「一流の人はなぜそこまで、靴にこだわるのか?」(著:渡辺鮮彦)より
カラーバリエは基本の2色とプラスα
スニーカーに限らず、最近は紳士靴であっても様々な色合いのものが増えてきました。例えば濃紺やダークグレーのものを街中で見ることも多くなっています。
カジュアル化の進展など理由は色々ありそうですが、そういった色の靴を履く前に、主にビジネスシーンで押さえておきたい、紳士靴の伝統的な色を確認しておきましょう。やはり伝統的に愛されている色は落ち着いて、すべてのビジネススタイルに合うものです。長く愛用する紳士靴を探しているなら、基本のこの2色から選ぶのが安心です。
「黒」「茶」は紳士靴の伝統色
黒色
誰が何と言っても、ビジネスシューズを代表する色はこれです。この色のスムースレザーをアッパーに用いてきちんとお手入れされたレースアップ・シューズであれば、靴のデザインにもよりますが、冠婚葬祭を含めたほとんどの場面で大丈夫。特に「信用」「信頼」を重んじる場では、この種の靴を履くのが国際的なマナー・常識であり、日本でも、金融機関や不動産・ゼネコンのような企業で働くビジネスパーソンの足元が、圧倒的にそのようなものであるのも頷けます。
イギリスでも「冠婚葬祭や仕事の時は、黒のスムースレザーの靴を履く」「休日には他の色・他の素材の靴を履く」との意識が、未だに厳格に残っているところもあります。一緒に仕事をする相手との同調性や不安にさせないための配慮を、足元で示しているのでしょうか。
茶系
この系統の革の色は日本では以下のような3つ程度にしか分類されませんが、欧米では非常に細かく分けられます。英語での表現だけで考えても、ダークオーク、コンカー、マホガニー、チェスナット、タン、エイコーン、マラッカ……もう無数にあります。そしてそれらの多くが樹皮や木の実などに因んで命名されているところに、自然、それも身の周りにある自然を愛するイギリスらしさが伝わって来るようです。
応用色は3つの「ブラウン」と「ワイン色」
ダークブラウン
黒い靴で余計な緊張感を与えるのを避けたいビジネスシーンで、代替の候補としてまず候補に挙げたいのが、この色の表革の靴です。特に秋冬の装いとの相性には優れますが、今日ではそこまで季節感を考えずに履かれていますね。流石に礼装の足元には不向きですが、それ以外なら合わせる服を選ばないので、最初の茶系のビジネスシューズとしてもお勧めです。色合いの経年変化にはやや乏しいのが、難点といえば難点でしょうか。
ミディアムブラウン
先に挙げた色名が最も多いのが、このゾーンの茶系の靴かもしれません。それだけ色合いの微妙なニュアンスを楽しんで履ける、正に茶色らしい茶色。それほど季節感を意識せずに使えますが、スーツと言うよりジャケパン姿と相性が良いような気もします。そしてお手入れ次第で色味が大きく変化してゆくのも、大きな魅力ではないでしょうか。試行錯誤を重ね自分ならではの色に育てるのを楽しめる人には、不可欠なチョイスです。
ライトブラウン
明るく軽快な印象が前に出るこの色の靴は、ビジネスシーンというよりカジュアルでリラックスした雰囲気の方が相応しいと思います。そしてスエードや型押し革はともかく、スムースレザーのものはどちらかと言えば春夏向きで、しかも色焼け・色ムラ・水ジミなどのダメージも起こしやすいので、やや上級者向けです。ただしこの色の銀付き革は、地肌にダメージの少ない最高級の原皮でしか作れないことは、知っておいて損はしません。
ワイン色系
ボルドーや「ブルゴーニュ」の英語表記であるバーガンディなど、有名な赤ワインの産地や品種にちなむ名称で呼ばれる色合いの靴です。イギリスではそれほどは見かけませんが、他の欧州やアメリカではこの色のスムースレザーの紳士靴は人気があり、ビジネスシーンでも多く履かれています。ネクタイの色と合わせるのを通じ、スーツ姿の足元にも違和感なく収まる色だからでしょうか。
靴の色は信用・信頼にもつながる
初めて会う人同士でまず見るのが、外見。ビジネスマンにとって靴の色だって信頼や信用を勝ち取るために気配りしたいもの。今回紹介した色をまず基本と考え、自分のスタイルやスーツと合う色を見つけてみてください。
『一流の人はなぜそこまで、靴にこだわるのか? (Business Life)』 (クロスメディア・パブリッシング) |