「大人の週末起業」では出口戦略がポイント
ただし、ある程度の年齢になってから起業するとなると、万が一失敗したときは大変ですよね。若ければ再起を図れますが、年をとってからだと、時間的にも体力的にも、やりなおしが効かないことが増える。そういう意味では、「大人の週末起業」では、普通の週末起業と比べて、いくつか気をつけなければいけないことが出てきます。
まず、「あまり大きな投資をしない」ということ。本来の「週末起業」はただの副業で終わるのではなく、「やるからには独立して、あわよくば社員を雇って規模を大きくして、大きな成功をおさめよう」というものでした。しかし「大人の週末起業」では、借金はしない、人を雇わない、設備にお金をかけないなど、できるかぎりコンパクトに行います。
固定費がかからないようにするのも大切ですね。私も会社を経営していますが、固定費の負担は結構大きいもの。ときには、固定費のために働かないといけないような状況もあります。そうなってしまうと、辛いし、つまらないですよね。ですから、投資や固定費は減らし、ミニマムに、確実にやっていきましょう。
それから、「出口をどうするか決める」ことですね。ある程度の年齢になると、「この会社、将来どうなるのかな」ということまで考えないといけない。創立者である自分は、いずれ年老いて死んでいきますよね。そのあと、誰が事業を継いでいくのか。
私も立ち上げた会社を人に任せたことがありますが、かなり苦労しました。後継者探しや、自分がいなくても回る仕組みづくりというのは、本当に容易ではなかった。そうなると、やはり「大人の週末起業」では、出口戦略が自ずと変わってくる。そこが普通の「週末起業」との一番の違いです。
「大人」と言いながら「子ども」っぽく稼ぐ
そして、「大人の週末起業」の一番のポイントでありメリットであるのは、「本当に好きなことで楽しく稼げる」ことです。
会社員としてはどうしても利益の追求が求められ、「自分がやりたい仕事かどうか」は後回しになりがちです。組織の論理に従わなければならない場面もあると思います。特に私たちぐらいの年齢だと、「現場が好きだったのに、知らない間にマネジメントに回されて、人やお金の管理ばっかりやらされている」という人も多いのではないでしょうか。
だからこそ「大人の週末起業」では、「大人」と言いながら「子ども」っぽく、自分の本当にやりたいことを追求してほしいんです。
たとえば、趣味があるなら趣味を仕事にしてみる。会社で部下の面倒を見るのが得意だったなら、教育の仕事をやってみる……長いキャリアの中で、好きな仕事も、苦手な仕事もあったと思います。その中で、好きだったことや得意だったことだけを切り出してやってみる。「自分は本当はこういうことがやりたかったんだな」と気づくこともあると思うので、その気づきをぜひ生かして、本当に好きなことをやれるのがこの時期。ある意味、会社員時代に培ってきたものが、そこでやっと活かせるという感じですね。
人生が二度あれば、もう一旗揚げられる
ただ、「需要」をおろそかにはできないと思います。なんといっても、目的は稼ぐことですから。
これまで、「定年後の過ごし方」というのは、「お金を稼ぐのは二の次で、残りの人生を悠々自適に楽しむ」という流れで語られることがほとんどでしたが、これってまさに「人生80年時代」を想定している。65歳で定年退職して、残りの人生15年くらいなら好きなように生きられたかもしれません。しかし僕たちの時代は、定年後も30〜40年くらいある。そうすると、退職金と、もらえるかもわからない年金だけでは乗り切れないでしょう。
単に「稼ぐことが大切」というと、「金儲けのためだけにやっているのか」と捉えられがちですが、そうではない。お金というのは、感謝の気持ちやモノ・コトの価値を客観的な数値として置き換えたものです。「お金が欲しい、欲しくない」というよりは、「価値を感じてもらっている」という実感をより感じられることに意味があります。それは、生活のためにお金がいるかどうかとは別の次元の話です。
何よりも、時間がもったいないと思うんですよ。30年もあれば、もう一旗揚げられると思うのです。ただ貯蓄を切り崩しながらほそぼそと過ごすのではもったいない。ここはぜひ強調したいんです。
私が好きな落語に、春風亭昇太さんの「人生が二度あれば」という演目があります。「人生100年時代」だったら、まさに人生を二度経験できると思うんです。しかも、二度目の人生では一度目の経験値があるので、本当にやりたいことや得意なことを楽しみながら一旗揚げる人生が送れるはずです。
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