「まんがでわかる!元気が出る睡眠」(漫画・カミムラ晋作 監修・鍛治恵)より
クタクタなのに眠れないのはなぜ?
遅くまで残業して帰ったのに、なぜか寝つけないというお悩みは、長時間労働やストレスとの格闘を日夜余儀なくされる現代人ならではのもの。
原因は、自律神経のコントロールがうまくできていないことにあります。
自律神経は、活動しているときに働く交感神経と、休息しているときに働く副交感神経からなり、基本的には寝る時間になると交感神経が鎮まり、結果的に副交感神経が優位となります。
ただし、これはあくまでも基本的なリズムの話。遅くまでパソコン作業に没頭していたり、ストレスや怒りを感じたりすると、夜でも交感神経が優位になって寝つけなくなってしまいます。
自律神経と深部体温のリズムに寄り添うこと
逆に言えば、寝る前に交感神経を鎮め、副交感神経を意識的に優位にすることができれば、睡眠の質を上げられるわけです。
そのためには、体をリラックスさせることが大切です。入浴や軽めの運動、ストレッチなどはその最たるもの。
共通しているのは、いったん「深部体温(体の中心の温度)」を上げることで、就寝時刻に向けて自然な深部体温の低下を促しているということ。
私たちの体は、体温が下がり、副交感神経が優位になるリズムに寄り添うことができれば、自然と眠気に襲われるようにできているんです。
「入眠儀式」で快適な眠りを促す
こうした「スムーズな入眠のための就寝前に行う習慣」のことを、「入眠儀式」と言います。
何をするかは人それぞれで、なかには、パジャマに着替える、明日の着替えを準備する、といったことが入眠儀式になっている場合もありますが、基本的にはリラックスできることを第一に考えてください。
好きな音楽を聴いたり、部屋にアロマオイルを置いたりするなど、自分なりのリラックス方法を確立できていると、忙しい毎日でも気持ちよく眠りにつくことができるはずです。
おすすめはお風呂に入ること
先ほど述べた入眠儀式の中でも、特におすすめなのがお風呂に入ること。
皆さん、毎日お風呂に入っていますか?
忙しいからといってシャワーだけで済ませてしまっているとしたら要注意。
「寝つきが悪い」「熟睡できない」「寝起きが悪い」といった不調を感じているなら、しっかりと湯船につかることをおすすめします。
「シャワー派なんだけど、お風呂って何がそんなに大事なの?」と思う方もいらっしゃるはず。
お風呂にはリラックス効果のほかに、もう1つ大事な効果があります。
お風呂は深部体温を低下させ、睡眠の質を高める!
それは、効果的な「深部体温」の低下。
先ほど述べたように、スムーズな入眠と深い眠りを得るためには、深部体温の自然な低下が不可欠です。
私たちの体温は、起床時から上昇しはじめ、夕方から夜の早い時間帯をピークに下がり始めるというように、1日の中で約1℃の幅で変動しています。脳や体を休めるためには深部体温を下げる必要があるため、寝る前に手足の温度を上げて熱を放出させる必要があるのです。
ところが、不規則でストレスフルな生活が続くと、この調節がうまくいかなくなり、良質な睡眠の妨げとなります。
そこでお風呂に入って、寝る前にいったん深部体温を上げると、体は逆に温度を下げようとして、急な角度で体温が上昇。すると、その後体温が低下するときも同じ角度で下がっていき、深い睡眠には得ることができるというわけです。
つまり、体の芯から温めないと、体温をしっかり下げることはできないんですね。
ベストは「ぬるめのお湯で体がポカポカするくらい」
そのため、寝つきをよくするためにはシャワーだけで済ますのではなく、湯船にしっかりとつかって体温を上げる必要があります。すぐに上がってしまうと、体の表面は温まっても深部体温は上がらないので気をつけてくださいね。
お湯の温度については、男女や季節によっても差があるので、具体的に何℃がいいとは言えないのですが、熱すぎず、ぬるすぎず、がポイントです。
目安としては、ぬるめのお湯で体の芯がポカポカするくらい、と覚えてください。
あまりに熱すぎると、体温が下がるまでに時間がかかって、なかなか寝つけなくなってしまいます。体温の上昇と下降には一定のリズムがあり、高くなればなった分だけ下がるまでの時間も長くなるためです。
熱いお湯につかるのが好きな人は、寝る直前の入浴は避けましょう。帰宅したらまず入浴、その後食事をとって寝る――といった形で、就寝までの時間を空けたほうがいいかもしれません。
まとめ-良質な睡眠を得るために
なんとなく眠れない。眠りたいのになかなか寝付けない。
そんなときこそ、入眠儀式を意識してやってみるといいでしょう。
帰宅後のルーチンワークに入眠儀式を組み込んでしまってもよいかもしれないですね。
おすすめの入眠儀式は、お風呂につかること。「ぬるめのお湯で体がポカポカするくらい」を意識してみてください。
『まんがでわかる! 元気が出る睡眠 (Business Life)』 (クロスメディア・パブリッシング) |
漫画家。愛知県名古屋市出身。原作者と組んで活動することも多い。 代表作は『ベクター・ケースファイル』『おとうふ次元』、単著では『マジャン〜畏村奇聞〜』など。
監修:鍛治恵(かじ・めぐみ)
睡眠改善インストラクター。1989年ロフテー株式会社入社後、快眠スタジオにて睡眠文化の調査研究業務に従事。 1999年睡眠文化研究所の設立にともない研究所に異動後、主任研究員を経て2009年まで同所長。 睡眠文化調査研究や睡眠文化フォーラムなどのコーディネーションを行う。2009年ロフテー株式会社を退社しフリーに。 2010年NPO睡眠文化研究会を立ち上げる。著書に「ぐっすり。」(新潮社)がある。