MENTAL

健康の管理は呼吸のコントロールから

「なにもしていないのに調子がいい」(著:森田敦史)より

呼吸のニュートラル状態は常時実行する必要はない

Businesswoman meditating in her office

呼吸において、これ以上吸えないというところを最大吸気点といい、これ以上吐けないというところを最大呼気点といいます。そして中間付近、肩が前に出ていて、背中を丸くし、ほどよく力が抜けた状態での自然呼吸を、呼吸のニュートラルと呼びます。呼吸のニュートラルは、深い瞑想や高度な集中につながる大切な状態ですが、日常生活において常に実行しなければならないわけではありません。

たとえばスポーツや激しい作業をしているときに、ニュートラルな状態で呼吸をするというのは現実的ではありません。呼吸は用途と目的に応じて柔軟に変えてもよいのです。呼吸のニュートラルな状態というのは、ふだんの呼吸の基点、ホームという位置づけとして理解してください。

日常の中で落ち着いた環境にいるときや肉体的に激しい運動や作業をしていないときにするべき呼吸、用途と目的に応じて深く、あるいは浅くした呼吸が戻ってくるところ、それがニュートラルな呼吸ということになります。

落ち着いているときの人間の呼吸は、常に一定というよりもニュートラルな状態で静かに呼吸をし、必要に応じて深く吸って酸素を多く取り入れ、また吐くということをし、それから再びニュートラルな状態に戻ります。

呼吸が浅く止まりやすい、力みが抜けない人は、用途と目的に応じて呼吸を変化させたまま、ニュートラルな状態に戻らないということが問題なのです。些細なところから始まり、気づかないうちに少しずつ呼吸が乱れ、それに従って息が浅く止まりやすくなり、体の力みが抜けなくなります。この状態が続けば続くほど体を痛めるリスクは上がってしまうのです。

今自分がどういった呼吸をしているか、過去どのような呼吸をしていたか、それを的確につかむことが、体調管理や体質改善につながります。実際に実行している呼吸と、理想の呼吸との差が、埋めるべきギャップであり、改善する点であるということになります。

自分が自然にできる呼吸と、理想であるニュートラルな呼吸が許容範囲で一致したとき、はじめて調和された体になったといえます。今はニュートラルな呼吸がつらいと感じるかもしれません。しかし呼吸が深くなっていくにつれて、それがつらくなくなっていきます。さらには、逆にニュートラルでない状態でいることの方がつらく感じるようになり、すぐにニュートラルに戻したくなる、というのが理想の状態といえるでしょう。

それが自然にできるようになると、特に強く意識しなくても、自分自身で体調のコントロールができるようになります。これが人間という動物が本来もっている「快・不快を感じる感覚」です。

膨らむ圧力が自然治癒力を妨害する

Man Holding Breath Blowing Cheeks

人間には「自然治癒力」という、痛めても歪んでも凝ってもそれを正常に戻そうとする力が備わっています。その性質は体の恒常性ホメオスタシスとも呼ばれています。医療従事者などはこの力を引き出すということをしているのです。

この力は意識しなくとも勝手に、オートマチックに働く力です。その力が十分に働かなくなると「不調」や「症状」として体に発現することになります。

それではなぜ、自然治癒力が十分に働けなくなるのでしょうか。それは、普段の呼吸が吸気優位になっているということ、体に膨らむ力が常時生じているということになります。膨らむ力が悪いというわけではないのですが、膨らむ力が常にかかり続けると問題が起こります。

体のオートマチックに治ったり、回復する働きを発揮させるには、膨らむ力にも縮む力にも極力干渉されないような環境が必要になります。それがニュートラルという概念です。体に存分に働いてもらうためには、極力体のやることに干渉しないだけの環境を与えなければなりません。

「治したい、しかしふだんの呼吸を吸気優位にしている」というのは、たとえると部下に自由にやれといいながらも上司が絶え間なく口を出し、部下の活動範囲やモチベーションを下げてしまっている、というようなものなのです。

呼吸をコントロールして、体調管理を容易にしよう

young woman taking deep breath in jungle

呼吸のニュートラルな状態(肩を前に出し、背中を丸めて力を抜いた自然呼吸)を、常時実行する必要はありません。スポーツや激しい作業などをしているときには、最大吸気点近くまで胸を膨らませて息を吸い、最大呼気点までお腹を絞るようにして息を吐いてもよいでしょう。

呼吸がニュートラルな状態とはつまり、呼吸における基点なのだと考えてください。呼吸が用途や目的に応じて変化するのは当然のことなのです。ただ呼吸の仕方が悪い人は、乱れた呼吸のまま、いつまでたっても呼吸の基点に戻らないことが問題なのです。

いま自分がどのような状態で呼吸をしているのかを、常に意識していください。たとえ乱れた呼吸をしていても、自然とニュートラルな呼吸に戻して、調和した状態になることが大切です。慣れてくれば呼吸をコントロールできるようになり、体調を管理することも容易になるでしょう。

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