ベストセラー『最高の体調』著者にして、年に5000本の科学論文を読み続けるサイエンスライター・鈴木祐さんに質問する本連載。今回はゲストを迎えた特別企画「パレオと卵に聞いてみた(後編)」をお送りします。
ゲストは卵のスペシャリストとしてテレビや動画等で活躍する“たまごソムリエ”友加里さん。完全食と名高い注目食材「卵」に、科学的知見と美味しさの両面から切り込みます。
前編『【簡単】完全栄養食!卵ソムリエ直伝「納豆生オムレツ」を作ってみた』では、友加里さんが最強の完全栄養食「ふわとろ納豆生オムレツ」を伝授。後編では「完全食・ダイエットフード」としての卵に迫ります。
ゆで卵ダイエットは有効?
友加里:ゆで卵ダイエットを一時期やっていて。「朝に腹持ちのいい固茹で卵を食べると摂取カロリーが減る」というんですが、それは理にかなっているんでしょうか。
——過去には市川海老蔵氏、板東英二氏が「ゆで卵ダイエット」を実践し話題になった。卵1個のカロリーは約90kcal。カロリーが気になるところだが、ダイエット効果はいかほどなのか。
鈴木:一理あると思いますよ。「朝に卵をとると痩せやすくなる」(※1)「朝のパンをゆで卵に変えたら痩せた」(※2)という話はいくつかあるので。要するにたんぱく質の量が大事なんです。食欲を抑制する効果がありますから。
友加里:そうなんですね。実は私、ゆで卵ダイエットに挫折してしまいまして。
鈴木:それはまたどうして。
友加里:卵が大好きだから、ダイエットとして卵を増やしたところでまったくダイエットにならないことに気がついてしまったんです!
鈴木:それはそうだ! 友加里さんは一日に卵を6個食べているんですよね。たんぱく質は十分足りているんじゃないですか?
友加里:そうだと思います。私は結構不規則な生活をしてるんですけど、全然風邪をひかない。これ、卵のおかげだと思います。
鈴木:栄養が満ちてるから風邪をひかないんですね。あとは脂質と食物繊維のバランスに気をつけるだけでいいんじゃないでしょうか。
■参考記事:「いま、卵のダイエットフードっぷりが凄い」(パレオな男)
卵×米の「卵かけご飯」が最強?
友加里:「1日3個の卵は問題ない」とのことでしたが(対談前編参照)、健康面から考えてベストな卵の個数って、結局何個ぐらいだと思いますか?
鈴木:それは難しいですね。1日3個食べると糖尿病になりやすいというデータもありますが、これは「データ上そう見えるだけ」という可能性があります。
例えば、アメリカでは卵を食べる人は不健康な生活をしている傾向があるんですよ。
友加里:えっ、なんでですか!
——ここへきて「卵」と「不健康」の結びつきは意外だ。しかし、この事実は「卵=健康に悪い」に直結するわけではないという。
鈴木:アメリカではスクランブルエッグや加工肉のソーセージで食事を終わらせてしまう人が多いんです。元から不健康な生活週間の人をサンプルにとるので、それだけで判断していいかはわからない。健康な人であれば1日1個卵を食べると血液の状態が良くなるというデータも出ていますから。
友加里:つまり、「1日1個は必ず卵を食べたほうがいい」ということですよね。
鈴木:そう思いますよ。こんないい食材は他にない。
——自身のブログでも「1日に卵を3〜4個ずつ食べるようにしている」と書き、卵を重要視する鈴木さん。卵のどこに注目しているのだろうか。
鈴木:もともと卵は単体で「完全食」と言われるくらいにすごい食材。特に注目しているのは卵に含まれる抗酸化物質ですね。
というのも、「卵の抗酸化物質が体の酸化ストレスを抑えて血管の働きを良くする」(※3)という研究があるんです。
また、たんぱく質と抗酸化物質を一度に摂れるという点も貴重です。
友加里:たんぱく質が豊富ということで、卵は筋トレに向いているとも言いますよね。
私の友人は卵白10個分と卵黄1個をスクランブルエッグにして食べているんです。脂質をあまり摂りたくないんだとか。
鈴木:卵白はたんぱく質の塊だから正しいと思いますが、栄養豊富な卵黄を除いてしまうのはもったいないですね。
友加里:卵は食物繊維とビタミンC以外の栄養素は揃っていますからね。
鈴木:完全食として考えた場合、糖質も欲しいところです。
友加里:つまり、米と卵が揃っている卵かけご飯が最強ってことですか?
