なぜ今マインドフルネスか
「マインドフルネス」が近年注目されています。
これも、ストレスが私たちの心と体に大きく影響することが科学的に証明されてきていることが背景にあります。
「マインドフルネス」で行う瞑想は、ヨガのスキルの一つです。
瞑想を日常に取り入れていた著名人に、Apple創業者の故スティーブ・ジョブズ氏やマイクロソフト元会長のビル・ゲイツ氏などの名前がよく挙げられます。
なぜ、成功者といわれる人は、瞑想やマインドフルネスを日常に取り入れるのでしょうか。
マインドフルネスとは
マインドフルネス※は、医学的に言うと「マインドフルネスストレス低減法」といって、心理学的治療の一つになっていす。
自分の体や気持ち(気分)の状態に気づく力を育む「心のエクササイズ」と言っても良いでしょう。
欧米では、すでにその効果について、数多くの実証的研究報告があり、ストレス対処法の一つとして医療・教育・ビジネスの現場で実践されています。
マインドフルネスとは、「今この瞬間」の自分の体験に注意を向けて、現実をあるがままに受け入れることです。
例えば、顔を洗う時は、手や顔に触れる水の感覚に集中する、電車で通勤している時は車窓を流れる景色に集中する、などといった感じです。
マインドフルネスを実践すると、強いストレスを感じる場面においても、否定的な感情にとらわれることなく、いつでも平常心を保つことができるようになるといわれています。
マインドフルネスの効果としては、一般的に以下のようなものが挙げられます。
・ストレスが軽減する
・疾病のリスクが減る(免疫力が上がる)
・集中力が増す
・学業などの成績が上がる
・血圧が下がる
・コレステロール値が下がる
・快眠できるようになる
・バーンアウトを予防する
・怒りが低減する
その効果について、具体的な例をお話しましょう。
2018年7月、タイの洞窟の中に閉じ込められていたサッカーチームの少年12人と25歳のコーチ1人の世紀の救出劇の報道を覚えていますか?
閉じ込められていた9日間、少年たちは真っ暗闇の洞窟の中、パニックになることもなく、壁を伝って流れてくる水だけを飲みながら空腹に耐え、コーチの指導するマインドフルネス瞑想によって平静を保っていられたいうのです。
人は、大きなストレスにさらされると、そのことにとらわれ、縛られ、身動きが取れなくなってしまいます。
執着が生まれ、固くなった心は、次第に閉ざされ弱くなってしまいます。
マインドフルネスの目的も、本書でお伝えしているヨガが育む「強く、しなやか」な心を手に入れることといえます。
マインドフルネスを実践すると、初めは注意力散漫になったり、眠くなることもあるでしょう。
何度も繰り返し、短い時間から取り組むのが良いと思います。
できないことを克服するには、繰り返し続けることが一番の近道です。泳げない人が泳げるようになるためには、水に慣れ、息継ぎを練習し、手や足の使い方を習得する必要があります。
最初から上手に泳げる人はいません。
やがて少しずつ泳げるようになり、距離を伸ばしていく「過程」が必要です。
マインドフルネスもヨガも、大切なのは結果ではなくプロセスなのです。
参照記事
Newsweek日本版 2018年7月9日(月)
タイ洞窟のサッカー少年たち、心身を支える瞑想で耐えた9日間
※マインドフルネス【『現代精神医学事典『(弘文堂 2011年)から引用】
1979年にジョン・カバットジンによりマサチューセッツ大学医学部にストレス低減プログラムとして創始された瞑想とヨーガを基本とした治療法。慢性疼痛、心身症、摂食障害、不安障害、感情障害などが対象となる。ジョン・カバットジンは鈴木大拙の禅に影響を受け、仏教を宗教としてではなく人間の悩みを解決するための精神科学としてとらえ、医療に取り入れた。その基本的考えは、煩悩からの解脱と静謐な心を求める座禅に軌を一にしている。マインドフルネスの語義は〝注意を集中する〟である。一瞬一瞬の呼吸や体感に意識を集中し、〝ただ存在すること〟を実践し、〝今に生きる〟ことのトレーニングを実践する。これにより自己受容、的確な判断、およびセルフコントロールが可能となる。マインドフルネスは認知行動療法に取り入れられ脚光を浴びるようになった。しかし、認知行動療法は認知の変容を目指すのに対して、マインドフルネスは認知のとらわれからの解放を誘導する。
「デキる人は、ヨガしてる。」(著:石垣英俊、及川彩)より
『デキる人は、ヨガしてる。 (Business Life)』 (クロスメディア・パブリッシング) |