「疲れやすい人の食事 いつも元気な人の食事」(著:柴崎真木)より
「何を食べるか」と同じくくらい大事!「食べるタイミング」の重要性
何を食べるかを考えることは大切です。しかし、「いつ」食べるかを考えることによって、さらに効果的な食べ方をすることができます。
最近では、時間栄養学という考え方が広まり、何を食べるかだけでなく、食べる時刻、順序、速度が健康に大きく影響することが明らかになってきました。
スポーツの世界では、以前からトレーニングと栄養補給のタイミングは重要視されています。例えば、高強度のウェイトトレーニングの後、30分以内にたんぱく質と炭水化物をとると筋量が増加します。
しかし、2時間以上たってから同じ量のたんぱく質と炭水化物をとっても筋量は増加しないことが明らかになっています。そのため、アスリートはトレーニング後できるだけ早く食事をとるように心がけたり、食事がとれない場合には補食やプロテインなどのサプリメントを利用したりして、筋肉増量のタイミングを逃さないように気をつけています。
血糖値が上がりやすい朝。朝食は食べる順番が重要
いつ食べるかということで、もっとも重要なタイミングは「朝食」です。朝食は体内時計をリセットして体温を上昇させ、エネルギー補給することで身体を動かすための準備をします。朝食をとらずに昼食をとると、身体はそれを朝食とみなし、体内時計が遅れていきます。体内時計1日4時間遅らせた状態を4週間続けると前糖尿病状態が起こり、規則正しい生活に戻すと元の状態に戻ったという研究報告もあります。朝食では、エネルギー源となる炭水化物とたんぱく質を一緒にとること。これが、体内時計の調節には重要です。それに加えて、食べる順番にも気をつけなければいけません。
ただし、朝は1日のうちでも血糖値の上昇が大きい時間でもあります。血糖値の急激な上昇を防ぐには、食物繊維の多い野菜やきのこ、海藻類を先に食べてから、炭水化物やたんぱく質をとるようにするとよいでしょう。ですから、まず汁物や野菜料理を食べてから、卵や肉魚のおかず、ごはんやパンなどの穀類を食べるようにしましょう。
若い女性の間で流行しているグリーンスムージーは、果物が意外と多く使われているため、血糖値が上がりやすくなるので注意してください。また、グリーンスムージーだけだとエネルギーやたんぱく質が不足してしまいます。卵や乳製品を組み合わせたり、できれば食事をしたうえで飲み物としてとったりするとよいでしょう。
同じ3食でも違う?「朝昼夕」の3食と「昼夕深夜」の3食の差
朝食と夕食とのエネルギー配分は、同等か朝食のほうが多いと、太りにくく、体内時計も乱れにくいことがわかっています。
次の図は、男女それぞれの1日の理想的な食事の例です。3食の理想的なエネルギー配分は「2:1:1」といわれています。しかし、夕食を少なくするのは、家族団らんや友人などと楽しく過ごす時間であったり、仕事上のお付き合いがあったりと、現実的にはなかなか難しいでしょう。せめて「3:3:4」くらいになるようにし、夕食は脂肪が少ないものを選び、エネルギーを抑えるように心がけましょう。
理想的な1日の食事例
通勤や通学、家事などで比較的よく身体を動かす人の例です。コンビニやスーパーのお惣菜や外食を利用してもできそうなメニューにしています。
深夜の食事はもっともよくありません。食事をすると食事誘発性熱産生(DIT反応)が起こります。食事をした後に身体がポカポカすると感じる人は多いでしょう。これは食事をすることによってエネルギーを消費しているためですが、食事時刻の違いによってDIT反応の違いを実験した研究があります。
1食500キロカロリーを朝昼夕の3回で食べたグループと昼夕深夜の3回で食べたグループでは同じ1日の摂取エネルギーは同じにもかかわらず、深夜食に比べると朝食のほうが4倍もDIT反応が高かったのです。この研究は1日の実験で体重の変化までは見られませんでした。しかし、1日のDIT反応の違いを計算すると、深夜食のほうが1年で0.6キログラムの体脂肪が増えることになります。
また、夜10時から深夜2時頃までは脂肪を合成するたんぱく質である「Bmal1」が昼間の20倍に増加し、食事のエネルギーの75%を脂肪に変えてしまうといわれています。脂肪の多い食事や甘いものは、できるだけ昼間に食べるようにすると太りにくいです。わかっているけど、〆のラーメンやお茶漬けがやめられないという人も、その習慣を続けないようにすることが大切です。
