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年齢とともに老化する歯や歯ぐきは、お口の中のトラブルだけでなく、さまざまな病気の原因に! こうしたリスクを毎日のセルフケアで防ぐために、歯科医の西原郁子先生にデンタルケアの極意を取材しました。
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「興味深いデータがあります。ある雑誌で55歳から74歳までの1060人に行った“今、何に後悔していますか?”のアンケートで、1位になったのは“タバコをやめればよかった”でも“暴飲暴食をしなければよかった”でもなく、“歯の定期検診を受ければよかった”なのです」(西原先生、以下同)
歯が悪くなってから治療するのではなく、定期検診はとても大切。でも、それ以上に大切なのは、自分自身で行う毎日のデンタルケア! 正しいデンタルケアの習慣を、ぜひ身につけよう。
意外とできてない!? まずは基本の歯磨きをマスター
■磨いてるつもり
「歯の磨き残しを確認する歯垢染色剤を使うと、ほとんどの患者さんは、口腔内のあちこちに磨き残しがあります。磨いているつもりでも、正しい歯磨きができている人は、ごくわずかといえます」
磨き残しは、虫歯や歯周病を悪化させる原因に。
「デンタルケアの基本は、毎日の正しい歯磨きです。まず第1は、プラーク(歯垢)の餌になってしまう食べ物のカスを残さないこと。特に甘いものに含まれている糖質は、要注意です。第2には、できてしまったプラークをしっかり落とすこと。この2点ができていれば、虫歯、歯周病の予防、そして進行も食い止めることができます」
■夜の歯磨きが絶対!
毎日の歯磨きでいちばん大事なのは、その日の汚れをその日のうちに落とすこと。
「お仕事やお酒を飲んで遅く帰り、歯磨きがめんどうだからと、そのまま寝てしまっていませんか? 唾液の分泌量が減る就寝時は、1日のなかで最も細菌が繁殖しやすくなっています。その状況で寝ると、虫歯も歯周病も確実に進行してしまいます。ですから、夜寝る前の歯磨きは、忘れずに。1日の歯磨きの中でも特にていねいにしてくださいね」
美歯の西原先生も、朝昼は5分程度の歯磨きタイムだけど、寝る前はしっかり15分もデンタルケアしているそう。
「また、歯磨きは、食後30分ほどたってからが理想です。食べてすぐの口腔内は、酸性に傾き、歯の脱灰が起きているからです。なかなかタイミングがないというなら、すぐに磨いてもいいのですが、できるだけやさしく、歯の表面を傷つけないように意識してください」
■食後に食器を洗うのと同じ
大事なのはわかっているけど、やっぱりめんどくさい……。
「歯磨きをせずに食事をするのは、汚れた食器に料理をのせて食べているのと同じことです。食器の汚れは、放置しているとこびりついて、洗っても落としづらいですよね。歯も同じです。歯は、大切にしている食器だと思ってやさしくケアしてあげてください。ていねいに、きれいに磨いた歯なら、お食事だって何倍もおいしくなるはずです!」
さらにおすすめなのは、鏡を見ながら磨くこと。
「長く磨くため、お風呂のなかやリビングでテレビを見ながら磨くのもいいと思います。ですが、磨きはじめでも、お口をゆすぐときでもいいので、鏡を見ながら磨くのを習慣にしてください。きちんと歯ブラシがあたっているか、磨き残している部分はないかのチェックにつながります」
歯ブラシは安くてもOK! こまめに替えましょう
「ブラシの毛は“かため”を好む人もいますが、歯や歯ぐきを傷つける危険があるので、避けたほうが無難。口腔内のトラブルが少ない人は“ふつう”、歯周病の人は“やわらかめ”がオススメです」
・持ち手がストレート
・ふつうorやわらかめ
・小さめヘッド
・ブラシ部分はポリエステル樹脂orナイロン毛
・植毛が密なもの
歯ブラシは、高級品を大事に何か月も使うより、100円程度のものでもひんぱんに買い替えるほうが◎なのだそう。
「私は旅行先には自分の歯ブラシを持っていきますが、ホテルに置いてある歯ブラシもちゃっかりいただいて帰ります(笑)。これを普段使うバッグに入れておけば、不意の外泊や外出先での歯磨きに使えますし、使用後には処分することもできるので、重宝します」
ブラシの毛先が開いてきたら、取り替えるタイミング。開いていなくても1か月したら交換を。毛先の開いてしまった歯ブラシで磨いても、プラークは落としきれないので要注意!
