聞き上手になって信頼を勝ち取る
若い男性はよく、女性にモテるためには面白いことを言わないといけないと勘違いしているようです。確かに人気があるタレントは会話が上手で、間髪入れずに気の利いたフレーズを繰り出します。しかし実際に女性にモテている人は話し上手より聞き上手なのを知っていますか?
仕事においても同じことが言えます。慕われる上司、若手から信頼されている上司というのは、例外なく聞き上手で、部下の話に耳を傾ける人です。年下だけではありません。傾聴ができる人は、年齢や立場が上の人からも信頼されます。
ビジネスにおいて人間関係をスムーズに保ち無駄なストレスを生まないためには、人の話を真摯に受け止められる技術、つまり「傾聴の技術」を習得するのが近道なのです。
人間は誰しも、「誰かに認められたい」、「自分の話を聞いてもらいたい」という欲求があります。
「聴く」ことは、周囲の信頼と尊敬にダイレクトにつながります。あなたが、駆け出しの新入社員でないならばなおさらです。
かのドラッガーも、「本物のリーダーは話すより、聴く姿勢の方が重要との本質を知っている」と述べています。
そこで今回は、どうすれば傾聴のスキルを高めることができるか、3つのポイントにまとめてみました。こちらを参考にして、みなさんも「聞き上手」な人間になりましょう!
ポイント1 同意・共感・質問をマスターして、聴くスキルを高める
傾聴にもスキルはあります。まずはその基本スキルを覚えましょう。
聴くスキル①同意を示す
相手の話しから肯定、共感できることを探し、同意を示すというスキルです。例えば、部下の書類提出が締切に遅れたことを注意する場面を考えてみましょう。
上司「あの提案書類だけど、時間が足りなかったの?具体的じゃないとダメだよ」
部下「いつもギリギリになって仕事を振られるので…。もっと早く指示を出していただければこんなことはなかったんですが」
上司「そうだね。時間がなかっただろうね(同意)。もっと前に頼むべきだったね(同意)。今回だったら何日前に頼めばよかったかな?」
聴くスキル②共感を示す
相手の考えていること、感じていることを理解しようと努め。それに共感を示すスキルです。相手の発言内容を受け止めて、同様の趣旨を繰り返すとよいでしょう。
部下「うちの会社って、社長の独断が多いですよね。下の社員の意見が反映されるなんてほとんどないですよね」
上司「なるほど、社長が何でも一人で決めて、現場の意見が活かされていないって感じているんだね(共感)」
さらに相手が抱いているであろう感情を推察し、共感を示すと大きな効果があります。
上司「会社の意思決定に、社員が参加する機会がないことに不満なんだね(感情への共感)」
聴くスキル③質問する
質問には大きく次の3つの意味があります。
1さらに話を引き出し傾聴を続ける
2対等な関係として意見を求め、相手の自尊心を充たす
3質問を投げかけることで相手の気づきを促し、自らの言葉でそれを宣言するように導く
質問を繰り返すことで、相手の組織や人に対する考え方が浮かび上がり、より深いコミュニケーションが可能になると思います。
ポイント2 傾聴が失敗しがちな5つのNG
傾聴は聴くスキルを高めることでビジネスシーンで多いに役立ちます。
しかし次のようなパターンに陥ると、傾聴がうまく機能しないので、注意が必要です。
①聴き手が冷静さを失っている
相手に対する怒りや身構えがあると、傾聴はうまくいきません。冷静でない相手に対して、話を聞いてもらおうという人はいないからです。感情が収まってから話をするべきです。
②自分の正しさにこだわっている
自分が正しく相手が間違っていると断定して会話を進めると、ぶつかり合うだけで傾聴の成果は得られません。
③相手を責める
相手を責めて非難すると、相手も心を武装してきます。関係をこじらせることはあっても、改善することはありません。
④自分が喋りすぎる
傾聴の目的は相手の本音を聞き出すことです。自分は最小限のことだけ話します。
⑤自己弁護する
相手が自分の間違いや不完全さを指摘してきたときに、きちんと認めれば相手も心を開きます。
⑥時間を気にしている
スケジュールが立て込んでいるときなどは、時間を気にして傾聴のモードにはなりません。
ポイント3 見た目も武装を外し、心を開きやすい雰囲気をつくる
相手が話しやすい、心を開きやすい環境づくりを意識するのも傾聴には重要です。
以下のように自然と雰囲気をつくれるようになりましょう。
①座る位置は斜め
向かい合って座ると威圧感や敵対的な雰囲気になります。お互いに斜めに向き合う位置に座ると、話しやすい雰囲気になります。
②服装でもよろいを脱ぐ
ジャケットやネクタイを外して面談すると、くだけた雰囲気になり話しやすくなります。
③目線の置き方
相手の目をじっと見つめず、あご、鼻先、首、耳を見ながら話しましょう。目を見ていなくても、相手からは目を見ているように感じられます。「相手の顔に5秒、そらして3秒」を繰り返すのが、話しやすい目線の置き方だと言われています。
④手の位置、姿勢
腕組みはよくありません。手は膝の上や机の上にリラックスして置いておきます。体をそらさず前のめりにならず、真摯な印象を与えるきちんとした姿勢を保ちます。
聞き上手になれば上司にも部下にも好かれる
いかがでしたか?ここでご紹介したポイントは、少しすればすぐにでも実践できるもの。自分を顧みて、もしあなたが人の話に耳を貸していなかったと思うのなら、今日からでも実践してみてください。まずは少し黙って相手の話に耳を傾ける。それだけでいいのです。そうすれば、おのずと相手のあなたへの見方が変わってくるはずですよ。
「明日に疲れを持ち越さないプロフェッショナルの仕事術」(著:渡部卓)より
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