鈴木:それもいいですね!
卵×オリーブオイルで栄養素アップ
——鈴木さんによると、「完全食」と呼べるような食材は非常に限られているという。
鈴木:食材単体のバランスで考えるなら、完全食と言えるのは卵ぐらい。準完全食のサツマイモのほかには候補がありません。あとは組み合わせで栄養を補っていくしかない。
友加里:卵と組み合わせるといい食材には何があるんでしょうか。それらを調理するとき気をつけることはありますか?
鈴木:調理するときに油を使わなければなんでもいいと思いますよ。例えば植物油を使うのは体に悪い。体が酸化してしまうので。
友加里:やっぱりサラダ油は体によくないんですね!
鈴木:なにせ、製造過程で油が酸化します。商品として並んだ時点で相当酸化が進んでいる。
と言っても、料理するときに油を使わないという訳にもいきませんよね。オリーブオイルを使うのはどうですか。これなら商品自体に抗酸化物質が入っているから、酸化を防いでくれます。
友加里:卵とオリーブオイルの相性はいいんでしょうか。
鈴木:その組み合わせに限定した研究はありませんが、「野菜炒めにオリーブオイルを使うと野菜の栄養素が高まる」(※4)という研究はあります。ただ、味のベースが油で決まってしまいますね。
友加里:オリーブオイルは味の主張が強いんですよね……。他に卵と組み合わせるといい食材ってありますか?
鈴木:脂溶性ビタミンが多く含まれているものと合わせるとか。
友加里:ニンジンやトマトですね。
鈴木:一緒に摂ると栄養素の吸収率が高まります。
白米はダイエットの味方だった
——対談が進むにつれ、友加里さんは「白米」「サツマイモ」といった高糖質食材が気になった様子。糖質を制限した食事を続けているという友加里さんは、パレオダイエットの糖質問題に切り込んだ。
友加里:パレオダイエットを始めたきっかけはなんだったのでしょうか?
鈴木:もともと二重顎ができるようなデブだったんですよ。
友加里:えっ! 想像がつかない。
鈴木:痩せようと思って、まずは「味のないものをひたすら食べる」というダイエットを試しました。その後、当時アメリカで流行っていたパレオダイエットを取り入れたんです。
友加里:味のないものって、例えば何を食べていたんですか?
鈴木:豆腐と白米しか食べなかった。実際、体重はすごく減りましたよ。
友加里:私は糖質制限ダイエットの影響で今でも白米を抜いてるんです。糖質なのに、太らないんですか?
鈴木:糖質で太るというのはまったく根拠がない。栄養学の教科書なんかをみると「糖質が脂肪になる」と思ってしまいがちですが、実際は大量に糖質を摂っても筋肉のグリコーゲン(筋肉に蓄えられる糖の一種)に保存されるだけ。炭水化物ダイエットっていうのは、教科書だけ読んだ人が唱え始めた説なんじゃないですかね?
確かに「低糖質ダイエットが有効」というデータもあるけど、それは総カロリーが減っていたから。低脂肪ダイエットと低糖質ダイエットを比べても効果は変わらない。
結局、ダイエットはどれほど頑張らずに総摂取カロリーを減らせるか、が大事なんです。
「ジャガイモは太る」はウソ?
鈴木:ただ、自分は米を食べません。主食はジャガイモかサツマイモ。
友加里:ジャガイモも太るイメージがあったんですけど、大丈夫なんですか?
