ヒトが米を食べ始めたのはつい最近のこと!?
よく、日本人は米を食べてきた民族なのだから、米が身体に悪いはずがない、とか、米を食べていればよいんだ、といった主張を耳にします。
しかし、ヒトがほかの猿から別れて進化しだしたのが数百万年前といわれ、現生人類の祖先であるホモサピエンスが現われたのが約10万年前。
そして人類が農耕を開始したのが約1万年前ということで、それまでの数十年〜数百万年間は、私たちの祖先は狩猟採集生活をしていたと考えられます。
さらに日本人に限って言えば、稲作が大陸から伝わってきたのは弥生時代の紀元前4〜5世紀といわれていますので、米を食べるようになったのはここ最近、たったの2500年ほどということになります。
となると、私たち日本人も基本的に狩猟採集生活に適応した進化を遂げてきたと考えるほうが自然ではないでしょうか?
実際、どうやらヒトの身体は大量の糖質を摂取するのに向いていないようです。とくに、精製された糖質や、ジュースなどの液体の糖質はごく最近まで人類の歴史上なかったものです。
そのため、ヒトの体が上手に処理できずにさまざまな問題を引き起こしたとしても、まったく不思議ではありません。
縄文人の食事を考える
諸説ありますが、日本人が稲作を開始する以前の、縄文人の食事は、以下のようなものだったと考えられています。
縄文人の食事の基本は、植物でした。アケビ、クワの実などの果物。ツクシやワラビなどの山菜。ヤマイモなどの根菜。なかでも、クリやクルミ、ドングリなどのナッツ類はカロリーが高く、竪穴式住居の近くに埋めていたものが出土しています。
動物では、イノシシとシカを捕らえて食べていたようです。海の動物として、クジラやイルカ、シャチなどの骨も出土します。 鳥の骨は、渡り鳥がとんでくる湖や沼のまわりでとくに多く出土します。
よく食べられていた魚は、サケやマスです。川や湖ではウナギ、ハゼなどを獲っていました。そのほか、海で獲れる現代の私たちが食べている魚は、ほとんど食べていたようです。有名な貝塚が全国各地にあるように、海辺の貝も食べていました。
こうしてみると、稲作以前の日本人は、森で手に入る木の実や山菜、脂質が豊富なナッツ類をエネルギー源のメインとしつつ、魚や貝、鳥やイノシシなどの動物性たんぱくも摂取していたようです。
木の実やナッツ、山菜にはさまざまなビタミンや脂質、たんぱく質が含まれています。クリやドングリ、トチの実はでんぷん質=糖質も多く含みます。ただ、縄文時代には当然デンプンの精製はできないので、木の実全体を摂取していたと思われます。
よほどたくさん食べない限り、血糖値を大きく上昇させることはなかったのではないでしょうか。魚や貝からミネラルと、オメガ3などの油を摂っていたのでしょう。
本来のDNAに合った食事に近づける
突拍子もなく聞こえるかもしれませんが、縄文人の食生活になるべく近づけていくことは、本来のヒトのDNAに合った食事に近づけ、健康トラブルを減らすことに役立つ可能性があります。例えば、地元でとれた無農薬野菜をたっぷり食べ、ナッツ類を摂り、地元でとれた新鮮な魚や貝類をいただく、など。
少なくとも、加工食品、精製された食品や工業的な加工を受けた食品を避けて、自然の食品を食べるのがよいのではないでしょうか。糖質はできるだけ精製されていないもの、全粒粉、玄米などを控えめに摂る程度にとどめるほうがよいように思われます。
添加物や農薬の少ない、オーガニックの食品を選ぶこと。具体的には、前述したような、自然には存在しない、精製された糖質が含まれるコーラなどの炭酸飲料やジュースは飲まないこと。
白米や精製小麦粉とショートニングやファットスプレッドといった植物油を工業処理してつくられた油で調理したドーナッツやピザを食べて、ポテトチップスをつまむような欧米化食生活はもっとも危険と言えるでしょう。
医師がすすめる エビデンスベースの「体にいい」食習慣(著:CHIEKO)より
![]() | 『医師がすすめる エビデンスベースの「体にいい」食習慣』 (クロスメディア・パブリッシング) |