世界中をめぐる著者が、現地の健康情報を毎週お届けします。
ナイジェリアに、
「旅する子どもは家にいる老人より物事をよく知っている(引用→アフリカのことわざ他)」
というイボ族の諺があります。
ドコでナニを見ても、「木を見て森を見ず」の観察力。忘却の彼方へ向かう、旅する熟年夫婦です。
か弱い軽自動車で、アフリカくんだりまで流れてきた軽率な行動力と伴わぬ実力。
悪徳警察官の賄賂攻撃にさらされて、ストレスが溜まりまくりです。
アフリカの巨人と呼ばれる、ナイジェリア。
人口1億8000万人はアフリカで最も多く、世界ランキングは第7位。
世界一早いペースで人口が増え続け、この勢いでは2050年にはほぼ4億人。インド、中国に次いで、世界のトップスリーに食い込みます。
輸出の90%以上を原油に頼ったGDPは、2014年に奇跡の所得倍増大躍進を成し遂げます。
集計し直すという単純、かつ真っ当な裏技で、2倍に増やしたのです。
この暴挙で南アを抜いてアフリカ最大の経済大国にのし上がり、世界的にも24位。
国民ひとり当たりのGDPは133位ですが、誰かは豊かなのです。
世界に広がるズボラ農法。
ナイジェリアの国力の源は、子だくさん。
家族計画を支えるのは、芋です。
主食のキャッサバ。
逞しい大根より巨大です。
市場だけでは収まりきらず、街道に沿って延々と連なる芋の山。
キャッサバの原産地は南米ですが、船積みされた奴隷の食料としてアフリカで栽培が始まり、アフリカではトウモロコシに次ぐ主食です。
ちなみにトウモロコシの原産地もまた、アメリカ大陸。付け加えると、トマトもしかり。
今更ながら提案させていただくと、人類の発祥地はアメリカ大陸でよかったんじゃないですかね?
キャッサバは「貧者の食べ物」と蔑まされていますが、国連がイチオシする由緒正しい作物です。
世界の食料問題を解決するとして、期待されています。
畑を耕さなくてもよいというズボラ農法にくわえ、茎を地面に挿すだけという超簡単栽培法。
しかも肥料要らずで乾燥に強いというお金のかからない体質ですから、世界中の荒地で収穫できます。
根の栄養は、炭水化物。葉にはタンパク質・鉄分・カルシウム・ビタミンCなどなど。
高カロリー・高糖質なので、ダイエットには向きませんが貫禄はつきます。
日本人には馴染みのないキャッサバですが、でんぷんとしてさまざな商品に身を変えて、日本中に潜んでいます。
インスタント食品やパンや菓子。医薬品や化粧品。接着剤や塗料にもなります。
タピオカの原料もキャッサバです。
ビールや麺類にも使われているので、筆者にとっては隠れた必需品でした。
また中国ではバイオ・エタノールに加工され、エネルギー源として地球を救う芋なのです。
生で食べるな、噛んで食べるな!
ズボラ農法でも丈夫に育ち、食料のみならず、でんぷんやエネルギーとして活躍する万能作物のキャッサバ。
実は、うっかり素人が調理すると死にかねぬ野菜界のフグ。シアン化合物という毒素が含まれています。
ゆえに生キャッサバは、日本では輸入禁止。お目にかかれぬわけです。
まず、調理前に毒抜きをします。
茹でたあとに潰し、おにぎり大に丸めたら完成。
白いので、見た目はお餅。素手でちぎり、スープにつけて食べます。
必ず右手を使い、噛まずに飲み込むのがご当地流です。
ほとんど味はしないので、付け合せのスープが命。
腹持ちの良さが、人気です。
最後に、アフリカの諺をもうひとつ。
「余った食べ物を保管するのに最もよい場所は、お隣さんのお腹の中です(引用→アフリカのことわざ他)」
この隣人愛を履き違えているのが、検問の警察官。
「お土産はナニ?」
「お金、くれる?」
「罰金を払え!」
毎日キャッサバを食べながら、痩せてきました。
デザイナー。1965年、北海道旭川市生まれ。札幌で育ち、東京で大人になる。出版社勤務、デザイン事務所、編集プロダクションなど複数の会社経営の後、2005年4月より建築家の妻と夫婦で世界一周中。生活費を稼ぎながら旅を続ける、ワーキング・パッカー。世界中の生の健康トレンド情報をビジネスライフで連載中。