家族のいびきに悩んでいませんか?
「いびきを注意したら不機嫌になられてしまった……」
「気まずくてなかなか指摘できない……」
また、
「いびきがうるさいと一方的に怒られても、実感がわかない」
という方もいるのではないでしょうか。
しかし、いびきは体の不調を示す大事なサイン。「迷惑なクセ」ではなく、「病気の症状」の一つかもしれないのです。
・不規則ないびき
・眠りが浅く、日中に倦怠感がある
こんな症状に心当たりがあるなら、「睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome)」、略して「SAS」の疑いがあります。大事な家族・同居人だからこそ、いつまでも健康でいてほしいもの。本記事では、筆者の母の体験を通していびきとの向き合い方を探ります。向き合い方を正しく知れば、いびきをめぐる家族の軋轢を防げるかもしれません。
家族がいびきをかいている!どうすればいい?
筆者が母のいびきに気がついたのは、GWの家族旅行でのことでした。獣の唸り声のようないびきが部屋に響き、ときおり「フゴッ」と呼吸が止まります。はじめの頃は「いびきかいてるよ、気をつけて」という軽い注意にとどまっていたのですが、不規則な呼吸音は明らかに正常ではありません。私は「睡眠時無呼吸症候群」を疑いました。
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome)は、眠っている間に呼吸が止まる病気です。
Sleep Apnea Syndromeの頭文字をとって、「SAS(サス)」とも言われます。(中略)寝ている間の無呼吸に私たちはなかなか気付くことができないために、検査・治療を受けていない多くの潜在患者がいると推計されています。
この病気が深刻なのは、寝ている間に生じる無呼吸が、起きているときの私たちの活動に様々な影響を及ぼすこと。気付かないうちに日常生活に様々なリスクが生じる可能性があるのです。
睡眠時無呼吸なおそう.com-睡眠時無呼吸症候群のポータルサイトより
また、上記のサイトでは以下のような症状がSASの症状として数えられています。
寝ている間
* いびきをかく
* いびきが止まり、大きな呼吸とともに再びいびきをかきはじめる
* 呼吸が止まる
* 呼吸が乱れる、息苦しさを感じる
* むせる
* 何度も目が覚める(お手洗いに起きる)
* 寝汗をかく
起きている時
* 強い眠気がある
* だるさ、倦怠感がある
* 集中力が続かない
* いつも疲労感がある
そういえば、母は午前中とても動くのが辛そうです。「夜11時には布団に入っているのに、昼になってもひたすら眠い」と言っているのも聞いたことがあります。
「睡眠時無呼吸症候群に違いない、病院を勧めよう!」
そう思った私は、まず母への伝え方を変えました。「いびきに気をつけて」と言っても、本人が無意識の時間に起こる出来事はどうすることもできません。
・いびきはれっきとした病気の症状であること
・健康を心配していること
を第一に伝えます。すると、これまで生返事ばかりだった母が、病院で診察を受けてくれたのです。そしていびきの改善に向けて生活が動き始めました。
なぜ母はいびきの改善に乗り出してくれたのでしょう?病院で診察を受けるメリットはあったのでしょうか。その理由を知るため、私は母に当時の心境を訪ねてみました。
睡眠時無呼吸症候群の診断を受けた母にインタビュー
——家族にいびきを指摘された時、どう感じましたか?
「いびきの音がおかしいよ」と言われて。まさか自分がいびきをかくわけがないと思っていました。嫌がらせとまでは言いませんが、大げさなのでは?と。いびきをかいているときは意識がありませんから、自分では本当に気がつけないんです。「睡眠時無呼吸症候群」のことは知っていましたが、自分がいびきをかいている自覚は全くありませんでした。
子どもたちを学校へ送り出したあと、ひどく疲れて午後までソファーから動けなくなることはよくありました。あとから考えると、SASの「日中の倦怠感」に当てはまると思うんです。でも、「年のせいなのかな、ストレスのせいかも」と考えていました。気分の落ち込みや眠気があっても、睡眠とは全く結びつきませんでしたね。
——病院に行くことを決意した決め手は?
正直に言ってしまうと、それまでは何度指摘されても聞き流していました。それがある日、「自分のいびきの音を聞いてみて」とiphoneを渡されたじゃないですか!
