冬場、「体が冷えてつらい…」と冷え性にお悩みの方は多いのではないでしょうか。
冷え性は、特に女性に多く、現代では成人女性の2人に1人以上が冷え性に悩まされているといいます。冷え性の原因は、過剰な冷暖房、服装、体のエネルギー不足など、さまざまですが、その1つに「自律神経の乱れ」があります。
ここでは、『はたらく女性のコンディショニング事典』【監修:岩崎 一郎(脳科学者・医学博士), 松村 和夏(管理栄養士), 渡辺 卓(産業カウンセラー), 松尾 伊津香(プロボディデザイナー)】より、冷え性の原因となる「自律神経」についてご紹介します。
そもそも自律神経ってなんだろう
神経とは、体の各部分と脳をつなげるネットワークのこと。さまざまな司令や情報がこのネットワークを通じて行き来することで、体が正常に機能しています。
人間の神経は、脳や脊髄にある「中枢神経」と、手足や内蔵を動かしている「末梢神経」の2つに大きく分けられ、さらに末梢神経は「体性神経」と「自律神経」に分けられます。
体性神経は、私たちが意識的に手足を動かせるように、「動かそう」という意図によってコントロールできます。それに対し、自律神経は内臓などの機能に関わっており、「今から食べ物を消化しよう」などと意識的に考えていなくても、環境に合わせて体を自動調節します。
さらに自律神経には、体を活動的にさせる「交感神経」と、リラックスさせる「副交感神経」の二つがあります。交感神経が上がると副交感神経が下がり、副交感神経が上がると交感神経が下がるというように、環境や状況に体を適応させるために、シーソーのように交互にバランスを取り合うことで、呼吸、体温、血流、心拍、血圧などを細かく調整しています。
交感神経と副交感神経の乱れが「冷え」や「疲れ」を引き起こす
冷えをはじめ、疲れや肩こり、原因のわからない漠然とした体の不調がある人は、交感神経と副交感神経のバランスの崩れを疑ってみましょう。
仕事や勉強に集中すると交感神経が優位になり、呼吸数、心拍数、体温、血圧が上がります。ほどよい緊張感をつくり出すためには、交感神経を活発にすることも必要です。
でも、この状態が長く続くのは良くありません。次第に酸素を取り込む量が減って、血中の酸素濃度と血糖値が低下、血行も悪くなっていくからです。さらに部分的な体温低下が進み、冷えや肩こりのもとにもなります。一方、副交感神経ばかりが高くても、やる気が出ないなど無気力な状態になってしまいます。
理想は、交感神経と副交感神経の両方が同じくらい活発にはたらいている状態。この分担がうまくいかなかったり、どちらかがはたらきすぎたりする「自律神経の乱れ」が起きると、疲れやだるさ、めまい、不眠など、体や心の不調につながると考えられているのです。
自律神経が整えばこんなメリットが
では、自律神経のバランスが取れているとどんないいことがあるのでしょうか。
・ストレス緩和
交感神経が過剰な状態になると、イライラしたり不安になったりして些細なことでもストレスを感じやすくなります。ストレスを緩和させるためには、過剰な交感神経を抑えて副交感神経のはたらきを上げて、リラックス状態をつくることが重要です。
・疲労回復
自律神経のバランスが良くなると、全身の血流が良くなります。血流が悪いと酸素や必要な栄養素が全身に行き渡らなくなり、肩こり、腰痛、冷えなどさまざまな体調不良、疲れにつながってしまいます。
・冷え性改善
自律神経が整うと血流が改善されるため、末端の神経まで血液が届くようになり、冷え性が緩和されます。
・倦怠感、不定愁訴の改善
副交感神経が正常にはたらいていないと、内臓の機能が低下してしまい、食べたものが消化されなかったり、むくみ、やる気が出ないなどの症状がみられます。
自律神経を整えるポイントは「適度な休息」
ここまで述べてきた通り、自律神経は体、心の健康を保つために重要な要素です。
現代人は仕事のストレスから交感神経が優位になってしまっていることが多く、副交感神経は加齢によってはたらきが低下するため、自律神経のバランスを整えるには「副交感神経のはたらきを上げる」ほうを意識することが大事です。
副交感神経のスイッチを入れてあげるために、仕事や勉強などで長時間集中し続けたあとには、必ず集中を解いて休息の時間を持つようにしましょう。タイミングとしては1時間に1回がベストです。
このとき、とにかく休めばいいのだ、とただボーッとしているのではあまり効果がありません。ポイントは体を動かして血行を良くすることと、たくさんの酸素を取り込み、酸欠状態を解消することです。軽いストレッチや歩行、深呼吸が効果的です。
生活習慣もチェックしよう
また、普段から自律神経を整え、疲れにくい体をつくるために大切なのは「生活習慣」です。
自律神経は約24時間の周期でバランスを保っていて、基本的には昼は交感神経、夜は副交感神経が高くなるように調整されています。その周期を正しく保つためには睡眠、食事、運動が関係しており、生活リズムが乱れると自律神経に負担がかかってしまうのです。
生活習慣の乱れは、病気や肥満だけではなく、自律神経の乱れによる体の不調を招いてしまうことも覚えておきましょう。
自律神経を整えて、冬場のつらさを乗り切ろう!
不規則な生活は、自律神経のバランスの乱れを引き起こし、冷え性につながることがあります。
「体が冷えてつらい」と冷え性にお悩みの方は、ぜひ一度自分の生活リズムを見直してみましょう。
『はたらく女性のコンディショニング事典』 (クロスメディア・パブリッシング) |