「明日に疲れを持ち越さないプロフェッショナルの仕事術」(著:渡部卓)より
休むことに罪悪感を感じてはいけない
みなさん、きちんと休暇をとっていますか?
日本人の多くは、休むことを罪だと思っているきらいがあります。しかし生産性をあげるためにも、よく休み、心身ともにリフレッシュすることはとても大切です。
そこで今回は、休暇をとることについて考えてみましょう。
仕事で結果を出す人というのは、ハードワーカーだと思われがちですが、全員がそういうわけではありません。バリバリの経営者や管理職に話を聞くと、彼らは休み方が上手ですし、仕事の最中でもけっこう「さぼる時間」を設けています。
当たり前の話ですが、休みなく働いて結果を出そうという人は、どこかの時点で息切れしてしまいますし、ポッキリと心が折れてしまうケースもあります。つまり、そんな働き方は長続きしないのです。
ビジネスマンにうつ症状になる人が増えていますが、医者や臨床心理士が薬以外に示すことができる処方箋は「休みなさい」というアドバイスが圧倒的です。しかし、これがうまくできる人はうつ症状も改善できるのですが、うまくできない人が日本人には多いのです。
「休む・さぼる・息抜きする」ことに対する罪悪感を払しょくすることは大事なことです。仕事を一生懸命にやって疲れないわけがないのですから、休んで肉体的にも精神的にもリフレッシュする必要があるのです。
日本は、清潔で安全で食事もおいしい国ですが、疲れている人が多いのは、休み方が下手なのと、人間関係に余計な気を遣っている部分が大きいからなのです。
星野リゾート社長・星野佳路さんの「3ナイ主義」
休暇の大切さについて、参考になるお話をご紹介します。
日本のリゾート経営の第一人者である星野佳路さんが、「プロフェッショナルの仕事とストレスマネジメント」について自論を述べています。星野さんのバランス感覚の良さとメンタル面での強さには非常に驚かされます。星野さんの印象的な言葉を、いくつかご紹介しましょう。
「経営者だからといって頑張り過ぎるのはよくない」
「会いたくない人には会わない・行きたくないところには行かない・出たくない会議には出ない—―3ナイ主義を知って、気が楽になった」
「好きなお客様のニーズ、ウォンツに応えることは苦痛ではなく喜び」
「社員にストレスがたまったら、いいサービスはお客様に提供できない」
「スーツは日本の気候に合わないので着ない」
これらは星野さんのように、自由度の効く、そして優秀な経営者だからできることではあります。実行をするのは、むずかしいことも多いでしょう。しかし誰もが認めるプロフェッショナルの言葉として、心の隅にとどめておいてください。大切なのは、無理をしすぎないことなのです。
日本人の有給休暇の取得率は50%
厚労省が出している「有給休暇ハンドブック」によると、日本人の有給休暇の取得率は約50%だそうです。せっかく与えられている休む権利の、たった半分しか消化していないのです。
そのハンドブックによれば、
「新しい技術への対応や独創的なアイデアは、ストレスの解消などのリフレッシュがきちんとでき、生きがいの持てる生活、働きがいのある職場から生まれてくる」
とされています。
また、休暇の取得促進によって、企業にとっても以下の5つの経営効果が生まれるとしています。
①業務を円滑に引き継ぐためには、業務の内容、進め方などに関する棚卸を行う必要がありますが、その過程で業務の非効率な部分をチェックすることができます。
②代替業務をこなすために従業員の多能化促進の機会となります。
③交代要員が代替業務をこなすことができるかどうかの能力測定の機会になります。
④交代要員への権限移譲の契機となり、従業員の育成につながります。
⑤休暇の有効活用により、休暇取得者のキャリアアップを図ることができます。
その上で、夏季や年末年始を活用した大型連休の取得、飛び石連休を有給休暇でつなぐブリッジホリデー、結婚記念日や誕生日に休暇を取るアニバーサリー(メモリアル)休暇などを提案しています。
国も、有給休暇率の消化の悪さ、働く人のワークバランスの偏りに危機感を覚えているのです。
自分が思うほど会社や上司はあなたを見ていない
まじめな人ほど、休むことに対して罪悪感を抱きますが、上司はその部下が休んでいることをそれほど意識してはいません。「あれ、きみ一週間休んでたんだ」ぐらいの認識だったりするのです。ある意味ずうずうしい人ほど得をする面があるのです。
日本人が世界の中でもまじめな人が多いのはたしかです。そのまじめさが日本人を疲れさせている面もあり、休むことに対する罪悪感を払拭する方向に進むとだいぶ違ってくるのではないでしょうか。
運動を定期的に行う、毎日の食事に気を付けるというのは自己管理の基本です。しかし、まじめに自己管理をしている人が疲れないかと言えば、必ずしもそうではありません。自己管理と疲労度はリンクしていないのではないかと思われます。健康に留意している人ほど身体的には疲れていたりします。逆にちゃらんぽらんで体重管理などしていない人ほど疲れが少ないということもあるのです。
まじめな人は、健康管理においても、「これをやりきらないと気持ちが悪い」といって、自分に鞭を打つきらいがあるからです。
アメリカのエリートと付き合っていて驚くのは、休むときには完全にネット環境からも離れることができることです。
ネット環境からなかなか離れられない日本のビジネスマンは、常に集団と同じことをしていないと挫折感を感じる人が多いということでしょう。みんな一人ひとり違っていいとは頭でわかっていても、根本では人と同じでいたいという欲求があるのです。これは非常に根深く、また考えていかなけれけばならない問題です。
休みベタは生産性を下げ、ストレスを生む
上記に紹介したように、勤勉さが必ずしも美徳とは限りません。場合によっては、休むのが下手なせいで生産性を下げている可能性もあります。そして、ストレス増幅の大きな原因となってしまうのです。
もしも仕事に追い詰められ、息苦しさを感じているようでしたら、休むのも大事だと割り切りましょう。そして休日には趣味などに時間を好きに使い、しっかり休むように心がけてみてください。くれぐれも身体を壊したりしないよう、自分を労わってあげてください。
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