ダメな上司が職場の生産性を落とす
仕事をしていく上で部下に当然注意したり、叱ったりする場面は出てきます。
しかしこの注意する、叱る、という行為も実はかなりコツのいるものです。実際、あまりに部下を追い詰めて「うつ」にしてしまったというような事例がよくニュースで流れていますね。頭ごなしに叱ることは、決して相手を思っての行為ではありません。
そしてそのような上司は、会社の利益を上げるどころか、かえって生産性を落とす事態を招きます。
ここでは、健康経営を行う上で知っておきたい、ダメな上司のパターンと、理想的な叱り方、2つをご紹介します。部下を持つ方は自分の行動を顧みる機会、また上司にお悩みの方は自分の上司がどのパターンかを知り、対策を練る参考にしてみてください。
部下を「うつ」に追い込む管理職のタイプ5つ
職場でのストレスの問題は、経営レベルでもっと注意が必要なのですが、実際には経営者も気づかないブラックボックスになっているところまできています。
先ほども説明したように、要注意すべきは部下を「うつ」に追い込んで、職場の生産性を下げる管理職の存在です。どんな管理職が部下を追い込むのか、類型化して解説していきます。
①戦略好きのナルシストな「エリート型」
長時間よく働くし、仕事の能力も高いのですが、それらは自己愛からくる自己実現と出世欲がベースになっています。同僚や部下の指導には関心が薄く、現場や出先への共感、アドバイスも苦手です。
②上目コミュニケーションの「ひらめ上司」
部下のホウレンソウを傾聴できず、途中で遮って怒ったり指示を出したりするタイプです。しかし、自分の上司には上目づかいで、平身低頭のコミュニケーションをとります。
③昭和エレジーの「ガラパゴス上司」
旧世代の見方や価値観を押し付けるタイプの上司です。自分の育った時代の価値観に合わないものは否定して、「派遣や女性には仕事を任せられない」「男性の育児休暇など必要ない」などと公言します。
④物腰だけは柔らかい「慇懃無礼上司」
相談には丁寧に応じますが、解決策を考えようとしない上司です。相談しても、自分も苦労している愚痴を並べ、部下に時間の無駄だったと思わせます。言葉遣いはソフトですが、自己保身がベースにあります。
⑤ストレスを酒で誤魔化す「アル中上司」
相談には気安く応じますが、酒が飲みたいだけの上司です。翌日には相談された内容をすっかり忘れています。
これらがダメ上司の典型といえる5つのパターンです。
経営者にとっては、このような管理職がいること自体が組織のリスクを高めるわけで、最近ではエグゼクティブ研修などで管理職の資質を高める方法をとっているところも増えてきます。
正しい叱り方で叱るのが大事
それでは逆にどのような態度で接するのが理想といえるでしょう。
職場の同僚や部下に対して、「その言い方はないだろう」とか、「そんなやり方ではミスして当然だよ」と感じることは当然。違う価値観を持つ者同士がほぼ毎日のように顔をつき合わせているです。それが原因で仕事に支障が出てしまうようなら、とても労力のいることですが、相手に正しい言い方、やり方を考える必要があります。
言いにくいことを無理なく自然に、かつ相手を追い込まむこともなく、確実に伝えられる方法があります。
この方法は、「かりてきたねこ」と表現できます。語呂合わせとして、覚えてみてください。
「かりてきたねこ」で言いにくいことも伝えられる上司に
「か」…感情的にならない
怒ると叱るは違います。怒るとは感情が爆発している状態であり、叱るとは理性が働いている状態です。感情の激しい波立ちを感じるならば、いったん時間をおきましょう。
「り」…理由を話す
なぜ叱るのかの理由をフィードバックしましょう。そうでないと、部下が「八つ当たりされた」「嫌われている」などと誤解をすることがあります。何を目的に部下を叱るのか、よく考えておきましょう。
「て」…手短に叱る
日頃のコミュニケーションがとれていれば、部下を叱る時間を長引かせる必要はありません。
「き」…キャラクターに触れない
性格や人格を否定するようなコメントはNGです。折れやすい部下の心は自尊心が高く、非常に繊細です。
「た」…他人と比較しない
誰でもそうだと思いますが、他人と比較されて叱られることほど自尊心が傷つくことはありません。「比較」というものさしはチラリとでも見せないようにしましょう。
「ね」…根に持たない
部下のミスを上司がいつまでも根に持たない、面談のあとでも引きずらないことです。本田宗一郎氏は、烈火のごとく部下を叱っても、次の朝にはまったく忘れたかのように部下に接していたといいます。
「こ」…個別に伝える
同僚や取引先の見ている前で叱られたり注意されたりすることほどプライドを傷つけられることはありません。別質などで個別の面談の場を持ちます。
この「かりてきたねこ」は、日本人に限らず、外国の人を注意するときに有効です。
上司と部下である前に
上で紹介したように、ダメな上司にならないことは、会社の利益をあげることにもつながります。人を精神的に追い込んで、それでも何も感じない人間になってしまってはビジネスパーソンの前に、人として失格です。誰もが個別の個性を持った人間であるということを頭に入れ、部下に接することを忘れないでください。
『明日に疲れを持ち越さないプロフェッショナルの仕事術』(著:渡部卓)より
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