ランチ後に眠くなりませんか?理由の一つは、消化の際に副交感神経が優位になって体を休息モードにしてしまうからです。ランチ後の眠気の例のように、自律神経は消化器官の活動と影響し合っており、食事の取り方によって自律神経は大きく左右されます。自律神経が乱れると、頭痛や睡眠障害など様々な不調を引き起こし、毎日の生活・仕事にも悪影響を及ぼしかねません。
では、自律神経のバランスを整えるためにはどのような食事を心がければ良いでしょうか。この記事では、自律神経のバランスを整える“セロトニン”や、食事のコツを紹介していきます。
そもそも自律神経とは?
自律神経は人間の意思に関係なく24時間働いています。自律神経には昼間の活動時に活発になる交感神経と、夜間の心身を休ませる時に活発になる副交感神経があり、これらがバランスを保ちながら消化器や循環器など様々な人体の働きを調節しています。
自律神経のバランスが崩れると、
- 寝つきが悪くなる、目覚めがスッキリしない、寝ても疲れが取れないなどの睡眠の質の低下
- 頭痛、目眩、動機、肩こり・首こりなどの体の不調
- 不安感が続く、イライラしやすいなどの心の不調
など様々な症状があらわれます。
気圧の変化で体調を崩しやすい方、スマホを夜遅くまで見てしまう方、デスクワークでパソコンを長時間使用する、運動不足気味であるという方は日々の不調の原因が自律神経にあるかもしれません。
セロトニンとは?
「セロトニン」とは脳の神経伝達物質の一つです。自律神経(交感神経・副交感神経)のバランスを調節する機能を活性化する働きがあり、ドーパミンやアドレナリンの量をコントロールして精神状態を安定させたり、1日の生活リズムを仕切ったりする役割を担っています。
例えば、「セラトニン」が分泌されると交感神経のスイッチが入って私たちは朝目覚めます。反対に寝る時は「メラトニン」という物質が「セラトニン」の分泌を抑制するのですが、日中、体内で「セラトニン」がしっかり分泌されていないと「メラトニン」も十分につくられないために寝付きが悪くなってしまいます。
セロトニンを増やす食べ物
セロトニンを増やすには、
- セロトニンの原料となる「トリプトファン」
- 原料からセロトニンを合成する際のエネルギー源となる「炭水化物」
- セロトニン合成を促進させる「ビタミンB6」
の3つの栄養素が必要になります。
腸内環境がセロトニンを増やすカギ!?
原料の「トリプトファン」は腸から脳に届けられます。必須アミノ酸の一つであり、体内で自給できないため食事から摂取するしかありません。
腸は「第二の脳」と呼ばれるほど人体で重要な役割をもつ器官です。脳は腸などの消化器官に張り巡らされた神経から送られてくる情報をもとに、ホルモンや自律神経のバランスを調節しています。「腸脳相関」と呼ばれるこの関係をサポートしているのが腸内細菌であり、発酵食品を積極的に取り入れて腸内環境を整えることもセロトニンを増やすうえで重要になります。
①『トリプトファン』を含む食材
大豆製品(豆腐・納豆・味噌など)、乳製品(牛乳・ヨーグルト・チーズなど)、魚類(カツオ、マグロなど)、ナッツ類(カシューナッツなど)、卵(鶏卵、魚卵)
②『炭水化物』を含む食材
比較的糖質の少ない玄米やイモ類などがおすすめです。
③『ビタミンB6』を含む食材
魚類(マグロ、カツオ、イワシ、サンマなど)、さつまいも、鶏胸肉、ささみ、ごま
●身近な発酵食品
味噌、納豆、ぬか漬け、麹、チーズ、ヨーグルト
効率よくセロトニンを増やせる食品
普段から口にする食材が多いので、バランスの良い食事を心がけていればセロトニンをしっかり体に取り込むことができます。
3つの栄養素すべてを含む「バナナ」は忙しい方も手軽に食べられるのでオススメです。バナナ豆乳、バナナヨーグルトのように大豆製品、乳製品、発酵食品と合わせて摂取できるといいですね。
【食事のコツ①】ゆとりをもって食べる
ここからは自律神経のバランスを乱さないための食事のコツをお伝えしていきます。
人体は緊張状態で優位になる交感神経と弛緩状態で優位になる副交感神経がバランスを保つことで機能しています。通常、日中に仕事をしている時などは交感神経が働いて緊張状態にありますが、夜は副交感神経が優位になりリラックスモードに転じます。この自律神経のリズムを保つために食事は一定の時間に取ります。一般的に食べてから消化・脂肪の燃焼までには3〜5時間かかるとされているので、6時間間隔で食事をし、なおかつ就寝前の食事は睡眠の質を下げるので寝る3時間前までには夕食を済ましておきましょう。
また、食後の眠気や血糖値の上昇を軽減する意味でも、消化器官に負担をかけない食事が重要です。1口20回噛むことを目安に、ゆっくり落ち着いて食べることで副交感神経が優位になります。食事内容はセロトニンを摂取できるように「量より質」=栄養バランス重視にして、胃腸に負担をかけない腹八分目の量を心がけてください。