歯磨きをするときは、歯ブラシを“鉛筆持ち”するのもお忘れなく。
「床掃除をイメージしてください。ほうきを床に押しつけて強くはくより、軽いタッチでサッサッサッとはくほうがきれいになりますね。歯磨きも同じです。力まかせではなく、毛先を細かく動かして、やさしく磨いてください」
電動歯ブラシなら楽に磨けそうだけど、実は電動歯ブラシにも種類があって、効果も違う。
「電動歯ブラシは、ブラシ部分が電動で動くもの。プラークを除去するのは、音波の振動の音波ブラシ、超音波の振動の超音波ブラシがあります。歯周ポケットに入り込んだプラークのかき出しや細菌のつながりを破壊する効果が期待できるのは、超音波ブラシだけです」
超音波ブラシを使うとしても、手磨きですみずみまで磨くのをプラスしたほうがいいそう。そして、歯磨き粉について。ブラシの3分の1未満か、小豆1粒程度でOKと、意外に少なめの量。
「大量につけても、効果はさほど変わりません。むしろ、問題なのは、泡立ちや清涼感で“きちんと磨いた気分”になってしまうこと。歯磨き粉に頼るのではなく、適量を上手に使ってブラッシングしてください」
歯間ケアも欠かせない!
歯磨きに加えて、西原先生がオススメするのは、歯間ケア。歯医者さんなら必ずやっているという歯間ケアは、年を重ねた人にも必須のデンタルケアだという。
「ていねいに磨いても、歯ブラシによるブラッシングで取れる歯間のプラークは、60パーセント程度。実に40パーセントは、歯と歯の間に残ったままなのです。除去率を約80パーセントまでに上げるには、歯間ブラシなどの歯間ケアアイテムが必要になってきます」
食べた後に歯の間に詰まったものを楊枝でせせればOK! ではないそう。むしろ先の尖った楊枝でゴリゴリやると、歯や歯ぐきを傷つけて、かえって歯周病を悪化させてしまうので絶対NG。やはり、専用アイテムを使うべきなのだ。
「日本人の約8割が歯周病にかかっているというデータもあります。歯周病をなるべく早期に発見し、悪化させないためには、歯ブラシに加えて歯間ケアアイテムも活用してください」
歯間ケアにもいろんなアイテムがある。まずは、自分に合ったものを見つけましょう。
「デンタルフロスは、合成繊維などでできた細い糸状のものです。歯と歯の間に差し込んで細かくスライドすることで、プラークをかき出します。デンタルフロスは、歯と歯の間に隙間がない人のケアに向いています」
デンタルフロスを使いやすいように持ち手をつけたのがフロスピックで、使い方は同じ。これも歯の隙間がない人向きだ。
40代以降になると、歯と歯の間があいたり、歯周病や加齢などで歯ぐきが下がってくる。そんな人は歯間ブラシがおすすめ。歯の根元のプラークを、効率的にかき出すことができる。
「歯間ブラシにも、いろいろなサイズがありますので、歯の隙間に合わせて大きさを選ぶことが大切です」
歯間に限らず細かく磨けるスグレモノは、ワンタフトブラシ。ブラシの毛束が小さくまとまった歯ブラシで、小回りがきくのが特徴。ふつうの歯ブラシのヘッドでは、入りにくい奥歯や歯並びの悪い部分も磨くことができる。
「ワンタフトブラシは、凹凸のある歯並びや重なっている歯並び、孤立歯などを細かく磨くことができます。通常のブラッシングの後に、磨き残しをなくすために使うのがオススメです」
歯周病は全身の健康をおびやかす
歯周病予防は、さまざまな病気の予防にもつながる。
「歯周病が悪化すると、歯周病菌や炎症によって作り出されたタンパク質・炎症性サイトカインが歯肉の血管から血液中に流れ込むことによって、さまざまな影響を引き起こしていると考えられています。
歯周病と関係の深い病気としては、嚥下性肺炎、アルツハイマー病、糖尿病、心臓病、関節リウマチなどがあげられます」
毎日の歯磨きは、歯と歯ぐきの健康だけでなく、身体中の健康のためなのだ。
<プロフィール>
西原郁子(にしはら・いくこ)◎歯科医師。徳島大学歯学部歯学科卒業、東京医科歯科大学臨床研修医修了。都内歯科医院に勤務しながら、歯科医療の最先端技術を学んでいる。
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