『なにもしていないのに調子がいい』(著:森田敦史)より
呼吸が乱れると、身体や精神の調子も乱れがちになります。
でも、呼吸の重要性は理解していても、どのように整えていけばよいのか?
となると、なかなかわかりにくいものです。
呼吸自体が目に見えず把握しづらいことが、その原因です。
そこで、日常の動作を通して呼吸へ意識を向ける方法をご紹介します。
どんな時に呼吸は乱れるのか?
呼吸を乱す日常の動作とはどのようなものなのかを理解して、自然な呼吸を維持するポイントを探っていきましょう。
1 粗い動きと衝撃で、呼吸は乱れる
息を詰めたり、ため息をついたりと、呼吸状態が大きく乱高下していると、呼吸は浅くなり身体は虚血・酸欠状態となります。
こんな時、身体の動作は粗雑なものになっているのです。
例えて言えば、身体の中にある『呼吸の筒』を、振ったり、つぶしたり、捻ったりして、衝撃を加えている状態です。
つまり、雑な動作が呼吸を乱しているのです。
『呼吸の筒』をお盆に載せて運ぶことをイメージしながら、朝起きてから夜寝るまでの自分の動きを追ってみましょう。
急いでいる時や焦っている時、不自然な姿勢でいる時など、『呼吸の筒』は倒れてしまいそうになりますね。
静かに歩いている時や、仕事に集中している時などはどうでしょうか?
お盆の上で、『呼吸の筒』は安定して立っているはずです。
今度は『呼吸の筒』をイメージしながら、なにか動作をしてみてください。
普段より安定した動作となり、呼吸の乱れも少なくなっていないでしょうか?
忙しい時など、その渦中で振り回されそうになったら、『呼吸の筒』をイメージしてみましょう。
それだけで、自分の中心軸がブレることなく安定し、精神面でも乱れることが少なくなります。
集中力が続かない時も、雑な波動になっている身体と精神を整えるために、『呼吸の筒』をイメージしてみてください。
2 動きが横に流れると、呼吸は不安定になる
地上の人間は、重力の影響下から逃れることはできません。できるだけ重力に抗わず、重心を下ろした状態が、一番自然で安定しています。
重力に逆らう横方向への動きを行った時には、一旦停止して重心を安定させましょう。
ほんの少しの時間で大丈夫です。
一瞬、姿勢を正すだけでも効果は絶大です。
何か動作を終えたら、動きを一旦停止して重心を下ろす習慣をつけるのです。
足裏が地面に対して垂直になるよう、身体の軸をまっすぐに通してみましょう。
この習慣が身につくと、焦ってミスをすることが減ってきます。焦ると動作が定まらなくなり、右へ左へと揺れ始めます。ここで一旦動作を停止することで、焦った気持ちに区切りをつけられ、ミスの連発を未然に防ぐことになるのです。
3 モノを雑に扱うと、呼吸も乱れる
ドアをバタンと締める
カバンを床にドサッと置く
書類を乱雑に受け取る
受話器をガチャンと置く
日頃からなにかにつけ動作が雑な人がいます。
こういう人の持ち物はよく壊れたり、なくなったりしがちです。
また、動作が雑な人は落ち着きがなく、忘れ物やうっかりミスも起きやすいようです。
一般に仕事のできる人は、モノの扱いが丁寧です。
名人と呼ばれる人で、モノを粗雑に扱う人は滅多にいません。
モノを丁寧に扱うことで、身体の動作が鎮まり、呼吸が整うのです。
この状態だと、身体や精神の感覚は研ぎ澄まされ、最高のパフォーマンスを発揮できるようになります。
名人とまではいかなくても、日頃のモノの扱い方を変えるだけで、自分自身の身体と精神を意識的に扱えるようになります。
モノの扱いが自分自身の扱いにつながるということを、覚えておくとよいでしょう。
4 意識を次に残すと、呼吸も整う
人間が行う行為や出来事には、始まりと終わりがあります。
一方、呼吸は息を引き取るまで終わることはありません。
ところが、私たちは何らかの行為が終わりに近づくと、無意識的に呼吸を乱す傾向があります。
たとえば、水泳やトラック競技のレースで、指導者は選手に対して「ゴールはもっと向こうにある」とイメージさせるのだそうです。ゴールまでと考えていると、手前でスピードが落ちてしまうという理由からです。
そこで、意識を途切らせることなく、次に残すためのコツとして、ゴールを通過点と捉えて通り過ぎるというイメージが有効となるのです。
断片化する意識に連動して呼吸が乱高下していると、エネルギーのロスが増え、疲れやすくなります。
意識を途切らせないようにすることで、呼吸も整ってゆくのです。
5 力みのある姿勢だと、呼吸は途切れがちになる
一般的に「よい姿勢」と思われているのは、どんなものでしょうか?
胸を張り、肩甲骨を締めて、背中やお尻、膝に力が入った状態を思い浮かべる人が多いようですが、この状態では呼吸が浅くなり、次の動作に入る時に無用な力が必要となります。
そのような力んだ姿勢ではなく、もっとゆったりとした姿勢がほんとうの良い姿勢です。
背中を広くして、懐を深く取った姿勢をとれば、呼吸が深くなって疲れにくくなります。
常々チェックして、その都度修正してゆきたいものです。
6 間合いを取れば、呼吸は整う
何かを手に取ろうとする時、手をめいっぱい伸ばして取ろうとしていませんか?
このような動作をしている時には、体勢が安定していません。呼吸は浅くなったり、息を詰めたりして、身体に無用な力みが生じてしまいます。
面倒くさがらずに、一歩近づいて間合いを詰めてから手に取りましょう。
自分の手の届く範囲、つまり懐の内でモノを取れる距離まで近づけば、体勢を乱すことなく、整った呼吸を維持できるのです。
7 広すぎる歩幅が呼吸を乱す
運動効果を高めるため、大股で歩くことが推奨されていますが、呼吸を整えるという観点からはおすすめできません。
歩幅いっぱいで歩こうとすれば、首や胴体を必要以上に捻ることになり、呼吸が乱れてしまうのです。
歩幅は8割程度に抑え、呼吸を一定に保つことが大切です。
呼吸が整えば、身体も心も整う
以上、日常の動作を通して呼吸への意識を高める方法を紹介しました。
呼吸を整えることで心身の調整を行えるようになれば、「なにもしていないのに調子がいい」状態を維持できるようになります。
日常生活の中での何気ない動作を少し意識するだけで、呼吸を整えることができるようになり、いつも快調でいられる体質へと根本的に変えていけるのです。
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