そこではじめて、寝ている間に録音された自分のいびきを聞いたんですね。音源を聞くまでは半信半疑だったのですが、聞いてみてびっくり。とっさに「牛みたいな音だ!」と思いました。いびきのリズムも不規則だったし……。
それだけだと「嫌味かな?」と思ってしまったと思うのですが、「SASって病気だったらどうするの?」と心配されて。録音でやっと自分を客観視できたということもあり、受診を決意しました。この出来事がなければ病院に行っていなかったと思うので、結果的に録音してもらえたのはよかったですね。
——病院での診察はどうでしたか?
地元の総合病院に行くと、はじめに自宅で検査するための器具を渡されました。脈拍や呼吸をはかるもので、指の先にセンサーをつけたり、鼻にチューブを入れたりするんです。自宅での睡眠をはかったら器具を病院に返し、検査結果を一週間後にまた聞きに行くので、最低でも3回病院に行く必要があります。時間に余裕がある時期に検査するのがいいかもしれません。
検査結果を見せてもらうと……
睡眠時無呼吸なおそう.com-睡眠時無呼吸症候群のポータルサイトによれば、
一晩(7時間)の睡眠中に30回以上の無呼吸(10秒以上の呼吸気流の停止)があり、そのいくつかはnon-REM期にも出現するものをSASと定義します。1時間あたりでは、無呼吸回数が5回以上(AI≧5)でSASとみなされます。
とのこと。病院の診断書では、6時間半の睡眠のうち無呼吸は4回、1時間あたりの無呼吸の指数は0.6。一見睡眠時無呼吸症候群とは関わりがないように思える数値ですが、SASは「無呼吸」だけでなく「低呼吸」も診断基準に含めます。
睡眠1時間あたりの「無呼吸」と「低呼吸」の合計回数をAHI(Apnea Hypopnea Index)=無呼吸低呼吸指数と呼び、この指数によって重症度を分類します。なお、低呼吸(Hypopnea)とは、換気の明らかな低下に加え、動脈血酸素飽和度(SpO2)が3~4%以上低下した状態、もしくは覚醒を伴う状態を指します。
母の場合、低呼吸の合計回数はなんと88回。AHIの数値は14.4にまではねあがりました。この数値はSASの「軽症」に該当し、「中等症」と診断される瀬戸際です。

——やはりSASの可能性が高かったんですね。
無呼吸・低呼吸状態の最も長い持続時間が91.8秒もあったことに驚きました。1分半も呼吸がほとんど止まっているというのは怖いです。「軽症」と聞いたときは「やっぱり大したことなかった」と思ったんですが、先生からは睡眠専門の病院での精査を勧められました。精査するとなると病院に泊り込む必要がありますが、総合病院の個室で精査するより、専門病院の方が費用が抑えられるとか(笑)。信用できる専門病院に紹介状を書いていただけたので、病院に行って正解でした。検査は面倒でしたけどね!
——今現在の状態は?
まずは何よりも肥満を解消しようと思っています。いびきだけではなく、糖尿病や関節の痛みも心配だし……。食べ物を無理のない程度に改善し始めたんです。行動が変わってきたのには確実に病院での診断が影響しています。病名があると、自分の状態がより正確に把握できるようになるんですね。
生活習慣病の危険も!
「睡眠時無呼吸症候群」になりやすい人に特徴的な習慣は、そのまま生活習慣病につながる危険性を孕んでいます。
夜だけじゃない!日中の生活にも要注意
* タバコがやめられない
* お酒が好きで、寝る前のお酒が習慣化
* 太り気味。暴飲暴食してしまうことがある
* 高血圧、糖尿病、高脂血症などの既往がある
どんな病気の予防・改善にも共通しますが、太りすぎないことが重要です。SASは喉や首まわりの脂肪沈着がその発症に大きく関与します。今SASでなくても、顎の大きさによっては少しの体重増加がSASにつながる可能性も。
もし今太っているとしたら、適正体重を目指すよう心掛けましょう。すでに治療中の方にとっては、やせることは治療の一環になります。
自分が/家族が、 SASかもしれない。
「いびきをかく」ということを、ただの「迷惑なクセ」だと思ってはいませんか?
「いびきをやめて!」と怒っても、本人も家族も不愉快になってしまうだけです。
「無意識だから悪気はないのに、いびきを責められて不愉快だ」
「一緒に眠るとうるさくて眠れない」
そんな理由で喧嘩をするのはもったいない!「いびきは病気のサイン」と分かっていれば、病気の治療に向けて動き出すことができます。日中のだるさに悩んでいる人も、家族のいびきに悩んでいる人も、病院でSASかどうかを確かめることで問題解決の糸口が見えてくるかもしれませんよ。