「はたらく人のコンディショニング事典」(著:岩崎一郎、松村和夏、渡部卓)より
筋トレの基本ルール
日々の移動といえば会社と自宅の往復だけ。階段とエレベーターならエレベーターを選んでしまう。定期的に運動する趣味もない……。こんな生活は、筋肉不足の人によく見受けられます。これは自ら老化を早めているも同然。猫背、腰痛、肩こりなど、筋力不足は様々な体の不調を引き起こします。老い知らずの健康的な体のために、是非とも筋肉量は増やしたいところですよね。筋トレにはダイエット効果も。(くわしくはこちら→ダイエットしたければ、筋肉をつけて、基礎代謝を上げなさい。)
だからと言って、特別な器具を買わなければ……と思う必要はありません。筋トレは、道具なし、あるいは自宅のイスだけで簡単に始められます。
しかし、ただ闇雲に筋トレをしても効率はよくありません。
①鍛える部位の優先度
②鍛える順序
③効果的な筋トレの頻度
この3つのルールさえ把握すれば、筋トレの効果を最大限に引き出すことができます。
①まずはどこから?下半身の大きな筋肉から!
筋肉には大きなものも小さなものもあります。このうち、優先して鍛えるべきなのは「大きな筋肉」の方。なぜなら、大きな筋肉は日常生活で強化されにくいからです。
例えば、腕のように細くて弱い筋肉なら、家事やデスクワークを行うなかで自然と鍛えられます。それに対し、大きくて強い筋肉は滅多に強化されません。知らぬ間に衰えていってしまうのです。
この大きな筋肉が多いのが、下半身。
筋肉は、使わなければ1年に1%ずつ減っていきます。この数字は、主に下半身部分の筋肉の減少によるものと考えられています。維持するにはそれ相応の負荷が必要。つまり、筋肉が大きければ大きいほど、より強い負荷が必要になるのです。
下半身には、全身の筋肉のおよそ60%が集まっています。その多くは、太腿の大腿四頭筋やハムストリングス、お尻の大臀筋など、大きくて強力な筋肉ばかりです。
「老いは足腰から」という言葉をよく聞きますよね。これは「筋力は下半身から衰える」ということ。始めるなら、まずは下半身を意識的にトレーニングしましょう。
②鍛える順番〈下半身→上半身→体幹〉
健康な体になるには、下半身ばかり鍛えていてもいけません。全身の主要な筋肉をバランス良く鍛える必要があります。しかし、どの部位をどの順序で鍛えるかというのも重要です。筋トレは、次の順序で行うのが最も効果を期待できるでしょう。
①下半身
↓
②上半身(胸、肩、上腕、背中など)
↓
③体幹(腹部、わき腹、腰背など)
順序の理由は、やはり筋肉の大きさにあります。
大きな筋肉は、それだけ大きな負荷をかけなければ鍛えられません。先に上半身や体幹を鍛えてしまった場合、下半身を鍛えるために必要な高負荷に耐えられなくなる可能性があるのです。
また、体幹は身体の重心部分です。ここには背骨や骨盤を支える筋肉が集中しています。身体のバランスを保ち、姿勢を維持するのに重要な役割を果たしている部位です。そのため、先に鍛えると疲れて姿勢が維持しにくくなり、正しいフォームが保てない可能性が出てきます。
まずは下半身の大きな筋肉を鍛えることで全体の筋肉量を増やしましょう。体幹は、体全体のバランスをとるために最後に鍛えるべきなのです。
③「毎日欠かさず」より「週2〜3回」のトレーニング
やる気に任せ、「毎日欠かさずトレーニングしよう!」と思っても逆効果です。効率のいいトレーニングのペースは、なんと週2〜3回。これには私たちの体に備わる優れた機能、「超回復」が関わっています。
・「超回復」で筋肉が増えるメカニズム
「超回復」とは、体の修復機能のこと。ダメージを受ければ受けるほど、より強くなって甦るという性質を持っています。ダメージから回復したとき、それまで以上の機能を発揮できるようになるのです。
・トレーニングによってより長い距離を走れるようになる
・運動で一時的に低下した免疫力がより強靭になる
これらは超回復のおかげ。筋肉にも同じことが言えます。キツい運動をした後の筋肉痛、実は「超回復」の真っ最中なのです。
筋肉の中には筋束(筋繊維の束)があります。この筋繊維は強い刺激が加わると、微細な損傷を起こします。これがいわゆる「筋肉痛」の原因です。損傷した部分が主にタンパク質によって修復されると、筋繊維は傷つく前よりも太く強くなります。これが筋肉における「超回復」。また同じ強さの刺激が加わったときに対応できるようにするためです。つまり、筋トレとは「超回復」によって筋肉を増やすことなのです。
・筋トレ再開の目安は「筋肉痛が治ったら」
注意しておくべきことが一つ。超回復には休息が必要不可欠です。
筋トレで損傷した筋肉を修復するために、体はアミノ酸を取り込みます。タンパク質の再合成を行うためです。この再合成が終わる、つまり超回復が終わるまでにかかる時間は、トレーニング終了から 24〜48 時間とされています。
この間、目安として2~3日休息をとりましょう。
超回復 が完了したタイミングでトレーニングを再開すれば、筋肉は途切れることなくアミノ酸 をとり込み続けて大きくなります。
つまり、超回復のリズムを利用することで、より効果的に筋肉を発達させることができるというわけです。
休みなく筋肉を痛めつけては、せっかく備わっている回復能力も半減してしまいま す。理想は週2~3回のトレーニング。しかし超回復には個人差があります。筋肉痛が治まったあたりで次のトレーニングを行うのがおすすめです。
・「積極的休養」で休養期間を有効活用
筋肉をいじめるような激しい運動は禁物ですが、超回復を待つ間も体を動かしておく方がいいでしょう。やっておきたいのは、アクティブレスト(積極的休養)。30分ほどの軽いジョギング や、1時間程度のウォーキングなどの有酸素運動がオススメです。狙いは血流の促進。血行が良くなると、
・トレーニングによってできた老廃物を排泄しやすくなる
・筋肉の材料となるタンパク質や、酸素やその他の栄養も運ばれやすくなる
・気持ちをリフレッシュできる
などの効果があります。
●自宅で簡単!下半身・上半身・体幹別メニュー9選
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いかがでしたか? 筋トレはお金をかけずに健康になれる方法です。必要な道具がほとんどなく、今すぐにでも始められます。3つのルールを守れば、もう怖いものなし! 効率よく体を鍛えていきましょう。
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