ほとんど毎日顔を突き合わせているのに、会話は用件や依頼についてだけ。
本音のところはお互いわかっていないかもしれない。
もっと距離を縮めたいのに、お互い何となく毎日が過ぎる。
あなたには、こんな関係の人がいませんか? 近くに居ても、心は遠い…こんな関係はさみしいですね。
でも、あなたが一歩踏み出すだけで、こんな関係を劇的に変えることができるのです。
そばにいるだけではダメ?

夫婦の間であったり、思春期の子どもとの関係であったり、上司部下の関係であったり、「もっと心の距離を縮めたい」と思いながらも、関係が希薄になっている感じがする状態が続くことがあります。
例えば、夫婦の間で交わされる会話が、 「○○の件、決めてくれた?」 「△△早くやっておいて」 などの要件ベースばかりで、かつてあったような雑談やお互いの趣味の話。 そして気持ちの共有なとは、ここ数年交わした覚えがない。
ましてや、甘い会話など、遥か記憶の彼方に消えている。 思春期の子どもからも、まさに「ご飯」「風呂」「寝る」というような言葉しか聞こえてこない。こんな状態は良くないと思いながらも、どうしていいのかわからない。
これらは、近い関係だからこそ起こりやすい問題でもあります。 近い関係であるがゆえに、相手に期待することのバー設定も高くなっているのです。 それは、相手への甘えや、依存の現れなのです。
待ち姿勢は甘えの現れ

期待が高かったり、甘えがあったりするときに、気付かないうちに起こっているのが、相手に対して 「このくらいことは、わかっているだろう」とか、「こういうことぐらいは、してくれるはずだ」というような感覚です。 そして、相手が期待通りに動いてくれないと、それは不満や怒りになります。
つまり、お互い相手からのアクション待ちになりやすく、期待値が高いがために、そのアクションについての不満足も起こりやすくなっているのです。
ここで立ち戻る場所は、相手への「承認」です。
近い関係の人には、可能性の承認はもちろんですが、より相手の存在への承認を意議してみるというのが大切です。
近い関係だからこそ、相手も日頃からの承認が欲しいのです。 存在への承認をしっかり持ち続けると、自然に感謝の気持ちも増してきます。 この承認から感謝という流れが、とても重要です。
「当たり前」と「感謝」

ところで、「感謝」の反対は何でしょうか? それは、「当たり前」です。
当たり前だと思っていることには、感謝の気持ちは沸いてきません。「妻たるもの、ご飯を作るのは当たり前」 「夫たるもの、お金を稼いでくるのは当たり前」 「部下たるもの、指示にちゃんと従うのが当たり前」 でも、それは本当に当たり前のことなのでしょうか?
当たり前と思っていたことが、当たり前ではないと気付いたときに、感謝の気持ちは生まれます。
家事や仕事をこなしながら、毎日のご飯を作ってくれるのは、当たり前でしょうか? ストレスを抱えながら、家族のためにお金を稼いできてくれるのは、当たり前でしょうか? 不慣れなこともある中で、指示したように動いてくれるのが当たり前でしょうか? 近い関係ほど、この相手に対する「当たり前」の感覚が起きやすいのです。
相手を承認し、感謝の気持ちが起こることによって、あなたの言葉が相手の潜在意識に届くようになります。
もっと気持ちを届けるには?

親しいがゆえに、当たり前の感覚が起きやすい関係だからこそ、ぜひ、していただきたいのは、“先手必勝”です。 感謝するのも先手必勝。「ありがとう」の声をかけるのも先手必勝。
相手に「これぐらいのことはやってくれるだろう」という気持ちがあるならば、逆に同じように相手が思っているだろうあなたへの期待を、先手必勝で先に満たしてあげる。 もし、妻が仕事をしながら、子育てや家事に追われていたら、何も言わずに朝食後のお皿を洗ってあげる。これも先手必勝です。 部下がつらそうな表情をしていたら、「大丈夫か?」と声をかけてあげる。これも先手必勝。
先手必勝のトレーニングをしてみよう

例えば、皿洗いをするときに「忙しいのに、こんなことやっている場合か!」と思いながら、皿洗いをしていましたとしましょう。 こんなふうに思いながらやっていると嫌になります。 嫌になるどころか、妻に対する怒りさえ出てくる始末。
こんなときおすすめなのが、セルフコーチングです。 まずは、皿洗いをしながら怒りが込み上げている自分の位置から、数歩先の位置まで移動します。 そして、先程皿を洗っていた自分がそこにいるような感覚で見てみましょう。 怒っている自分を外側から客観的に見る感じです。 怒っている自分のビデオを見るような感じでもあります。
そんな感じで見てみると… たかが皿を洗うだけのことに愚痴ばかりこぼして、しかもそれによって怒りまで起こしている自分が滑稽に見えてきませんか?
先手必勝は、コーチングのトレーニング

皿を洗うときも、休日に掃除機をかけるときも「今はこれをやっている場合だ!今はこれが大切なんだ!」と思いながらやる習慣を付けてみましょう。 すると、不思議なことにそれまでイヤイヤやっていた家事も、淡々とルーティンをこなせるようになります。
「家族の未来に貢献している」とか「自分の未来に貢献している」という感覚さえ湧いてくるようになりました。 そんな感じになってくると、仕事がかなり詰まっているときも、締め切りに追われているときも、良い意味で“やって当たり前”という感覚で皿洗いをしている自分に気づくようになります。
リフレッシュできる、良いテンポの1つになっている感じさえあります。 さらには、こうした習慣が付いていくにつれ、妻からは不満の表情がどんどん減っていきました。 そして、自然と明るい会話が増えていくのです。
先手必勝をこちらから続けることで、相手の心も開き、潜在意識の受け入れも進み、やがては相手からの働きかけが始まります。
大事なことは、 相手の態度の変化や、相手からのリアクションがあまりなくても、「こっちがこれだけ先手必勝をやっているのだから、呼応するのが当たり前だろ!」とならないこと。これは、本当の承認ではありません。 相手を本当に承認し、信じることができれば、先手必勝を続ける習慣ができてきます。
先手必勝を続けていると起きること

先手必勝を続ける習慣は、相手が持っている当たり前の心をこちらが先に満たしてあげる習慣でもあります。相手が当たり前と思っていることでも、実のところ、実生活の中ではそれらが当たり前に満たされることは意外に多くありません。
それをあなたが先手必勝でどんどん満たしてあげれば、やがて相手は、それらか感謝すべきことであると気付くのです。そして、 相手の態度は自然に変わっていきます。
この習慣は、相手が変わっていくことの第一歩につながり、その先にお互い腹を割って話すことのできる関係性が築かれていくのです。
「相手を変える習慣力」(著:三浦将)より
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