コンディショニング

30歳をこえると徹夜がきつくなるのはなぜ?

 私たちが「疲れた」と感じるのは、運動や作業などで体を酷使することだけが原因になるわけではありません。

 疲労や不調を感じる原因は、呼吸や心拍、血液循環、体温の調整などを司り、24時間休みなく働いている自律神経の乱れにもあります。自律神経は、「交感神経」と「副交感神経」という2種類の神経から構成されています。

 交感神経は、車に例えるならアクセルです。交感神経の働きが上がると血管はきゅっと収縮し、血圧が上昇。気分も高揚し、活動的でアグレッシブな気持ちになります。

 一方、副交感神経は車に例えるならブレーキの働きをします。副交感神経の働きが上がると、血管は適度な状態で緩み、血圧は低下。身体はリラックスした状態になり、気分も穏やかに、ゆったり冷静な気持ちになります。

 理想的なのは、交感神経と副交感神経がともに高いレベルで働き、なおかつ両方のバランスが取れていること。これが自律神経の整った状態であり、体の細胞のすみずみまで質のいい血液が流れていきます。

加齢=自律神経の乱れが生じやすくなる

 ところが、研究によると、男性は30代、女性は40代になると副交感神経の働きが低下することがわかっています。つまり、加齢が原因となって「副交感神経の働きが低く、交感神経が優位」という自律神経の乱れが生じやすくなるのです。

 実際に、20代の頃は2、3日寝なくても平気で仕事ができたのに、30代になると当直での深夜勤務がきつくなり、「今日は当直か……行きたくないな」と感じるようになる、そう実感する方も多いのではないでしょうか?

 30歳を過ぎると、加齢によって副交感神経の働きが落ちていき、さらに、40代、50代にかけても副交感神経の活動レベルが下がっていきます。もちろん、どの段階でも自律神経を整える対策を取れば、バランスを戻すことができます。

 しかし、「もう若くないから調子が悪いのかな」「俺もおじさんだから」「私もおばさんだから」とあきらめて、放置しておくと、確実に血流が鈍くなっていきます。その影響が徐々に蓄積されていくと、ある年齢でガクンと来て、体が重く感じるようになり、疲れが取れにくくなったりするのです。

歳と共に安定を求める理由

 そのガクンがやってくるタイミングとして多いのは、45歳や55歳です。患者さんたちからも、「以前とはまったく体の調子が変わってしまった……」という声をよく聞きます。

 副交感神経の働きが下がると、新しいことに挑戦するのが億劫になり、また慣れない環境に飛び込むとなかなか馴染めないという感覚が強くなります。

 若い頃は副交感神経の働きが高いので、一瞬、自律神経が乱れたとしてもすぐにリカバリーできました。しかし、男性は30代以降、女性は40代以降、新しい環境や状況、感情の変化を受け止めるのが苦手になっていきます。また、女性は40代以降、更年期障害の症状が出始めます。これもそれまで整っていた自律神経のバランスが乱れたことが、要因の1つとなっているのです。

 このように、「もう若くないから調子が悪い」のは事実です。しかし、あきらめる必要はありません。何歳からでも不安を取り除く対策をし、自律神経を整えていけば、心身のコンディションはしっかりと上向きになっていくのです。

 

『小林教授の肩の力を抜くとすべてよくなる 』(著:小林弘幸)より

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(クロスメディア・パブリッシング)

 

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