「疲れやすい人の食事 いつも元気な人の食事」(著:柴崎真木)より
「紫外線=悪者」?紫外線なしではつくれない、身体に必須な「ビタミンD」とは?
「紫外線」と聞いて、みなさんは何をイメージするでしょうか。「肌が焼ける」「シミの原因になる」「皮膚がんになりやすくなる」など、さまざまだと思います。この紫外線の量は、気象庁によると、1990年代前半に観測を開始して以来、年々増加傾向にあるそうです。
紫外線を浴びすぎると、短期的には日焼けによる皮膚や角膜のダメージや免疫力低下が起こります。また、慢性的に紫外線を浴びすぎる状態がつづくようになると、しわやシミ、白内障、皮膚がんなどの健康に対する影響が出てきます。
特に、しわやシミなどは、美容に気を遣っている女性にとっては大敵。日焼け止めクリーム、サングラス、帽子から手袋まで、バッチリ日焼け止め対策をして出かける人も多いですよね。しかし、紫外線は人体に悪い影響ばかりを与えるわけではありません。実は、数あるビタミンの中で、紫外線によって合成されるビタミンがあるのです。それはビタミンDです。
日光でつくられるビタミンD。ビタミンDの身体への効果とは?
男性に比べ、女性は閉経すると骨粗鬆症のリスクが高まります。骨粗鬆症を予防するには、骨の材料であるカルシウムをとることはもちろんですが、カルシウムの吸収や骨への沈着を助けるためにはビタミンDが必要です。最近では、ビタミンDは骨を丈夫にするだけでなく、うつ病、女性の排卵異常、糖尿病、インフルエンザ、花粉症などのアレルギーの予防にもなることがわかってきました。
冬の紫外線対策が病気のもとに?適度に日光を浴びてビタミンDをつくろう!
このように健康な骨の維持や、病気の予防に働いてくれるビタミンD。残念ながら、体内に十分に持っている人は少ないそうです。日本骨粗鬆症学会では、日本人女性の半数で、ビタミンDが不足している可能性を示しています。また、日本骨代謝学会でも同様に、70~80%の日本人がビタミンD不足である可能性を示唆しています。
日本人にビタミンD不足が多いのはなぜなのでしょうか。
先ほども述べたとおり、ビタミンDは紫外線を浴びることで、体内で合成されます。
しかし、紫外線を浴びすぎると健康に影響が出てきてしまいます。つまり、適切な時間、紫外線を浴びる必要があります。
では、実際にどのくらいの時間、紫外線を浴びるとビタミンDが合成されるのでしょうか。国立環境研究所と東京家政大学の研究チームが、ビタミンDを日光浴によって摂取するために必要な時間を、顔と両手の甲を露出させた条件で見積もった結果を発表しています。それによると、成人が健康な生活を送るのに必要なビタミンDを体内で生産するために必要な日光浴の時間は、次のとおりとなっています。
1.冬の12月の晴天日・正午
- 札幌:139分
- つくば:41分
- 那覇:14分
2.夏の7月の晴天日・正午
- 札幌:8分
- つくば:6分
- 那覇:5分
ビタミンDの合成に必要な日光浴の時間は、季節によっても違いますが、地域によってもかなり違うことがわかりますね。
ですから、特に冬季の北日本では、健康のためには積極的に日光浴することが重要です。それに加えて、積極的に食事からビタミンDをとることが必要になります。
また、女性の冬の日焼け止め対策のしすぎは、ビタミンDの合成を妨げることがあります。そうすると、骨粗鬆症のリスクを高めたり、うつ病などといった病気の予防ができなかったりと、健康を害する可能性があります。冬の日焼け止め対策は、ほどほどにしておくことが必要ですね。
日光浴の時間がとれない人は食事でビタミンD補給!ビタミンDを含む食品とは?
北日本で冬を過ごす人以外にも、「デスクワークで1日中室内にいて、帰りは夜遅くになり、太陽の光を浴びるのは朝の通勤時のみ」といったように、ほとんど日の光を浴びていないという人もいるでしょう。
このように、日常生活で日を浴びる機会があまりないという人は、食事からビタミンDを摂取することをおすすめします。ただ、ビタミンDをとれる食品は限られています。ビタミンが含まれている食品といえば、穀類や野菜ですが、これらにはほとんど含まれていません。実は、ビタミンDを多く含む食品は、魚類やきのこ類なのです。
なかでも、ダントツに含有量が高いのがきくらげです。きくらげは、和え物や炒め物にしたり、またスープに入れたりと、使いやすい食材でもあります。特に冬の季節には、意識して、きくらげを食事にとり入れてみてください。
ただ、何事もやりすぎはよくありません。ビタミンDもとりすぎてしまうと、血管の内壁や内臓にカルシウムを沈着させやすくして、不調を招く原因になります。日光をほどほどに浴びつつ、ときには、魚やきのこ類を食べましょう。そうすれば、十分にビタミンDの必要量をカバーすることができます。
日光浴と食事で、身体の中のビタミンDを増量しよう!
いかがでしたか?紫外線を浴びすぎるのはよくありませんが、適度に浴びるとビタミンDをつくることができます。十分に日光浴の時間がとれない人は、食事でしっかりカバーしましょう。身体の中のビタミンDの量を増やし、骨粗鬆症やうつ病の予防に役立てて、健康な心と身体を維持しましょう!
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