「知識経験」ばかりを積んでいませんか?
スマートフォンの普及もあって、家でもSNSやインターネットを活用する時間も増えているのではないでしょうか? 情報ツールが発達し、さまざまなコンテンツが普及しているため、「おうち時間」をむしろ楽しんでいるという人もいるでしょう。
ただし、脳科学的に見ると、そこに一つの落とし穴があることを指摘しておかねばなりません。それは、情報が文字や写真、動画といった2次元のものばかりになってしまうことです。あらゆる情報がいまやスマホやパソコンの画面を通じて入ってきます。しかも自宅の椅子やソファーに座って、端末を操作するだけです。
じつはこのような状況は、脳科学的には、決して健全だとは言えません。というのも、2次元情報というのは文字や画像によって得たものです。このような体験を「知識経験」と呼んでいます。一方、体を動かし、実際に何かを体感して得た経験を「体感経験」と呼びます。皮膚感覚など、五感をフル回転させて得た経験です。
SNSやインターネットの発達で、端末情報ばかりになってしまった私たちは、「知識経験」ばかりが肥大して、「体感経験」が激減しているのです。
脳の働き方のバランスが崩れていて、それによって脳の働きが悪くなっている状態と言っていいでしょう。脳の働きが悪くなれば、やはり自己肯定力も次第に下がってきてしまいます。実際、自己肯定感の低い人を診断すると、ほとんどの人において体感経験が乏しいことに気づきます。
そして、自己肯定感の低い人は体を動かすことが苦手な人が多いようです。逆にスポーツなどでつねに体を動かしている人は、自己肯定感が明らかに高い傾向があります。
体を動かして「体験知識」を増やそう
東京成徳大学の深谷和子教授らの調査(「運動の苦手な子」2000年度VOL.20-1/ベネッセ教育総合研究所)によれば、運動が得意な子どもは自分自身をポジティブに評価する傾向があることがわかりました。大人の場合でも、「筋トレ」や「ランニング」をしている人ほど自己肯定感が高いという傾向があります。
脳科学的にも、「運動系」を刺激し活性化することが、自己肯定感を高めるポイントだと考えられます。人間もまた動物であることには変わりません。動物として運動能力が高く、それに関する脳が発達している方が、生存適性が高いことは言うまでもありません。
「しっかりと運動している」「思うように体を動かしている」という実感は、生存そのものの本能に直結しています。それゆえに、自信や自己肯定感にもつながっていくのです。
膨大な2次元情報に取り巻かれている私たちは、意識的に知識経験を減らし、体感経験を増やす必要があります。寝る前は手元に端末を置かないなど、1日のうちで数時間はスマホやタブレットから距離を置くことをお勧めします。
同時に、体を動かして「体験知識」を増やすことを考えましょう。散歩や公園などの広い野外を散策したり、密にならない状況で人に会ったりなど、外に出て実際に何かを体感し、経験を得ることが必要です。
たとえば地域の様々なサークル活動や趣味の集まりなどに参加し、新しい人間関係を築いてみましょう。新しい環境と人間関係は脳には大変刺激的で、そこでのコミュニケーションやさまざまな実体験が貴重な体感経験になるはずです。
「脳の名医が教えるすごい自己肯定感」(著:加藤俊徳)より