料理の味にこだわらない
——レシピを考えるときに、「工程を簡単にすること」「素材にこだわりすぎないこと」以外で意識していることってありますか?
味つけにもこだわりすぎないことですかね。人にはいろんな味の好みがあるので。辛いのが好きな人も酸っぱいのが好きな人もいて、脂っこいものが好きな人もいるわけですから。
そこで、ぼくが提供できることっていえば、調理法なんですよね。味付けは「おまかせします」って感じです。ぼくのレシピは「この味を味わってくれ」っていうより、「こういう料理があるよ、こういうつくり方もできるよ」っていう、プレゼンの感覚に近いんです。
なので、「ぼくはこれでつくってますけど、もっと塩入れてもいいですよ」とか、逆に「味が濃かったら減らしていいですよ」とお伝えしてます。自分の好きな味がいちばんの味ですからね。
そして、ゆくゆくは自分でレシピを考えて料理ができるようになって欲しいですね。ぼくはその足がかりになれればいいと思ってます。
——味にこだわらない料理研究家さんっていらっしゃるんですね!
珍しいですよね(笑)。でも実際、「誰と食べてるか」「どんな雰囲気で食べるか」「誰がつくるのか」「誰のレシピなのか」で味わいは変わってきますから。
さっきお話ししたように、ぼくはもともとホテルマンなので、それがすごくわかるんです(前編参照)。たとえば、給仕のサービスをするときも、メニューの説明をするかしないかでお客さんの反応が全然違うんです。それは、「この〇〇ソースを少しつけて召し上がってください」とか「これは〇〇産の〇〇です」とか、ほんとうにちょっとしたことなんですが、そこに興味を持ってくれた方は、やっぱり「これおいしい!」っていう感じで反応してくれるんです。
だから今もレシピの提供の仕方にはかなりこだわってます。「革命的においしい」とかキャッチコピーをつけたりするのもその一環です。いかに味の想像を膨らませるかを考えてますね。そういった取り組みとTwitterの相性がいいのかなと思います。
多分ぼくぐらいの料理できる人っていうのは、結構いると思うんです。ただ、他の料理研究家の方に比べて、SNSマーケティングっていうのを理解していて、素材や味にこだわってないところがぼくの強みなんだと思います。
——たしかに、ここまでSNSで目にする料理研究家は、他にはいらっしゃらないですね。
バズることが唯一の武器
——リュウジさんには料理の先生っていらっしゃるんですか?
ぼくは誰からも料理教わってないんですよ。
——え!じゃあ、料理はすべて独学で身につけたんですか?
そうですね。教えてもらおうにも、ツテがなかったんですよね。
ぼくは自分で「料理研究家」って言い出して、ネットで注目してもらえるようになっただけなので、今でも「他の方々はどうやって料理研究家になったんだろう?」って疑問に思ってるくらいです。
だから、肩書きもまったくないんです。主婦でもなければ、修行経験も何にもない、元ホテルマン。他の方は管理栄養士とかソムリエ、家政婦とかいっぱいあるじゃないですか。ぼくはそういった肩書きがまったくなかったので、Twitterでバズるしかなかったんです。
——Twitterでバズることが唯一の武器だったんですね。
そうですね。それしかみなさんを納得させられなかったんですね。だからそこだけは、すごいがんばりました。
たとえば、元ホテルマンの自称・料理研究家と、イタリアで何年も修行してきたシェフだったら、どっちの料理食べたいですか?
——それだけ聞くと、普通は後者になりますね。
ですよね。とくに日本は肩書き重視なので、どれだけ説得力を持たせるかが大事なんです。そこだけは昔からわかっていたので、肩書きのない自分はバズるしかないと考えたんです。
——そこで戦略的にこだわりを捨てて、バズに特化したコピーをつけて、レシピを投稿し始めたということですね。それはいつごろの話なんでしょう?
1度何かでバズって、フォロワーさんが1万人くらいのときからですね。
そこで書籍化の話がきたんです。でも編集の方から「ちょっとフォロワー足りないですね」って言われまして。それですごい落ち込んでしまって……しかも「目標は10万です」って言われて……。
ただ、そのときは落胆したんですけど、2〜3日後に怒りに変わってきたんですよ。「せっかく本を出せると思ったのに、フタを開けてみたら『もっとがんばれ』って言われただけじゃん!」と思って。自分の中で何かがブチ切れてしまって、そこから「10万に増やしてやろう」と思って、戦略を立てるようになったんです。もう悔しくって(笑)。
今思えばその出来事があったから、ここまで来れたのかもしれませんね。
——そうだったんですか……!でも、今はもう、そのときの目標の5倍のフォロワー数に達してますね。
そうですね、なかなか皮肉なことに(笑)。フォロワーさんはまだまだ増える気がしてます!
——さすがです!これからのご活躍も楽しみにしております。今日はどうもありがとうございました!
ありがとうございました!