「自分を変える習慣力」(著:三浦将)より
イメージを変える
「イメージチェンジ」という言葉があります。たとえば、ある女性が長年続けてきたロングヘアーをバッサリと切って、ショートヘアーにしたとき。まわりから見たその人の印象は大きく変わりますよね。普段ラフな服装の人が、ビシッとフォーマルなスーツを着たりするときなどもそうです。このように、目に見えるものを変えると、イメージは一変します。
私たちは、頭の中で常にイメージしています。過去に旅行をして良い印象を受けた場所を思い出すときも、頭の中ではその場所やそのときの体験をイメージしています。たとえば、ハワイ旅行の思い出を思い出すとき。青く美しい海、白い砂浜、ヤシの木や、ビーチパラソルなどなど……頭の中でイメージしています。
イメージと感情はつながっている
さて、ここで重要なのは、「あなたの頭の中のイメージは、あなたの感情とつながっている」ということです。あなたの好きな人の顔や姿のイメージは、あなたのポジティブな感情とつながっているはずです。反対に嫌いな人のイメージは、あなたのネガティブな感情とつながっています。そのイメージを思い出しただけで、豊かな気分になれたり、嫌な気分になったりします。
これを生かして自分を変える方法があります。それは、「目に見えるもののイメージを変えてあげる」こと。これによって、同時に出てくる感情が変わってくるのです。これを「サブモダリティチェンジ」と言います。
怖い上司をオウムに置き換える
金融機関にお勤めのAさんは、とても有能な方で、同僚からの信頼も抜群。しかし、上司との関係がうまくいかないことに悩みがありました。この上司は、Aさんの都合もお構いなくどんどん仕事を振ってくる。おまけに、自分の仕事に加えて、不慣れな同僚がやりきれない仕事をカバーする役もしばしば引き受けざるを得ない状況でした。
そんなこんなで残業の毎日が続きます。ある意味では、デキる人間だからこそ、こういう状況になったとも言えます。そんな状況でもAさんは、上司からの仕事の依頼は断れません。それは、「この上司が怖くて仕方がない」と感じていたからでした。いつも不機嫌で、職場でも激しい感情を露わにする。Aさんと話すときでも、Aさんをにらみつけるように話すのです。
そこで「自分を変える習慣力」の著者であり、メンタルコーチである三浦将さんは、以下のようにAさんと面談をしました。
三浦さん:「その上司を前にするとどんな気分になりますか?」
Aさん:「とにかく怖いんです。何を言い出すかわからないし、急に怒り出したりするので」
三浦さん:「体の感じは?」
Aさん:「まさに縮み上がる感じです。心臓がドキドキします」
三浦さん:「ちょっとイヤかもしれませんが、今この瞬間、その方を前にしているとイメージしてみてください。そして、目の前にいるその方の容姿、表情などをありありとイメージしてみてください」
Aさん:「怖い顔をしています。凄くイヤです。冷や汗が出てくる感じです」
三浦さん:「ちょっと変なことを聞きますが、この方、何に似ていたり、何みたいに見えたりしますか?」
Aさん:「……ん~、オウムですかね」
三浦さん:「いいですね。では、この方をオウムだと思ってください。顔だけオウムでもいいです。どんな色をしていたり、どんなとさかがついていたりしますか?」
Aさん:「ハハハ、黄色と緑が変な感じで混ざっていますね。とさかはだらんとしています」
三浦さん:「あらためて、そんなオウムを前にしてどんな気分ですか?」
Aさん:「オウムだと思うと、少し笑っちゃいます」
三浦さん:「そのオウムが怒って、少し強い口調になっていますが、どうですか?」
Aさん:「ああ、所詮オウムなんで、あまり何言っているのかわかりません。放っておいていいでしょう」
三浦さん:「これからその上司を前にしたとき、そのオウムのイメージを持ってみて、オウムが何か言っているみたいな感じで対応できそうですか?」
Aさん:「できますね。これでいいですね。気持ちが楽になります。やってみます」
目に見えるもののイメージを変える
こうして、「怖い上司の顔」という目に見えるもののイメージが、「オウム」のイメージに変わりました。Aさんはこの後、この上司とのやり取りの際、怖さや怯えを感じなくなったそうで、心臓がドキドキしたりするような体の反応もなくなったとのこと。体の反応が変わるということは、”潜在意識のプログラムが書き換わった”ということです。
これは、「恐れる相手について持っている頭の中のイメージを、ユニークな方法で変えてみる」という例でした。オウムの顔を一度頭の中でありありとイメージしたことにより、本物の上司を目の当たりにしたときでも、そのイメージが目の前の上司の顔に乗っかり、恐れや怯えを感じなくなるという構造です。目に見えるものの見方を変え、別のイメージを頭の中に持つことによって、起こってくる感情が全く違うものになるのです。
人間関係にお悩みの方は、ぜひこの方法を試してみてはいかがでしょうか。
後日談
ちなみに、後日談があります。この頃この上司は、プライベートでとても傷つくことがあったそうです。悪気があってギスギスしたり、不機嫌な態度を取っていたりしたわけではなかったのです。その頃、話しかけられないほど怖かったということをAさんから伝えると、お互い懐かしく思えるような笑い話になったそうです。
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