかしこのケトン体をつくる反応が安定して起こるには時間がかかりますし、また年齢が高くなるにつれてこういった食事を実践するのが難しくなります。そのためにケトン体を作り出す方法としては、中鎖脂肪酸オイル(MCTオイル)を摂取することが最も容易です。

 MCTオイルは炭素数が812個の中鎖脂肪酸と呼ばれる脂肪酸が大量に含まれています。通常の脂肪に含まれる脂肪酸は炭素数が20前後ですので、それよりも脂肪酸としての長さが短いのが特徴です。通常の脂肪酸と比べて中鎖脂肪酸は水に溶けやすいために、血液の流れに簡単に乗って肝臓で素早く代謝されケトン体になります。

 MCIの予防、進行を止めるためには、このような成分をサプリメントで摂取するのではなく、野菜・果物や新鮮な魚、ダークチョコレートなど普段から食品で摂取しておくことを意識してください。

『不調を治す 血糖値が下がる食べ方』(著:石黒 成治)より

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(クロスメディア・パブリッシング)

 

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