肩に力が入ったままでいると、「心」と「体」の健康が損なわれます。
長年にわたる自律神経の研究を通して、そのバランスが崩れるシチュエーションを観察してきました。その結果、次の5つの状況になった時、自律神経に乱れが生じると考えています。
①余裕がない時(時間がないことも含む)
②体調が悪い時
③自信がない時
④想定外のことが起きた時
⑤環境が悪い時
こうした状況が積み重なったことで、自律神経のバランスを乱され、副交感神経のレベルが低く、交感神経が優位になっている人が増えています。この「副交感神経の働きが低下、交感神経が優位」というバランスの乱れは、疲れを体に蓄積させます。
というのも、交感神経優位になると血管がぎゅっと縮こまり、血液の流れが悪くなり、免疫力も低下。疲労物質の排出もスムーズにいかず、「どうも調子が悪い」「疲れが取れない」という倦怠感の原因となるからです。
本来、交感神経は喜怒哀楽の感情が動いた時に働きが活発になります。
喜んで興奮した時、楽しくてワクワクした時、気分が高揚します。オリンピックを観戦しながら手に汗握る瞬間、大好きな歌手のコンサートの開演を待つドキドキも交感神経の働きが高まっている結果です。
こうしたポジティブな感情による自律神経のバランスの乱れは、心身に心地よい疲れとして残るだけで、大きな問題にはなりません。
しかし、仕事のストレスや家庭内のトラブル、コロナ禍における緊張やいらだちなどによって高まった交感神経優位の状態は、心身に悪影響を及ぼします。
現代社会でストレスを感じずに生きるのは不可能です。
いわば私たちは、朝起きてから眠るまで、「交感神経を刺激し、副交感神経の働きを下げる要因」に囲まれているのです。
だからこそ、不安や不調と自律神経の関係を学び、今の自分の状況を把握していく知識を身につけることが、健康な自分でいる上で役立ちます。
医療の観点でいうと「体技心」。心や技の前に体

近年、「不定愁訴」と呼ばれる頭痛、めまい、食欲不振、疲労などといった症状を訴える方が増えています。これらは血液検査をしても、異常が認められないことがほとんどです。
しかし、自律神経を測ると、トータルパワー(自律神経の総合力で、交感神経と副交感神経を切り替え、自律神経のバランスを整える力ともいわれています)という活性力が極端に落ちています。
トータルパワーが落ちると、血流や消化管機能が低下します。そこにストレスがかかることで自律神経はさらに乱れる、という悪循環に陥ります。
こうした場合の改善方法は、とにかく「動く」ことしかありません。疲れたら、体を動かすことが大切なのです。体を休ませるよりも、逆に体を動かすことで血流を促した方が心と体の疲れが取れるのです。
「心技体」という言葉がありますが、医療の観点でいうと、「心」や「技」の前に「体」がきます。
つまり、「体技心」という順番です。何よりも重要なのが、「体」の健康であるのです。体の健康が、心を含めたすべての健康の源になるからです。
たとえば、腸内環境を整えれば、体の中のホルモンバランスや体内リズム、体温調整や血流に至るまで、すべてが整います。
自律神経のバランスと腸内環境が、体の調子を維持する基盤となっていると言っても過言ではありません。
しかし、私たちの体のコンディションは、つねに万全とはいきません。
そうした時にどのように立て直せばいいのか、あるいは体調を崩さないようにどのような習慣を持つべきなのか。それが「技」の問題になってきます。体に意識を向け、それを整える技を身につければ、自然と心は元気になるでしょう。
『小林教授の肩の力を抜くとすべてよくなる 』(著:小林弘幸)より
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