【食事のコツ②】糖質をとりすぎないように
ダイエットや筋トレのメソッドとしてお馴染みの「糖質制限」ですが、実は自律神経のバランスを整えるうえでも有効と言われています。
炭水化物に含まれる糖質は急激に体内の血糖値を上げます。すると、血糖値を下げるため副交感神経が膵臓を刺激し、インスリンが大量に分泌させます。食後に眠くなるのはインスリンの分泌で逆に低血糖になるためです。
このように、糖質をたくさん摂取すると副交感神経の活動量も増えるため、自律神経のバランスが乱れやすくなります。
自律神経を整える糖質制限で重要なのは「大量に」とらないということです。炭水化物は体のエネルギー源ですので、自身の体調や体重に合わせて必要な量の糖質をとりましょう。その際には食物繊維を多く含む野菜から食べるなど、食事の順番にも気を使うと血糖値の急上昇を抑えられます。
【食事のコツ③】ビタミン・ミネラルも摂取する
不規則な食事や糖質の取りすぎを解消することで自律神経の乱れを整えられることはわかりましたね。では「体に良い」という印象が強いビタミンやミネラルはどうでしょうか。これらもやはり意識的に摂取したい栄養素です。
書籍『最高のパフォーマンスを引き出す自律神経の整え方』では、自律神経のバランスを整えるのに特に有効な栄養素としてビタミンA・B ・Eとカルシウムを紹介しています。
【ビタミンA】
発育の促進、免疫や生殖機能の維持、肌や粘膜の維持、そして網膜細胞の保護や視覚の調節などの働きがあります。暗いところにいると目が慣れて見えるようになるのはビタミンAのおかげです。レバー、バター、チーズ、うなぎ、マーガリン、緑黄色野菜などに多く含まれています。
【ビタミンB群】
・ビタミンB1 チアミン
皮膚や粘膜の維持、糖質からのエネルギー産生や、脳神経の正常な働きに関係しています。豚肉や胚芽、レバー、豆類などに多く含まれています。
・ビタミンB2 リボフラビン
皮膚や粘膜の維持、糖質・タンパク質・脂質を体内でエネルギーに変換するなどの働きがあります。レバー、卵、納豆、乳製品などに多く含まれています
・ビタミンB3 ナイアシン
皮膚や粘膜の維持、糖質・タンパク質・脂質を体内でエネルギーに変換する際に必要な酵素の働きの補助などをしています。魚、肉、レバーなどに多く含まれています。
・ビタミンB5 パントテン酸
糖質・タンパク質・脂質を体内でエネルギーに変換する際に必要な酵素の働きを補助しています。コレステロール、免疫抗体、ホルモンなどの生成にも必要です。納豆、レバー、魚、肉、卵などに多く含まれています。
・ビタミンB6 ピドキサール
皮膚や粘膜の維持、タンパク質からエネルギーをつくるときや、血液や筋肉がつくられるときに作用します。筋肉量を多く維持するためには、より必要となります。魚、肉、レバー、バナナなどに多く含まれています。
・ビタミンB7 ビオチン
皮膚や粘膜の維持、爪や髪の健康に作用します。レバーや卵黄、魚介類、きのこ類などに多く含まれています。
・ビタミンB9 葉酸
細胞やタンパク質をつくるときに必要なDNAなどの核酸を合成する役割があります。ビタミンB12と協力して赤血球の生成にも関与しています。ほうれん草、ブロッコリーなどの緑黄色野菜に多く含まれているほか、レバーなどにも含まれています。
・ビタミンB12 シアノコバラミン
神経の機能を維持する役割を持ち、赤血球のヘモグロビンの生成にも関与しています。末梢性の手足の痺れや巨赤芽球貧血(赤血球の大きな貧血)の治療に使用されます。レバーや牡蠣、魚に多く含まれています。
【ビタミンE】
抗酸化作用があります。老化予防、動脈硬化、末梢循環障害(四肢の冷え性) などを改善する効果が期待できます。ナッツ類や、植物油、魚介などに多く含まれています。
【カルシウム(Ca)】
骨や歯などをつくるために不可欠です。体重の1~2%程度存在していますが、中でも99 %は骨と歯の中に存在しています。残り1%が血液や筋肉の中にあります。牛乳、小魚、海藻、緑黄色野菜などに多く含まれています。日本人のカルシウム摂取量は足りない場合が多いので、意識的に取ってみてください。
まとめ:運動や睡眠改善と組み合わせて自律神経のバランスを取り戻そう!
今回は「食事」をピックアップして紹介しましたが、自律神経を整えるには適度な運動や睡眠も不可欠です。ビジネスライフでは運動不足気味なビジネスパーソン向けのストレッチや、睡眠の質改善に向けた情報も紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。
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生活習慣を変えるのはなかなか難しいという方は、まずは一食一発酵食品から始めてみてはいかがでしょうか。
◼️出典
・久手堅司『最高のパフォーマンスを引き出す自律神経の整え方』(2018)クロスメディア・パブリッシング