「疲れやすい人の食事 いつも元気な人の食事」(著:柴崎真木)
食事と寝不足の密接な関係とは
疲労回復に欠かせない睡眠。しかし、厚生労働省の平成26年「国民健康・栄養調査」によると、ここ1か月間、睡眠で休養が充分にとれていない人の割合は、20.0%で、年々増加しているようです。年齢階級別にみると、40歳代がもっとも多く、28.7%と実に3割近くの人がよく眠れていない、つまりは寝不足だと感じているそうです。
まくらやマットレスなどの寝具だけでなく、サプリメント、アロマテラピー、ウェアラブル端末による睡眠時間の管理アプリなど、さまざまな眠りに関する商品が販売されています。しかし、質のよい睡眠をとるために、食事が大事と考えている人はまだまだ少ないように感じます。
アメリカ睡眠学会誌に掲載された、米ニューヨーク州コロンビア大学とニューヨーク肥満栄養研究センターから、食物繊維が少なく、脂肪や糖分を多く摂取している人は睡眠が浅く、質も低下している可能性があるということが報告されました。
この実験では、食物繊維を多く摂取している人は、同じ睡眠時間でも深い睡眠の時間が増加しており、脂肪の摂取量が多い人は減少していました。また、糖分を多くとっている人は、睡眠から覚醒する回数が多くみられました。詳細なメカニズムは明らかではないようですが、脂肪が多い食事をとると、消化に負担がかかることも要因ではないかと思います。
昼食は少しボリュームのあるものをとってもエネルギーとして使いやすい時間帯なので、睡眠のためには夕食は脂肪の少ない食事にし、揚げ物などの脂肪が多いものが食べたいときはランチタイムに食べるようにしましょう。
夕食に和食でぐっすり
ストレスや寝不足は、マグネシウムを消費し、体内時計の調節にもかかわるとの研究報告があります。マグネシウムは大豆製品や海藻類、魚介類、青菜類、ごまなどに多く含まれています。
また、カリウムも夜中に目が覚めてしまうことを防ぐことに役立つという研究報告もあります。カリウムはレタス、ほうれんそう、こまつななどの葉野菜や、バナナ、メロン、キウイなどの果物、たけのこ、ひじき、アーモンドなどに多く含まれます。水や熱に弱いので、生で食べるか、加熱しすぎないように気をつけるとよいでしょう。
マグネシウムやカリウムを多く含み、脂肪や糖分が少ない食事をとるには、洋食より和食のほうがよいでしょう。夕食でとる和食は、甘辛い煮物や煮魚より、薄味でさっと煮たものや塩焼き、ソテー、おひたし、冷奴などみりんや砂糖をあまり使わない料理のほうがおすすめです。ごはんも、たけのこごはんや豆ごはん、わかめごはんなどにすると糖質の量を抑えることができます。
夕食はタイミングも重要です。21時以降、特に22時以降になると、体内時計の乱れにつながります。早めに食べられないときは分食するようにしましょう。どうしても遅くなってしまったら、脂肪や血糖値の上がりやすい白米や白パン、うどんなどの精製された穀類や甘めの味つけのおかずは少なくしましょう。グルタミン酸は、脳に食べすぎを防ぐ働きかけをする効果がありますから、味噌汁を飲むようにすると胃腸も落ち着き、夜遅くても食べすぎないで過ごせそうですね。〆のラーメンより〆の味噌汁がおすすめです。
質のよい睡眠のためには、アルコール・カフェイン・たばこにも注意!
厚生労働省では、2014年に「健康づくりのための睡眠指針」を発表しており、アルコールやカフェインのとり方について注意を促しています。
アルコールは入眠を一時的には促進しますが、中途覚醒が増えて睡眠が浅くなり、熟睡感が得られなくなるため、寝酒として飲むのは控えたほうがよいです。アルコールはリラックスさせる効果やストレス解消の効果もあるため、多少飲むことは悪いことではありません。しかし、就寝3時間前には飲み終えておきたいところです。
カフェインは入眠を妨げたり、睡眠を浅くしたりする可能性があるため、就寝前3~4時間は控えたほうがよいとされています。食事のことではありませんが、たばこもニコチンに覚醒作用があるため、就寝前の喫煙は控えたほうがよいとされています。
食事が先か、睡眠が先か?
先のアメリカでの研究では、しっかり睡眠をとるためには、夕食で脂肪や食物繊維の少ない炭水化物や糖類は少なめのほうがよいとのことでした。一方、別の研究によると、寝不足の状態になると、脂肪の多い食事を好んで食べることもわかっています。
研究では、健康な成人14名を、寝不足の状態と十分な睡眠をとった状態で、血中2-A G濃度(食欲増進や脂肪蓄積などにかかわる物質:内因性カンナビノイド)と空腹感、食欲、食事内容を調査しています。すると、寝不足の状態では、本来は日中から午後にかけて上昇し、夜間には低下する血中2-AG濃度が夕方から深夜にかけて上昇していることがわかりました。食事内容も十分な睡眠をとった状態のときと比較すると、脂肪の多い食品を2倍以上食べており、必要なエネルギー量の食事をとった後でもスナック菓子やキャンディー、クッキーなどの間食欲求が抑えられなくなっていたといいます。
因果関係は不明なところもあるようですが、睡眠を十分にとれば過度な食欲や不健康な食事を抑制できる可能性があると示唆しています。
まずは食事に気をつけよう!寝不足と高脂肪・高エネルギーの食事の悪循環を断ち切るには?
脂肪や糖分の多い食事→寝不足→さらに高脂肪、高エネルギーの食品をとる→寝不足……という悪循環を起こさないように、まずは食事に気をつけてみましょう。間食をしたくなったり、余分に食べたくなったりしたら運動する、お風呂に入る、歯を磨く、水を飲むなど代替行動を見つけると、このサイクルを断ち切ることができるかもしれません。寝不足を解消して、健康な身体をつくりたいですね。
関連書籍のご案内
記事の内容をさらに知りたい方はこちらの本をお読みください。
『疲れやすい人の食事 いつも元気な人の食事(Business Life)』 (クロスメディア・パブリッシング) |
参考
・Fiber and Saturated Fat Are Associated with Sleep Arousals and Slow Wave Sleep.
DOI: 10.5664/jcsm.5384 PMID: 26156950