FOOD

【医師執筆】1日何杯のコーヒーで健康効果を得られる?ノンカフェインでも効果はあるのか?

世界の最新医学論文から、現役医師の気になるトピックをお届けします。


いよいよ冬の寒さになってきました。

コーヒーショップ、カフェで仕事をされているビジネスパーソンの方々もいらっしゃるかと思います。お仕事お疲れ様です。

多くて週に14杯!ビジネスパーソン御用達のコーヒー、健康への影響は?

 

日本人のコーヒー摂取量は、全日本コーヒー協会によると2016年では1週間に1人11杯程度。男女年齢別では、40〜59歳の男性が一番多く、14杯/週とのことです(※1)。

日常的にコーヒーを摂っている日本人ですが、健康への影響は最新の研究ではどのようになっているのでしょうか。

今回はコーヒーについての研究をご紹介致します。

イギリスの権威ある学術誌に掲載された、67の観察研究のメタ解析201件、および9つの介入研究のメタ解析17件をまとめたものです(※2)。

 

*ここで、研究に関する用語について、「コーヒーと病気の発症率」を例に以下に簡単に説明しておきます。気になる方はご確認ください。

観察研究:研究者が被験者に手を加えず、病気の発症率と、コーヒーの摂取量の関係をデータから分析する研究。

介入研究:研究者が被験者に「コーヒーを飲ませる」という介入をする。コーヒーを飲ませた場合と、飲ませなかった場合に病気の発症率がどうなっていくかを追って分析する研究。

メタ解析:コーヒーと病気の発症率の関係について、複数の研究の結果を再集計することで、より客観的・科学的にコーヒーと病気の発症率の関係を分析する手法。

 

さて、ご紹介する研究は、複数の「メタ解析」をまとめたものであり、信頼性は高い方だといえます。

この研究では、以下のことが分かりました。

 

◆コーヒーのメリットに関する結果

  • コーヒーを飲まない群に比べ、1日3〜4杯コーヒーを飲む群では、全死亡リスクが17%、心血管疾患(心筋梗塞など)死亡リスクが19%、心血管疾患発症リスクが15%低かった。

⇨1日3〜4杯のコーヒーを飲む群では、死亡リスクが低下!

  • コーヒーを飲まない群と比較して、コーヒーを飲む群では、脂肪肝発症リスクが29%低かった。

⇨コーヒーを飲む群では、肝臓の病気リスクが低下!(※3:2018.1.18修正)

  • コーヒーを飲む量が少ない群と比較して、コーヒーを飲む量が多い群では、癌の発症リスクが18%低かった。発症リスクが下がる癌は、前立腺癌、子宮内膜癌、皮膚癌、口腔癌、白血病、肝臓癌であった。
  • コーヒーを飲む量が少ない群と比較して、コーヒーを飲む量が多い群では、2型糖尿病発症リスクが30%低かった。

⇨コーヒーを飲む量が多い群では、癌や糖尿病の発症リスクが低下!

  • コーヒーの摂取は、パーキンソン病発症リスク、うつ病や認知機能障害発症リスクの低下と関連していた。特にアルツハイマー病との関連が強く、コーヒーを飲む群では発症リスクが27%低かった。

⇨コーヒーを飲む群では、アルツハイマー病などの発症リスクが低下!

 

コーヒーのデメリットに関する結果

  • コーヒーを飲む量が多い妊婦は、コーヒーを飲む量が少ないもしくは飲まない妊婦に比べ、低出生体重児の頻度が31%高く、早産(妊娠0週0日〜13週 6日で22%増加、14週0日~27週6日で12%増加)、妊娠損失(46%増加)と関連していた。

⇨妊娠中の方はコーヒーの多量摂取に要注意。

  • また、女性ではコーヒー摂取と骨折リスクに関連を認めたが、男性では認めなかった。
  • 妊婦との関連以外では、コーヒー摂取による有害な事象は、喫煙・非喫煙を統計学的に調整すると無いと判断できる。

 

つまり、コーヒーの摂取は一般的に安全であり、健康に最もよい影響があるのは1日3〜4杯。妊婦や、骨折リスクの高い女性以外には、コーヒーは健康に有益といえるでしょう。

 

論文の著者はコーヒーが健康に良い理由として、コーヒーに含まれるカフェインの「抗酸化作用」、またカフェストール、カーウェオールなどの「抗癌作用」を挙げています。

デカフェ(ノンカフェイン)コーヒーでも健康効果はあるのか?

 

また、最近はデカフェ(カフェインが入っていない)コーヒーもありますが、この論文によると、

 

  • デカフェのコーヒーでも全死亡や心血管疾患死亡の低下と関連しており、1日2〜4杯の摂取で最も有益な結果が得られた。
  • 2型糖尿病と子宮内膜癌の発症リスク低下にも、デカフェコーヒーで有益な結果が認められた。
  • しかし、癌死亡リスク低下に対するデカフェコーヒーの効果は、統計学的に意味があると言うには満たなかった。

 

とのことです。

デカフェコーヒーでも全死亡リスクや糖尿病リスクの低下など、健康効果が期待できるのですね!

 

そして、この論文では「砂糖の是非」には言及していませんが、過剰な量の砂糖には様々な健康被害が報告されています(砂糖については別の回でまたお伝えします)。おすすめは、ノンシュガーのコーヒーです。

コーヒーの健康効果を最も得られるのは「1日3杯」程度

 

効果的な量を1日3杯としても週21杯。日本人で1番多く飲む層で週14杯ですから、皆さま、もう少し飲んでも良さそうです。

お仕事中、コーヒーを飲むとき、健康によい飲み物だと思って飲むと、ちょっと幸せな気持ちになれるかもしれません。

おやつには、これまた健康によい高カカオ濃度のチョコレートはいかがでしょうか。

(参考記事:「3欠片のチョコレートが心臓病・脳卒中を予防!? 知られざる健康効果とは」)

 

福田芽森 Fukuda Memori
慶應義塾大学病院 循環器内科勤務。東京女子医科大学卒、循環器内科5年目。日本医師会認定産業医、ACLS(アメリカ心臓協会二次救命処置)インストラクター、JMECC(日本内科学会認定内科救急・ICLS講習会)インストラクター。高校時代にアメリカ、大学時代にベルギーに短期留学。食育アドバイザー、野菜ソムリエの資格も持ち、生活習慣病予防の観点から食育活動も行っている。趣味は登山、弓道(三段)、芸術鑑賞、海外旅行。

<参考資料>
※1 http://coffee.ajca.or.jp/wp-content/uploads/2017/06/data04_2017-06b.pdf
※2 Poole R, et al. BMJ. 2017;359:j5024.
※3 [2018.1.18追記]エビデンスとした論文(※2)に訂正 [http://www.bmj.com/content/360/bmj.k194]が発表され、「コーヒーの摂取による肝硬変発症リスクの軽減率は11%で上位ランクには入らない」ことが新たに判明したため、本文中の記述を下記の通り修正いたしました。

修正前「コーヒーを飲まない群と比較して、コーヒーを飲む群では、脂肪肝発症リスクが29%、肝硬変発症リスクが39%低かった。
修正後「コーヒーを飲まない群と比較して、コーヒーを飲む群では、脂肪肝発症リスクが29%低かった。」

今、あなたにオススメ