「エグゼクティブになる人の若々しい顔のつくり方」(著:野々下一美)
肌を快適にするのが化粧品
肌は一番外側に角層があり、その下に基底層と呼ばれる部分があります。
肌を紫外線や埃、化学物質などの外的刺激から守っているのが角層部分ですが、角層を通り抜けた紫外線などから壁となって防御しているのが基底層です。紫外線が基底層まで到達すると、メラノサイトという物質がメラニン色素を発生させ、基底層下に届かないように機能し、異物として表皮まで押し上げていきます。そしてシミとなるべく角質の一部が垢として剥がれ落ちます。これによってシミができるのを防いでいるのです。
この基底層の物質が、角層の表面に押し上げられて剥がれ落ちる周期は、通常4週間から6週間と言われ、肌が生まれ変わります。これが「ターンオーバー」と呼ばれるものです。肌の美しさは、基底層の内側にある、エラスチン、コラーゲン、ヒアルロン酸が整えられているかどうかで決まってきます。
コラーゲンはバネのような役割を果たし、肌の弾力性を保ちます。その周りにあるのがヒアルロン酸というジェル状のもので、エラスチンはコラーゲンを支える役割を果たしています。年をとると、エラスチンが不足してコラーゲンを支えきれなくなり、しわやたるみとなって肌に表れるというわけです。
紫外線の恐ろしい点は、この基底層を突き抜けてコラーゲンを破壊してしまうところにあります。化粧品を構成している配合成分の分子は大きくて、真皮層にまでは届きません。せいぜい届いて角層なのです。つまり、肌の表面を快適な状態にするのが化粧品だということです。
肌がトラブルを抱えているときほど、化粧でカバーしがちですが、本当は肌の具合が悪いときには化粧品は使わない方がいいのです。化粧品は薬ではありませんから、肌のトラブルを治す力はありません。
肌が健康であるときに、不足がちな水分や皮脂分の代用として化粧品を使って、きちんとスキンケアをしておけば、トラブルになりにくいことは確かです。トラブルを予防するためと思って化粧品を使用してください。
男性用化粧品と女性用化粧品はどこが違う?
皮脂膜は弱酸性であるため、外からの刺激から肌を守れるのです。この状態を保つために私たちはスキンケアをするわけですが、男性と女性では肌の特性が違うので、化粧品選びにも注意が必要です。
一般的に、男性は皮脂が過多で、逆に女性は皮脂が不足しがちです。当然、女性用スキンケア商品は油分が多めなので、男性が女性用スキンケア商品を使うと、ベタつき感などの違和感を覚えるでしょう。
女性用は、一般的に保湿成分がメインで配合されています。それに対し、男性用は、皮脂除去やそれに伴うニキビケアのための抗菌成分などが配合されていることが多いのです。
男性の中でも、もともと皮脂が少ない“草食系”の方や、加齢で肌が乾燥気味であると自覚されている方から、「自分は乾燥肌なので女性用のスキンケア商品を使ったほうがいいのではないか?」と訊かれることが多くなりました。
しかし、男性の乾燥肌と女性の乾燥肌では乾燥のレベルが違うのです。根本の皮脂量が違いますから、同じ乾燥肌用スキンケア商品でも、男性用と女性用では油分などの配合量に相違があります。女性向けの乾燥肌用スキンケア商品を使うと、油分が多すぎて快適に使うことはできないかもしれません。男性には男性向けの乾燥肌用スキンケア商品を使用することをオススメします。
コスメ成分のここを見よう!
厚生労働省の定義によると、化粧品とは、「生体に影響を与えてはならない」とされています。ところが、やっかいなことに、鉱物油由来の成分は分子構造が小さいために、明らかに真皮層にまで到達するものもあります。戦後、大手の化粧品会社が、「黒皮病」で裁判を起こされるという事件がありましたが、これなどは、鉱物油由来の成分が生体に悪い影響を与えたケースと言えるでしょう。
2000年以前には、こうした鉱物油由来の成分は表示義務があり、「表示指定成分」と呼ばれて、パッケージを見れば判別できました。しかし、2000年の薬事法改正で、全成分表示となったために、何が表示指定成分(厚生労働省が認めた有害な成分)なのかわかりにくくなりました。
もちろん、精製技術も進化してきているので、鉱物由来の成分が全部NGとは言えませんが、知っておいたほうがよい情報です。メンズコスメの分野でいうと、界面活性剤と防腐剤が要注意です。
界面活性剤は水と油を混ぜるもので、乳化剤とも呼ばれ、石油を原料としているものが多く見られます。水分と油分を馴染ませるには、どうしても乳化剤が必要になります。この乳化剤が何から作られているのかを知っておかないと、肌にダメージを与える化粧品を選んでしまう可能性も出てきます。すぐにダメージが表れるわけではありませんが、体内に害のあるものが蓄積されていくのは恐いことです。
できれば、乳化剤(界面活性剤)については、使用しないほうがよいでしょう。つまり乳液もクリームも使わないで済むのであれば、それに越したことはないのです。化粧水を施した後に、皮脂がすぐに出るようであれば何も必要ありませんし、乾燥するようでしたら、質が良く酸化しにくいココナツオイルやホホバオイル、スクワランを薄く塗るのがよいでしょう。これらは、どうしてもベタつき感があるので、嫌悪感を抱く人もいるかもしれません。そういった人には、天然由来の乳化剤が入った乳液やクリームがありますから、それを選びましょう。
防腐剤については賛否両論あります。防腐剤の代表的な成分は、「パラベン」というもの。これも表示指定成分です。最近では、パラベンを使用していないことを謳う商品がたくさん出てきました。「ノンパラベン」とか「パラベンフリー」という表示のある化粧品です。ですが、防腐剤が入っていないということは、腐りやすいことと同義です。カビや雑菌が発生した状態でその化粧品を使うことになりかねません。また、ノンパラベンと謳っている商品は、防腐効果を高めるために大量のエタノールなどのアルコール系成分を使用しているケースが見られ、長期間使っているとかえって肌にダメージを与える可能性もあります。パラベンは少ない量でも防腐効果があります。ノンパラベンだから肌にいい、パラベンを使っているからダメとは一概に言えないのです。
化粧品は、色や香りやテクスチャー(触感)というものを非常に重視します。しかし、残念ながら、肌にいいもの=テクスチャーがいい、とは限りません。例えばシリコンは、毛髪にとってよい成分とは言えませんが、テクスチャーを重視するシャンプーやコンディショナーには多く使われています。確かにシリコンシャンプーを使うと指どおりがよく、髪の毛がサラサラになり満足感を与えくれます。反対に、天然由来の髪にいい成分だけを使ったシャンプーは、おそらく洗髪後に髪の毛がゴワゴワになりギシギシしてしまい、大変不快になるでしょう。
化粧品に含まれる成分をよく理解し、自分に合った化粧品を選ぼう!
いかがでしたか?化粧品は、常にこの「成分と使い心地のバランス」の上に成り立っている商品だということを忘れないでください。男性用と女性用の違いや、表示指定成分をよく理解して、化粧品を上手に使いましょう!
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