「疲れやすい人の食事 いつも元気な人の食事」(著:柴崎真木)より
好きな人も多い肉。肉に含まれる成分は?
最近の外食トレンドである「肉」。熟成肉専門店、肉バル、肉フェスなど、お店やイベントも増えました。「肉でスタミナアップ」「疲れたときには肉」といわれ、アスリートも男女問わず肉好きが多いです。
たしかに肉には疲労回復や疲労予防に関連する栄養素が含まれています。
例えば、牛肉には鉄が多く含まれており、貧血予防に役立ちます。貧血になると体内の酸素が不足しやすい状態になり、疲れを感じやすくなりますから、疲労予防に役立つといえるでしょう。
豚肉には、炭水化物をエネルギーにするときに必要なビタミンであるビタミンB1が多く含まれています。エネルギー源があってもそれを体内でうまく利用できなければ疲労を感じやすくなるので、豚肉のビタミンB1も披露予防に役立つといえそうです。
鶏むね肉には、イミダペプチドという抗酸化作用のある成分が含まれています。イミダペプチドには、筋肉の炎症を防ぐ働きがあり、筋肉の疲労回復に役立つといわれています。
また、肉には筋肉や血液、骨、皮膚などの材料になるたんぱく質が豊富に含まれているため、健康的な身体づくりに欠かせない食材の1つです。
本当に肉で疲れを回復できる?
確かに、肉には疲労回復に効果がありそうな成分が含まれています。しかし、本当に肉が疲労回復に適切な食べ物なのでしょうか。次の図を見てください。
肉(100g)の部位別たんぱく質と脂肪が占めるエネルギーの割合
この図は、肉の部位別の100グラムあたりのたんぱく質と脂肪が占めるエネルギーの割合を示したものです。ほとんどの肉がたんぱく質よりも脂肪が占める割合のほうが高いのがわかると思います。
ですから、肉に偏ってとりすぎると、飽和脂肪酸のとりすぎにつながります。飽和脂肪酸のとりすぎは、血液中の中性脂肪やコレステロールを増やし、動脈硬化を促進します。血液の流れが悪くなると、身体の隅々まで栄養素や酸素を運べなくなるため、疲労回復もしにくくなります。
特にサシのしっかり入った霜降り肉やバラ肉、鶏の皮は脂肪が多く、たんぱく質をとっているつもりが実は脂肪をとっていたということにもなりかねません。牛肉や羊肉にはマーガリンやショートニングなどに含まれるトランス脂肪酸が含まれているため、偏って食べるのは控えたほうがよいでしょう。
肉食と睡眠の意外な関係とは?
博報堂生活総研の調査によると、次の図のように、30代男性で焼肉が好きな料理ベスト3に入る割合と睡眠時間を増やしたいと思っている割合の年次別推移がとてもよく似ています。
焼肉好きと睡眠時間の相関関係(男性30代)
焼肉屋はなかなかひとりでは行きづらい場所でもあるので、付き合いのよい人や仲間同士で過ごす機会が多い人は夜が遅くなりやすいのか、それとも、焼肉を夜に食べる頻度が高く、消化が十分にできないことから睡眠が浅くなりやすいためなのか、科学的な根拠があるわけではありませんが、なかなか興味深いデータですね。
魚と豆は良質なタンパク質
女子学生を対象にした研究では、魚や豆類のおかずの量が多い人のほうが、疲労感が少ない傾向にあるという報告もあります。
大豆に多く含まれるイソフラボンは、コレステロールや中性脂肪を下げる働きがあるといわれています。イソフラボンは、大豆たんぱく質と一緒にとることでその作用がみられることから、サプリメントではなく食品でとることがよいとされています。納豆や豆腐は調理もいらず、手軽にとれることから毎日とりたいものです。
大豆イソフラボンは女性ホルモンであるエストロゲンと似た構造をしています。そのため、大豆イソフラボンは、更年期症状を和らげる働きや骨粗鬆症の予防にも役立つといわれています。また、大豆以外の豆も食物繊維や抗酸化成分などを多く含んでいます。グリーンピースや枝豆には、β-カロテンやビタミンB1が豊富に含まれていますから、炭水化物をエネルギーに変えるのを助ける働きも期待できそうですね。黒豆やあずき、キドニービーンズは、アントシアニンという抗酸化成分を含んでいます。アントシアニンは、眼精疲労予防に役立つだけではありません。最近の研究では、アントシアニンには花粉症予防効果もあると期待されています。
豆類は乾燥した状態だと使いにくいのですが、水煮になっているものだと手軽にとれます。日本では種類が少ないのが残念ですが、海外では豆の水煮缶詰が多数出回っています。日本でも、サラダビーンズや煮豆などのレトルトパックもあるので、常備菜にしてとり入れるといいですね。
良質なたんぱく質でいつも元気な身体を手に入れよう!
いかがでしたか?肉を食べるのが悪いわけではありません。肉もおいしく食べつつ、疲労回復を目的として魚や豆といった、良質なたんぱく質をとるように心がけましょう。
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