あなたは自分のこれまでの歩み、過去についてじっくりと振り返ることがありますか? それによって、あなたの肩には、過去の記憶が重荷となってのしかかってしまっているかもしれません。
人はついつい「あの時、ああしていれば」「あんなことさえ、なかったら」とネガティブに、一方で「あの頃はよかった」「当時は楽しかったな」とポジティブに、どちらの方向からも過去を振り返ってしまいます。
学生時代の幸せな思い出、あの時もっとこう振る舞っていれば……という後悔。恋愛、仕事、友人関係、健康など、生きてきた分だけ、それぞれの過去があります。それをすべて断ち切ることはできませんし、忘れ去る必要もありません。
ただ、過去にあった最高に楽しかった出来事、もう少しこうしていれば……という後悔にこだわり、それらにとらわれていると心が疲れます。それはストレスとなって、自律神経の働きに悪影響を及ぼしてしまうのです。
人は過去にとらわれると、明日への気力を失ってしまいます。変えることのできない過去にこだわるのをやめて、今から作っていくことができる未来に気持ちを切り替えていくことが大切です。
過去は過去と割り切った方が楽になるはずなのに、「もう一度、頑張る」「これから巻き返す」「若い頃の夢を再び」と思っていませんか。そう意気込むのは悪いことではありませんが、そのエネルギーは別の方向に向けた方がポジティブでしょう。
とはいえ、40代、50代になると「毎日が充実している」「明日を迎えるのが楽しみで仕方がない」と、胸を張って言える人はなかなかいないと思います。
この年代になると、残りの人生が見通せるような感覚になってくるからです。すると、人はその反動からか、過去を振り返るようになります。あまり明るくは思えない未来よりも、確実に楽しかったよい思い出に浸ってしまうのです。
疲れや定年や還暦、振り返る機会が多くなる

疲れを感じることが、過去を振り返るきっかけになることもあります。
自分ではまだまだ元気だと思っていたのに、階段を上っただけで息切れがするし、信号を走って渡ろうとすると足がもつれそうになる……。そこから「自分も、もう歳だな」と暗い気持ちになり、「平均寿命まであと何年」「定年まであと何年」と、人生を逆算するようになってしまう、ということもあるでしょう。
未来に目を向けるのを避けるような毎日を過ごしていると、徐々に気力が失われていきます。大好きだった旅行も、荷造りや移動の手間を考えるだけで面倒で「ネットで景色を見れば充分じゃない?」と思ってしまう。なんてことも。
結論から言うと、過去を振り返り、懐かしさに浸ったり、後悔し続けたりしていると心身ともに調子が悪くなっていきます。いい思い出、嫌な過去、どちらに後ろ髪を引かれているのだとしても、結局は今と向き合えていないのですから、ある意味当然だと言えるでしょう。
その影響は、心身両面に出てきます。
ストレスによって細胞の老化が進み、肌のツヤが失われ、表情が乏しくなり、いつの間にか病気になってしまう……。長い人生です。誰しも前を向けなくなることはあるでしょう。それ自体は悪いことではありません。ただ、その期間を、もう一度自分の人生を生き直すために必要な時間だ、と捉える視点があるといいのだと思います。
日本には、定年や還暦など、年齢を区切りとする仕組みが多くあります。区切りがあると、私たちは自分のこれまでに気持ちが向きますが、その結果、心身ともに乱されてしまうのです。
その点、肩の力が抜けた生き方をしている人は、たとえ振り返ったとしても「まあ、過去は過去だしね」とやり過ごします。いい意味で懐かしむ程度で、こだわりすぎない。肩の力が抜けているからこそ、過去を手放せるのです。
『小林教授の肩の力を抜くとすべてよくなる 』(著:小林弘幸)より
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“人生100年時代”を健やかに行き抜くための「アンチエンジング」
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