「はたらく人のコンディショニング事典」(著:岩崎一郎、松村和夏、渡部卓)より
腰痛・猫背は体幹筋トレで治せる
長時間のデスクワークで腰を痛める人は多いのではないでしょうか。内臓や泌尿器系の病気が原因で起きる場合もありますが、一般的には姿勢の悪さや運動不足によるものがほとんど。こうした腰痛は、日頃から腰周りの筋肉を強化することと、ほぐすことで防ぐことができます。
また、最初は意識して伸ばしていても、パソコンや事務作業を続けていると、いつの間にか猫背になってしまうのはよくあること。
姿勢が悪いと第一印象もあまり良くありません。美しい姿勢をキープするには、立つ、歩くといった際に体の姿勢をつくる体幹部の筋肉をつける必要があります。
そこで今回は体幹部に筋肉をつけるために鍛えるべき部位、そしてすぐできるエクササイズをご紹介します。
(体全体をバランスよく鍛えるにはこちら→はじめての筋トレ入門 最強効率たった3つのルール)
腰痛予防は「腹横筋」を鍛えるべし
体幹部の筋肉は、以下の二種類の筋肉を鍛えましょう。

・【脊柱規律筋】(せきちゅうきりつきん)…背部の深層に位置する筋肉の総称。
曲げる、伸ばす、回転させるなど脊柱を安定させて様々な動きを可能にし、姿勢の維持に大きく貢献しています。
・【腹筋群】(ふっきんぐん)…体の柱である背骨の動きを調整する腹部の筋肉。正面の「腹直筋」、脇腹の「腹斜筋」、深層の「腹横筋」の総称。
体幹と言うと深層のインナーマッスルが注目されがちです。しかし「腹筋群」と「脊柱規律筋」は、外側のアウターマッスルとインナーマッスルの混合部分。体の内側と外側をバランス良く鍛えることができます。
次に、腹筋群の筋肉をもっと詳しく見ていきましょう。
・【腹直筋】(ふくちょくきん)…腹部の中心にある筋肉。
4〜6 つの節にわかれており、一般に「腹を割 る」と言うときはこの筋肉を指します。姿勢の維持、上半身を前に曲げるなどのほか、 大半のスポーツで使われます。
・【腹斜筋】(ふくしゃきん)…わき腹部分で斜め状に位置する筋肉。
姿勢の維持、腹部の引 き締め、上半身のひねりに関係しています。
・【腹横筋】(ふくおうきん)…腹部の深部にある筋肉。
内臓を正しい位置に収め、お腹の前後の厚みを抑える働きがあります。運動などで呼吸が早くなっているとき、 せきをしたときなどにも使われる部位。お腹が前に出ないように引っ込め、腹部をスッキリさせることに繋がり、姿勢の改善、維持に役立ちます。
実はこの腹横筋、腰痛の予防・解消に効く部位なんです。
「腹横筋」は、背骨の下の方(腰の部分)にある「腰椎」を守っている筋肉。コルセットのように腰をぐるっと囲むような形をしています。腰痛を防ぐ には、この腹横筋を鍛えるのが効果的です。
お手軽体幹エクササイズ3選
体幹部の筋トレには、腰痛予防、姿勢改善、お腹周りの脂肪が落ちるといった効果が期待できます。胃腸の調子が良くなり、便秘などが改善されることもあるでしょう。
そこでこの項では、お手軽にできる体幹エクササイズを厳選して3つご紹介します。
体幹を鍛えるエクササイズ その1

①両足を肩幅より少し大きく開きます。
②伸びをするように両腕を伸ばし、頭の上で両手を重ねます。
③腰から下を固定したままで上半身を真横に傾け、脇腹 を伸ばします。
④充分に伸びたと感じたらゆっくりと正面に戻ります。
⑤同じ要領で反対の脇腹も伸ばしてください。
体幹を鍛えるエクササイズ その2

①椅子に浅く座り、両足を腰幅くらいに開きます。
②膝と足首は軽く曲げ、腰から上は前に倒し、両腕 は肩幅で床と平行に伸ばします。
③腰から下は固定したまま、おへそから上を前に折り曲げてゆきます。
④両手がつま先についたら、もとの姿勢に戻ります。
体幹を鍛えるエクササイズその3
これは「ドローイン」と呼ばれる方法で、腰痛に深い関連のある腹横筋を鍛えるのにはぴったりなエクササイズです。

①背筋を伸ばし、お尻の穴を引き締めるようなイ メージで真っ直ぐに立ちます。
②おへそを中心に お腹をへこませ、30 秒ほどキープします。(誰かにお腹を押されているイメージで)
背筋がしっかりと伸びていれば、座った姿勢でも OK です。
ドローインは、お腹をへこませて腹横筋を強く収縮させるエクササイズです。なれないうちは呼吸が止まりそうになるかもしれませんが、そこは堪えどころ。体幹の筋肉に圧迫され上下に逃げようとした内臓が、横隔膜を圧迫しているのです。続けるうちに内臓が正しい位置に収まり、横隔膜も圧迫されなくなります。
終わりに
いかがでしたか?体幹の筋力を鍛えると腹圧が高まり、下腹がへこんで姿勢が良くなります。体の軸が安定するので走力や運動能力全体が向上するといったメリットも。姿勢が変われば視界も変わります。
ここでご紹介したエクササイズは、特別な道具を使わずとも自宅やオフィスでできるエクササイズです。歯を磨きながら、通勤電車 に揺られながら、デスクワークの合間など、日常のあらゆる場面で試してみてください。
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