体の調子を整える「自律神経」と「ホルモン」
暑い日に体に熱がこもれば、汗をかいて発散する。寒い日には鳥肌を立てたり、震えによって筋肉を小刻みに収縮させたりして、熱をつくる。あなたの体温は、いつ測ってもおよそ36〜37度だと思います。無意識のうちに、体が体温を最適な温度に調節してくれています。
あるいは、食事を噛んで飲み込んだあとは、あなたは「胃を動かそう」「腸を動かそう」とか、意識して行なっているでしょうか?
いいえ、そんな人はいないですよね。飲み込んだあとの食べ物の消化活動も、あなたが無意識のうちに進んでいますよね。せいぜいお腹に食べ物が入っているな〜、となんとなく感じる程度で、後はトイレに行きたくなるのを待つくらいです。
体のバランスを維持する自動的な働き、これらは自律神経とホルモンのおかげで行なわれています。
自律神経は体の隅々に張り巡らされ、脳からの信号で体のバランスをとります。ホルモンは主に体の中の脳下垂体や副腎、甲状腺など、特定の臓器から特定の種類のホルモンが分泌され、血液に乗って全身に運ばれ、体の作用を調節します。
役割の違う交感神経と副交感神経
自律神経は、交感神経と副交感神経に大別できます。
交感神経は、闘争か逃走か、という緊急事態に対応する働きとイメージするとわかりやすいです。
もし山を歩いていて、不意にクマに遭遇したらあなたの体はどう反応するでしょうか? 一瞬で胸がドキドキし、手に汗をかき、状況を把握するため自然に目の瞳孔は開き、手足の表面が冷え、胃や腸などの消化吸収の動きは止まる一方で、体の筋肉や脳への血管が開いて、血糖値が上昇し、激しい運動とそのエネルギー消費に備えます。
これこそまさに交感神経が活性化することで起こる反応です。また、副腎という臓器から分泌されるアドレナリンというホルモンも、このような体の反応を促進します。外敵に対して、戦うか、あるいは走って逃げる活動に最適な状況へ体を導くわけですね。
副交感神経は、言わばリラックスのための神経です。例えば温泉旅館で美味しい夕食に舌つづみをうち、お腹いっぱいの上機嫌で温泉につかる。
ストレスのないリラックス状態では、副交感神経が活性化し、手足の血管が開いてポカポカし、瞳孔は閉じ気味、胃や腸などは活発に動いて消化吸収を進め、心臓も落ち着いたペースで動きます。
消化を助け、血糖値を調整するホルモン
消化を助けるホルモンとしては、後述するグレリンやコレシストキニン、ガストリン、インクレチンなどがあります。
血糖値を調節するホルモンとしては、血糖値を上昇させるホルモンとして前述したアドレナリンのほかにも、甲状腺から出るチロキシン、副腎から出るコルチゾール、膵臓から出るグルカゴン、成長ホルモンなど、複数ある一方で、血糖値を下げるホルモンは膵臓から出るインスリンという1種類のホルモンしかありません。
自律神経とホルモンの働きで、私たちの体は正常に維持されています。逆に言うと、体のバランスを健康に保つには、自律神経とホルモンの働きを健全に保つことがとても大切だということです。
医師がすすめる エビデンスベースの「体にいい」食習慣(著:CHIEKO)より
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