忙しい、料理は面倒、だけど健康でいたい……。そんな人に朗報です。新刊『ひとり暮らしビジネスマンのための食事と健康大改善』では、多忙なビジネスパーソンでも簡単に実践できる食事の栄養管理法を掲載。料理センスがなくても、道具がなくても大丈夫。簡単レシピや正しい食の知識があれば、仕事パフォーマンスを劇的にあげられます。本記事では本書より、タンパク質に関する「間違いがちな食の知識」をご紹介。筋トレ・ダイエットでよく聞く「炭水化物抜き」、本当に健康にいいのでしょうか?
間違った思い込み①体重を落とすには、 炭水化物抜きダイエット
炭水化物抜きダイエットがブームになり、このダイエット法で痩せた人が続出。「炭水化物は、私たちにとっていらない栄養素である」と断言している人もいます。確かに炭水化物はとりすぎると肥満を招きますが、人間の身体にとってとても大事な役割をしています。
炭水化物ダイエットの中から、「ケトン体ダイエット」を取り上げてみます。これは、食事から炭水化物を徹底的に排除して血中から糖をなくし、体内の脂肪が分解されてできたケトン体で活動する体質をつくるというもの。炭水化物の代わりに、ケトン体の材料となる良質の油や肉を摂取することを推奨するものです。
これは実はあまり身体によいとは言えません。それどころか、長く続けると心臓や腎臓に負担がかかり、突然死の可能性が高まるダイエット法なのです。
詳しい理由を見ていきましょう。世の中にカロリーのあるものは、3つしかありません。炭水化物、タンパク質、脂質。この3つの栄養素のみです。それ以外のビタミンやミネラルは、カロリーがありません。身体を作る栄養素、機能させる栄養素というだけで、動かすためのエネルギーにはならないのです。ですから、炭水化物、タンパク質、脂質、この3つの栄養を、どんなバランスでどんな食べ物からとるかということを、考えていく必要があります。
ケトン体ダイエットでは、このうち脂質とタンパク質のみに絞って摂取するということですが、それは胃腸や心臓、腎臓に大きな負担をかけてしまいます。たとえば、揚げ物や焼肉を食べた日の翌日は、胃がもたれますね。食べ物にはそれぞれ一定のカロリーがあり、カロリーが高いということは、それだけ消化に負担がかかるということなんです。油のカロリーは、1グラムあたり9キロカロリーに対して、炭水化物は1グラム4キロカロリーです。消化にかかる負担の差は、一目瞭然ですね。
とはいえ、カロリーが低いものをたくさん食べさえすればよいということではありません。炭水化物が一番胃腸に負担なく、カロリーとして消化吸収されますが、炭水化物のほかに、タンパク質も脂質も、カロリーがある栄養素として大事なので、バランスよくとらなくてはいけません。理想の比率は炭水化物 50~60%:タンパク質15~20%:脂質20~25%です。つまり、バランスよく食べるとカロリーの半分以上が炭水化物ということです。
炭水化物は消化吸収によってブドウ糖などに分解され、肝臓や筋肉にグリコーゲンとして蓄えられます。そして一部は血液中に血糖として入ります。血糖値は、食後約30分後にピークに達するのですが、それは食べた炭水化物が徐々に消化されてブドウ糖になり、血液中に放出されるからです。
私たちの身体は、正常であれば血糖値を常に一定を保とうとする力が働きます。そのため、血糖値が高くなればそれを下げるためのホルモンであるインスリンが分泌されます。インスリンが分泌されると、身体は血液中のブドウ糖を減らすために(血糖値を下げるために)中性脂肪として蓄えようとします。それはつまり、食べたものがどんどん脂肪になってしまうということ。だから炭水化物の過剰摂取は肥満を招くのです。
しかし、ブドウ糖は、脳や中枢神経系の唯一のエネルギー源。脳は1分間に約 100mgのブドウ糖を消費しています。ただボーッとしているだけでも、脳はブドウ糖を消費しているのです。ましてや仕事で頭をフル回転させるとなると、当然ブドウ糖をたくさん必要とします。脳にとってブドウ糖がどれだけ重要な働きをしているか、おわかりいただけたでしょうか。
炭水化物は、どんな人にも必須の栄養素であり、「太るから」と言って炭水化物を極端に抜くダイエットは望ましくないということです。とにかく何事も、「すぐに効果が出る」と謳うものは、何か欠点があることが多いものです。
間違った思い込み②食物繊維は身体に必要ない
では、ダイエットをしたい時は、どうしたらよいのでしょうか?
炭水化物をしっかりとりつつ、脂肪をつきにくくする食べ方をすればよいのです。それは、食物繊維を含む食品を、炭水化物と一緒に食べること。
食物繊維は、昔は「身体にいらない栄養素」だと言われていたこともありますが、ブドウ糖の吸収を抑えるので血糖値が上がりにくくなります。血糖値の上昇がゆるやかなのでインスリンの出もゆるやか。ですから、身体はブドウ糖を脂肪として蓄えにくくなります。
また、腸の動きを活発にするので便秘にもなりにくく、そういった意味でもダイエッ トに効果的。何より腸の環境を良好に保つことができます。腸年齢は実年齢、と言われているように、腸が元気なら身体も元気だということが言えます。
もちろんダイエットに関係なく、食物繊維は積極的にとったほうが良い栄養素です。食物繊維は主に野菜に含まれます。シャキシャキした野菜や海藻などを積極的に食事に取り入れましょう。キャベツをザクザク切って塩昆布を散らして食べたり、大根、セロリ、にんじん、きゅうりなどをスティック野菜として味噌とマヨネーズを混ぜたものにつけて食べると多めにとることができます。一人暮らしの男性は、特に食物繊維が不足しがちなので、手軽にとれる自分好みの食べ方を見つけましょう。
野菜は、意識的にたくさん食べている人以外はほとんどの人が不足しています。私は野菜が大好きで、サラダを多く食べているつもりですが、それでも毎日必要量を満たしている訳ではありません。一日あたり両手にたっぷり一盛りの野菜を食べることを目標に、ぜひ負担のないかたちで実践していただけたらと思います。同時にビタミン群もとれて、身体の調子も良くなっていくでしょう。
OL経験やオーストラリア留学を経たのち、女子栄養大学へ入学。管理栄養士免許、調理師免許、食生活アドバイザー等、食に関する資格を取得。その後、料理教室にて講師として勤務するかたわら、料理研究家として活動。2011年より料理教室「広尾料理倶楽部」を主宰。モデルやタレントなど芸能人も多く通い、予約がとれない超人気料理教室として知られる。また、野球、サッカーなど超一流スポーツ選手の栄養指導を行う。著書に『旦那さんごはん』(ワニブックス)、監修書に『強いカラダ・ココロ・アタマをつくる はたらく人のコンディショニング事典』(クロスメディア・パブリッシング)など。
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