高血圧が気になる人必見!塩分は夕方に排出量が多くなる
朝食をとることは大切であることは先ほど述べましたね。ここでポイント。朝食で塩分の多いものをとりすぎないように注意しましょう。
食塩のとりすぎは高血圧の原因になりますが、血圧は日中の活動時間に高く、夜に低くなることがわかっています。特に朝は血圧が上がりやすく、起床から数時間の間に「モーニングサージ」と呼ばれる瞬間的な高血圧状態が発生することがあります。ですから、高血圧の人が朝食に塩分をとりすぎると、早朝に心筋梗塞や狭心症などを起こす可能性があります。
朝の通勤時には、駅の立ち食いそば店やファーストフード店がにぎわっていますが、そばやうどん1杯を汁までいただくと4~5グラム程度も食塩が含まれています。牛丼1杯で2.5~3グラム程度、ハンバーガーやフライドポテトなどのファーストフードも2~3グラムもあるため、血圧高めの人が毎日こうした朝食をとるのはおすすめできません。
こうしたものを食べたときには、食塩の排泄を助けるカリウムがとれる生野菜や果物をとるとよいでしょう。コンビニでスティック野菜や、カットフルーツ、食塩不使用のトマトジュースを買うと手軽で簡単です。カットフルーツの中でもりんごは食物繊維も多く、エネルギーも低めなのでおすすめです。同時に水分も多めにとると、体内の塩分と水分が尿として一緒に排泄されます。
また、牛乳に含まれるたんぱく質は血圧上昇を抑える働きがあります。血圧が高めの人は朝食で牛乳を飲むようにするのもよいでしょう。
血圧が低くなる16時~20時頃には、腎臓でNa(ナトリウム)を再吸収するアルドステロン濃度が低くなるため、塩分排泄量が多くなります。高血圧の治療中で減塩食をとらなければいけない人は、朝食、昼食は薄味を心がけましょう。そして、夕食に少し味付けの濃いものをとり、塩分制限をゆるめると、食事のストレスを減らせます。朝食の定番である味噌汁も塩分量が多いといわれますが、そばやうどんなどに比べればずいぶん少なく1杯で1~1.2グラム程度です。
味噌に含まれるたんぱく質は血圧低下作用があるといわれています。味噌を使う場合、他のおかずで塩分の少ないものにしたり、減塩しょうゆを使ったりすれば、食塩量を抑えられますよ。
高血圧は日本人でもっとも患者数の多い生活習慣病。正常血圧の人でも減塩することが高血圧予防のために必要です。厚生労働省では1日の塩分摂取目標量を男性8グラム未満、女性は7グラム未満と定めています。ラーメンやパスタなどの麺類、カレーや丼ものは全体的に塩分量が多いので、高血圧でなくても頻繁に食べることは控えたほうがいいですね。
運動のベストタイミングを知って、効果的に運動しよう!
健康づくりに欠かせない運動にも効果的なタイミングがあります。
夕方は肺活量、筋量、最大酸素摂取量のピークを迎えます。したがって、朝より夕方のほうが運動効果は上がりやすく、脂肪代謝も促進されるのです。つまり、夕方の運動のほうが太りにくいということです。昼食で少し脂肪の多いものをとりすぎたときには、帰りにスポーツクラブで汗を流したり、少し余分に歩いたりしましょう。肥満予防に効果的です。
では、出勤前にウォーキングやジョギングをする人は効果がないかというとそういうわけではありません。エネルギー消費量が増えることには変わりないため、体重増加を防ぐことができます。朝の光をしっかり浴びることで体内時計のリセット効果を高めることもできます。
また、運動によって脳を活発にするエンドルフィンが分泌され、集中力が上がるともいわれています。エンドルフィンの分泌や、運動後の代謝亢進には、ある程度の運動強度が必要だといわれています。しかし、生活習慣病予備軍の人は要注意。生活習慣病予備軍の人では、強度の高い運動は血圧上昇を伴うことから運動中の心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まります。運動強度を上げすぎず、早朝に拘らず、こまめに身体を動かすようにするとよいでしょう。
タイミングを知って、食事や運動をより効果的なものに!
いかがでしたか?食事をとるタイミングや運動をするタイミングを知っておけば、効率よく栄養をとれたり、脂肪が燃焼できたりします。まずは自分の身体で気になるところを改善できる食事・運動のタイミングで取り組んでみましょう。
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