鈴木:先ほども言ったように、糖質が原因で太るという説は否定されています。ジャガイモはコロッケやフライドポテトなど、油と絡めた料理に使われやすい。さらに生活が乱れている人が好んでジャンクフードを食べるから、データ上「ジャガイモが太る」ように見えるんですね。
ジャガイモは糖質が高いものの、栄養価が高く腹持ちがいいんです。シドニー大学の研究(※5)では、食品満足度(食後の満足度を食品ごとに数値化したもの)が最も高い食品は茹でジャガイモだという結果が出ました。
海外ではジャガイモだけを食べ続ける「ジャガイモダイエット」が成功した例もあります。ジャガイモで太るということはありません。
友加里:私はポテトサラダが大好物なんですけど、太ると思って避けてました。
鈴木:ポテトサラダにはマヨネーズが含まれているので、そこは注意したいところです。オススメは茹でたジャガイモを冷やして食べること。カロリーが減り、レジスタントスターチ(胃や小腸で消化されない食物繊維)が増えて腸内環境にもいい。
友加里:ジャガイモがダイエットにいいなんて意外。今日一番の衝撃かもしれません。
鈴木:炭水化物のジャガイモと完全食の卵を組み合わせたら、栄養的に最強ですよ。
先ほど「卵かけご飯が最強」という話が出ましたが、糖質を米ではなくジャガイモにする「卵かけジャガイモ」もいいのでは? ジャガイモ料理は健康食として使えると思いますよ。
友加里:私、卵ソムリエの次はジャガイモソムリエになろうかな!(笑)
完全食と呼ばれる食材「卵」に味・栄養・ダイエット面から光を当てた2人の対談。「パレオな男」鈴木祐さんのデータと「たまごソムリエ」友加里さんのレシピがあれば、卵をより有効活用できるに違いない。
生活習慣・ストレスを改善したい方へー「過去最高のコンディション」を目指す実践型プログラム
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『最高の体調』実践プログラムの特徴
・必要なツール(実践ワークシート・オリジナルレシピ集・観葉植物など)はスタータキットとしてご自宅にお届けします。
・学習は会員専用ページからいつでも可能です!
・会員限定のコミュニティページでは、最高の体調を目指すユーザー同士で目標の共有、実践報告、アドバイス、質疑応答などができます。
ときには鈴木祐氏がコメント・回答することも!
ここでの投稿で話題になったテーマや要望のあったテーマについて、鈴木氏がメルマガで回答したり、オリジナルイベントや商品を企画したりと、みなさまの声を吸い上げてプログラムがアップデートされています。
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参考文献
※1:「Protein-Rich Breakfasts Prevent Unhealthy Snacking in the Evening, MU Researcher Finds」March 26, 2013(MU News Bureau)
※2:Amy Miskimon Goss, Barbara A Gower, Taraneh Soleymani, Mariah Stewart, and Kevin Fontaine「Effects of an Egg-based, Carbohydrate-restricted Diet on Body Composition, Fat Distribution, and Metabolic Health in Older Adults with Obesity: Preliminary results from a randomized controlled trial.」1 Apr 2017
※3:Dominik D. Alexander , PhD , MSPH, Paula E. Miller , MPH, Ashley J. Vargas , PhD , MPH , RDN, Douglas L. Weed , MD , PhD & Sarah S. Cohen , PhD「Meta-analysis of Egg Consumption and Risk of Coronary Heart Disease and Stroke」06 Oct 2016
※4:Jessica del PilarRamírez-AnayaaCristinaSamaniego-SánchezbMa. ClaudiaCastañeda-SaucedocMarinaVillalón-MirbHerminia López-Garcíade la Serranab「Phenols and the antioxidant capacity of Mediterranean vegetables prepared with extra virgin olive oil using different domestic cooking techniques」Food Chemistry Volume 188, 1 December 2015, Pages 430-438
※5:Holt SH, Miller JC, Petocz P, Farmakalidis E.「A satiety index of common foods.」Eur J Clin Nutr. 1995 Sep;49(9):675-90.