「明日に疲れを持ち越さないプロフェッショナルの仕事術」(著:渡部卓)より
仕事の人間関係を整える6つの基本姿勢
仕事におけるストレスの大半は人間関係に起因しているといわれています。仕事場では、上司、同僚、後輩、部下、取引先、顧客など、さまざまな立場の人間と接触し、意志を通じあわせていかなければいけません。
性格も考え方も価値観も違う人間同士のやることですから、摩擦や軋轢があるのは当たり前。疲れないわけがないがありません。
また、昨今はどのような仕事をしていても結果が求められますから、そのプレッシャーにストレスを感じるのももっともな話だと思います。
ですから、疲れない仕事術やストレスフリーの仕事術などはありません。代わりに、いかにして疲れを軽減するか、あるいはためこないかという観点から、仕事場における人間関係の基本について考えていきましょう。
次の6つの基本姿勢があれば、疲れにうちひしがれたり、ストレスで追いつめられることはないといえます。
1 正しい手続きを踏んでプロセスを開示しておく
仕事ではどんなトラブルが待ち受けているか、わかりません。ある日、突然落とし穴にはまるということもあります。そんなとき、あなたが正しいプロセスを踏んでいれば、傷は少なくて済みます。
会社にはその会社なりの決められたルールというものがあるはずです。それらは、あなたを縛るものではなく守ってくれるもとと理解しましょう。そのルールに従っているかぎり、トラブルや事故が起こっても、あなたは責任を抱え込まないで責任やジャッジは上司に任せることができます。
正しい手続きを踏んでいるかどうか証明するには、上司にも部下にもマメに進捗報告し、困ったことがあったら相談していなければなりません。自分や他の人の話を紙やメールに残しておくことも大切です。
プロセルを開示しておくことは、自分の身を守ることにつながります。自分で仕事を抱え込んでブラックボックス化している人は、何かあったときに周囲が手を差し伸べることができません。
上司に対して、困ったことやネガティブなことを相談すること自体にストレスを感じる人もいるでしょう。しかし、それはまだ小さなストレスなのです。そこをスルーして見て見ぬふりをしてしまうと、あとからもっと大きなストレスを抱え込んでしまいます。
2 ホウレンソウは万能潤滑油
報告・連絡・相談の「ホウレンソウ」は、新人研修の時に真っ先に教わる仕事の基本です。しかし、これを初歩的なスキルだとしておろそかにしていませんか?
実は、上司にとっても部下にとっても、あるいは同僚同士でも、この「ホウレンソウ」を見直すことで、コミュニケーションの質はずいぶん改善されるのです。
最近は、報告・連絡・相談もメールなどによりコミュニケーションスタイルが主流もまっていますが、そこには声の調子や相づち、顔の表情、身振り手振り、間合い、雑談などのコミュニケーションの重要な要素がそっくり抜け落ちています。これが知らず知らずのうちに大きなストレスを生み出しているのです。
メールでの「ホウレンソウ」から、直接のやり取りを意識するだけでも、人間関係のストレスは変化します。ビジネスの現場は忙しさを増してきているので、そんな悠長なことはやってられないと思いがちです。ですが実際に成果を上げている組織では、上司は部下の話を聞く時間を設けていますし、部下にも上司への直接の「ホウレンソウ」を推奨しています。
部下からの報告・相談を受ける上司は、傾聴のスキルを駆使して、聞くモードに徹します。
部下も同様に、上司や同僚の話をしっかり聞く癖をつけます。たとえその人の立場や年齢が自分より上だとしても、相手の貴重な時間を奪って、などと考える必要はありません。部下の話を聞くのも上司の仕事なのです。「ホウレンソウ」をしつこいぐらいにして、「こうるさい奴だ」などと思われるぐらいでちょうどいいのだと考えてください。
3 とことん話す、とことん聞く
上司から到底実現しそうもない目標数字を押し付けられ、それをまた自分の部下に指示しなければならない状況もあると思います。上からはやれと言われ、下からは絶対無理だと言われ、いわゆる板挟みの状態になります。
そんなときにストレスを抱え込んでしまうのは、上にも下にも「言えない」人です。ストレスをためないためには、上司から無理な目標値を設定されたら、真に受ける前に冷静に考えましょう。自分には無理だと思ったら、「どうやったら達成できるでしょうか」と上司を巻き込むことです。そもそも考えないで指示を出す上司もたくさんいますから、一緒になって現実的に考えてもらうという作戦をとるのです。話すことによって、上司の立場や考え方がわかることもあります。実は上司のほうがあなたに相談したかったかもしれません。
現実的な路線が見えてきたら、今度は部下や後輩と話します。指示ではなく自分の考え方を示し、どうすれば達成できるかのか上から下への相談という形をとります。
対話を重ねることで信頼関係は生まれてきます。そして、信頼関係が成り立ってはじめて、部下はあなたのモチベーションを高める言葉に耳を傾けてくれるようになります。
4 経験値を高めることでストレス軽減
脳科学者の池谷裕二氏は、人間にはストレスを克服するための防御機能として、「記憶」があると述べています。はじめておこなうことや遭遇することには、強い緊張を覚えてストレスを感じます。しかし、それが記憶として蓄積されると回数を重ねるごとにストレスが軽減していくのだそうです。つまり、経験値を高めるとも言い換えられます。
仕事でミスを冒したり、うまくいかないことがあるとストレスを感じます。でも、これを経験値として次に生かすという発想をしていければ、成長につながります。ストレスを回避するのではなく、乗り越えるという戦略です。
失敗が次の成功につながるという経験を経ると、新しいことに対して積極的に取り組むことができます。失敗を極端に怖がったり、過度なストレスを感じることもなくなっていくはずです。
ストレス耐性を高めるためには、失敗を経験して学ぶことも必要なのです。
5 自分でコントロールできない問題で悩まない
あなたが抱えている悩みや遭遇したトラブルは、あなた自身がコントロールできるものか、コントロールできないものかをまず腑分けする必要があります。
自分が引き受けられるトラブルは、適度なストレスとして受け止めて、経験値を高めるために努力するべきです。ですが、自分ではどうしようもないことならば、抱え込んで悩むのは無駄です。開き直るしかありません。
自分なりに打てる手を打ったなら、あとは状況がどうなろうと自分を責めないことが大事です。
6 どうにもならない状況だったら逃げる
仕事上でストレスに押しつぶされるのは、逃げ道がないケースです。
実際に逃げるかどうかは別としても、逃げ道があるとないとでは、ストレスの感じ方も変わってきます。
上司から責任のある仕事を任されたときに、やる気と同時にプレッシャーも感じるはずです。その際に「失敗しても命までとられるわけじゃないし、謝ろう」とか「ダメだったら会社を辞めよう」と最初から逃げ道をつくっておけば、ストレスは軽減されます。
努力してもラチがあかないときには、そこにとどまるよりも、担当を外してもらうとか、部署を変えてもらうほうが生産的です。それが実現できないなら、会社を変えるという手だってあるのです。
明日も忙しいビジネスパーソンへ
いかがでしたか?仕事上の人間関係に悩んでいる方は、上で紹介した6つの基本姿勢を覚え、実践してみてください。きっとそれだけで大幅にストレスが軽減されるはず。ストレスを抱え込んで無理をしないよう、くれぐれも気を付けてください。
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