「デキる人は、ヨガしてる。」(著:石垣英俊、及川彩)より
ヨガの起源
ヨガは古代インドで誕生し、その歴史はおよそ4000年以上にも及ぶものです。
「ヨガ」の語源はインドの古語サンスクリット語で「yuj」(ユジュ)で、「くびき(牛や馬などを牛車や馬車に繋ぐ際に用いる木製の棒状器具)」を意味します。
移ろいゆく心、変化する体を鍛錬によって制御し、精神を統一して古代インドにおける人生の究極の目的である輪廻転生からの「解脱(モークシャ)」に至るためのもの、これがヨガの起源とされています。
ヨガにはサンスクリット語で記され、古代から現代まで読み継がれてきた様々な文献があり、それはヨガの壮大な歴史を感じさせてくれるものです。
ヨガの語源が「繋ぐこと、結合」を意味する通り、ヨガは人間の心と体を繋ぐための手段であり、ヨガでは心と体は本来繋がっているもの、と考えます。
心と体を整えて
皆さんは、ご自分の心と体が一繋がりのものであると、日頃から感じることができていますか。
忙しい毎日で体は疲労困憊。
疲れを隠しながら、やる気があるように装い、栄養ドリンクで誤魔化しながら、仕事に向かった経験もあるのではないかと思います。
体調が悪いのに、心はすごく晴れやかで前向きである、とか、逆に気持ちは塞いでいるのに、食欲旺盛でやる気に溢れている、といった状態は、通常あまり起きにくいことは、想像に難くないでしょう。
心と体が繋がっているとするならば、どちらか一方だけ良い状態でも、それは「健康」とはいえないのではないでしょうか。
では、どうしたらいいのでしょうか。
答えはとてもシンプルです。
心も体も両方整えれば良い。
そう思いませんか?
心と体を同時に整える手段として適したものが「ヨガ」であると、私は考えます。
近年の「ヨガ=女性がするもの」というイメージとは異なり、古代インドでは、ヨガをしていたのは「男性のみ」であった、といわれています。
女性にヨガをすることが許されるようになったのは、ここ100年ほどのことなのだそうです。
日本におけるヨガの変遷
日本に初めてヨガが伝わったのは、大同元年(806年)、唐より帰国した空海にまで遡るともいわれます。
その後、昭和の終わり頃には、ヨガは健康法の一つとしてある程度認知を得ていましたが、1990年代にテロ事件を起こした宗教団体が、信者の修行法の一つとしてヨガを取り入れていたことなどから、一時期、衰退の道を辿りました。
その時に、多くのヨガスタジオは撤退を余儀なくされたとも聞きます。悲しいことに今なお、ヨガは怪しいもの、と思う方がいらっしゃるのも事実だと思います。
一時期衰退したヨガですが、2004年頃、ニューヨークやハリウッドでのヨガブームの影響を受け、再び日本でもブームとなります。
ダイエットや美容を目的としたヨガが注目され、この頃から、「ヨガ=美容のためのもの」というイメージが定着したのではないかと思います。
現代の日本におけるヨガも、ポーズ(アーサナ)の出来不出来を競うもの、ヨガウェアで着飾ったファッショナブルなもの、美容のために行うもの、といったイメージを持たれる方が多いと感じます。
もちろん、ヨガをお洒落なものとして捉えることを否定はしませんし、近年ではヨガウェアブランドも複数誕生し、毎年開催される横浜ヨガフェスタでは、お買いものを楽しみに来場される方も多く、その経済効果も大きいものです。
第6章で著名なヨガインストラクターの先生方に、「皆さんにとってのヨガとは何か」についてお話をうかがっていますが、ヨガを始めるきっかけは十人十色ですし、自分にとってヨガがどういうものであるかも人それぞれだと思います。
そして、それが変化するのも、また事実です。
例えば、ダイエット目的で始めたヨガが、心の平穏に資するものに変われば、その方にとってのヨガは「ダイエットのためのもの」から「心の平穏のためのもの」に変わったということになります。
ヨガの種類
ところで、「○○ヨガ」と聞いて、いくつの言葉を思い浮かべることができますか?
もしご自分で思い浮かばなかったら、近くの女性に質問をしてみてください。
きっと沢山教えてくれるでしょう。
私自身、現在スタジオで指導しているヨガは、8種類ほどあります。
ハタヨガ、フローヨガ(ヴィンヤサヨガともいいます)、アロマヨガ、マタニティヨガ、ベビーヨガなどですが、全てのベースとなるのはハタヨガです。
「○○ヨガ」は、アシュタンガヨガ、シヴァナンダヨガ、クンダリーニヨガ、クリパルヨガ、アイアンガーヨガといった横文字のものから、骨盤調整ヨガ、沖ヨガ、顔ヨガ、子宮美人ヨガ、綺麗になれるヨガ、美姿勢ヨガ、ホットヨガ、キッズヨガ、親子ヨガ、シニアヨガなど、挙げればかなりの数が出てきます。
このように様々な種類のあるヨガですが、生徒さんから、時折「何ヨガが本物なんですか?」といった質問をされることがあります。
そう質問をされた時、私は次のように答えるようにしています。
「アーサナ(ポーズ)を練習する、カラダを動かす全てのヨガをラージャヨガといいます。そして、その中に現代のヨガのベースになっているハタヨガがあります。アーサナではなく、日常の行い、献身を大切にするカルマヨガや、祈りをささげるギヤーナヨガなどもあります。本物は何かというよりも、自分にとって今、これだと思うヨガが、自分に合うヨガだと思いますよ」
ヨガを始めるきっかけは、ダイエット、運動不足解消、ストレス発散、健康維持など様々だと思います。
そして、何をきっかけにヨガを始めても、当初の目的とは違った部分で「変化」を感じることもあると思います。
肩こりや腰痛が楽になった、毎日お通じがある、寝つきがよくなった、暴飲暴食をしなくなった、イライラしにくくなった、肌の色つやがよくなった、人に優しくなった、自然食が好きになった、などです。
そういった小さな変化全てが、ヨガの恩恵を受けていることになるのだと、私は思うのです。
『デキる人は、ヨガしてる。 (Business Life)』 (クロスメディア・パブリッシング) |