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現代を「自分らしく生きる」ための2つのキーワード

「自分らしく生きる」というのは今の時代のキーワードだと思います。

「自分らしく」という言葉をそのままとらえると、まわりに気を取られず、我が道を行くといったイメージを持たれるかもしれませんが、本当に自分らしい生き方を楽しんでいる方々は、皆さん共通して利他の心に富んでいるように感じます。

私たちが何かしらのメディアを通して、一人の方の生き方を知ったり、その人が発するメッセージを受け取り、「この人っていい生き方をしているな」と思ったりするのは、その方の利他性、つまりまわりの人たちや社会に対する思いやりの心に共感するときなのではないでしょうか。

たとえばSNSはその典型例です。今は多くの方がSNSで自分の日常に起こったことなどを発信していますが、SNSの中でだけ輝いている自分を表現することによって、他の人からの「いいね」という評価を得ることが目的になっている人が少なくありません。もっと端的に言えば、自分の人生はうまくいっているという「自己暗示」をかけるためのツールになっているということです。

しかし、SNSでかりそめの優越感や自己満足を得ようとする人たちは、現実の生活において大きな問題を抱えていることが少なくありません。

「中道」という仏教の考え方

SNSは極めて集団心理が生じやすいフィールドをつくり出していると考えられます。

「今はこれが話題です!」「次の時代は△△だ!」といった情報に流されるままに、新しい商品やゲーム、投資話などに次々と飛びついていたら、あなたの暮らしはどんどんとマルチタスクになり、新たな疲れの原因をつくることになってしまうでしょう。

かといって魅力的な情報を数多く目にしながらも、それを使わない選択をしたら、「流行っているものに乗れてない自分は大丈夫かな」と不安になったり、「みんなは新しいものに馴染んでいるのに、自分はなぜ適応できないんだろう」と落ち込んだりしてしまうかもしれません。

そこで私が、SNSの世界を飛び交う新しい情報と上手に付き合うために心がけているのが、「中道」という仏教の考え方です。そのまま訳せば「偏らない生き方」ということ。

今の私たちの暮らしに当てはめれば、厳格過ぎることもなく、堕落し過ぎることもない、一日一日を穏やかな心で丁寧に生きるという姿勢が「中道」の実践といえるでしょう。SNSとの付き合い方にこの教えを応用してみたらどうなるでしょうか?

そのことだけに夢中になって、一日中没頭するのは中道的ではありません。かといって先入観で頭ごなしに否定することも、中道に反しています。そうではなく、まっさらな心、クリアな視点で、一回は体験してみてはいかがでしょうか。体験した上で、客観的な視点でその新商品や新しいサービスの本質を考え、自分としてはどのように付き合っていくか、態度を検討してみるのです。

ただそこで必須となるのが、「客観的に物事を検証する目」を持っているということでしょう。そうした客観視の能力を育む一番の近道は、「己を知る」ということです。自分自身を客観視できれば、外側の世界で起こっていることも、冷静に観察して判断することができるからです。

「自利利他円満」という言葉

もうひとつ、日本の大乗仏教には「自利利他円満」という言葉があります。

自利とは、自分のことを大事にしたり癒してあげたりといった、「自己を利する心」を意味します。利他は読んで字のごとく、「他者を利する心」です。つまり仏教の考え方では、自分に利益を与えることと、他者に利益を与えることは表裏一体であり、双方が満たされてはじめて円満と言えることを示しています。

真に「自分らしい生き方」ができている人とは、周囲のご縁のある人たちや社会に対する貢献をすることで、その人から感謝してもらえる体験をたくさん持っていますが、その根底には「それをしていることが楽しい」という思いが必ず存在しています。

そして楽しんで取り組んでいる限り、自己犠牲にはなり得ません。やりがいをもって楽しみながら他者貢献することで、心からの感謝を受け取ることができる。それこそが本当の「自分らしく、幸せな生き方」と言えるのではないでしょうか。

 

「精神科医がすすめる疲れにくい生き方」(川野泰周)より


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