MENTAL

脳疲労回復には「アクティブレスト」。疲れているときこそ体を動かそう

はたらく人のコンディショニング事典」(著:岩崎一郎、松村和夏、渡部卓)より

朝から晩までデスクワーク。ずっと座っていたのに、なんだか全身ぐったり……。こんな症状が出たとき、体の疲れだと思っていませんか? 実はこれ、本当に疲れているのは「脳」の方なんです。それなのに、なぜか疲労が溜まるのは体の方。
その不思議なメカニズムを解き明かし、「脳」も「体」も一度にスッキリさせるリフレッシュ方法をご紹介します。

脳が疲れると体も疲れる

Multiracial group of business people sitting in a waiting room during company's bankruptcy - Depressed and tired team of businessmen waiting for a job interview - Concepts about business, bankruptcy, crisis and economic depression

疲労には二種類あります。一つは「身体的疲労」。スポーツなどで身体を酷使した際に起こります。もう一つは「脳疲労」。ビジネスシーンなどで頭をフル回転させたときの疲れ、人間関係にストレスを感じたときの疲れ、これらは全て「脳」が疲れているのです。

一日中会議が続いた。アイディアを生み出すために知恵を絞った。細かい数字と長時間睨み合っていた。
この場合、起こるのは脳疲労です。しかし、疲労の感じ方は身体疲労と同じ。疲れているのは脳でも、身体が疲れているように感じます。

なぜ、動かしていない体の方が疲れてしまうのでしょう? その理由の一つに、座りっぱなしであることが上げられます。同じ姿勢で長時間作業をしていることにより、血液循環が悪くなり、全身に酸素が行き渡らなくなってしまうのです。

 

「アクティブレスト」(積極的休養)で血行促進

Feet of a runner in park. Woman walking in the park, close up of feet. Fitness and exercising training.

血流悪化に酸素不足。体は脳の疲労を蓄積し、なまってしまいます。脳も体も一緒くたにリフレッシュしたい!そんな願いを叶えてくれる方法があるんです。その名も「アクティブレスト」(積極的休養)
「アクティブレスト」の定義は次のようなものです。

 

【アクティブレスト】……同じリズムやピッチで繰り返せる運動を 〝楽である〟から〝ややキツイ〟と感じる程度で行うこと。

 

この定義に当てはまるほどほどの運動には、ジョギングなどの軽い有酸素運動などがあります。 有酸素運動を行うと血行が良くなります。酸素を含んだ血液が筋繊維に流れ、各細胞へ十分に酸素が供給されます。それによって乳酸の分泌やカルシウムの再吸収が起こると、筋肉が収縮しやすくなります。その結果、疲れが取れやすくなるというわけです。

このアクティブレスト、実行するタイミングは疲労後24 ~ 48時間が理想。この疲労から回復までのリカバリー期にこうした運動を行うと、「超回復」という機能が働き後の回復力がぐんと高まります。

(超回復についてはこちら→はじめての筋トレ入門 最強効率たった3つのルール

 

雨の日でも大丈夫!自宅でアクティブレスト

happy baby girl with an umbrella in the rain runs through the puddles playing on nature

「ジョギングしよう!」そう思い立っても、窓の外は雨。そんなタイミングの悪い日だって、アクティブレストはできるんです。

屋外での運動が難しい場合には、踏み台を使ったステップ運動がおすすめ。ホームセンターなどで売っている20 ~ 30cmほどの踏み台を用意し、一定のテンポを 保って昇降しましょう。

「ステップ運動は運動として軽すぎるのでは?」そんな疑問を持ったら、実際に消費カロリーを計算をしてモチベーションをあげるのもいいですね。昇降運動の場合の消費カロリーを見てみましょう。


体重60kgの人が昇降運動を行うと……。

→1時間あたり324kcalの消費カロリー

ジョギングの消費カロリーと比較してみます。

体重60kgの人がゆっくりペースのジョギング(時速8km)を行うと……

→一時間あたり480kcal の消費カロリー


カロリー消費の代表格であるジョギングと比べても、室内運動としては十分なカロリー消費量です。

ちなみに昇降運動の消費カロリー値は、次の式でより正確に計算できます。

体重(kg)×時間(分)×0・09 ×補正係数=消費エネルギー(kcal)

(補正係数は年齢、性別によって変動します。自分に当てはまる数値を入れて計算しましょう。)
この数値はペースや台の高さに左右されるので、あくまで目安ですが、ぜひ参考にしてみてください。

 

脳疲労に効くストレッチ2選

脳疲労はストレスによっても引き起こされると言われています。

「ストレスそのものを解消しないと脳の疲れもとれないのでは?」

そんなことはありません。ストレス源が解消できなくても、脳疲労はストレッチで解消できます。

ポイントとなるのは、首と肩の境目にある僧帽筋上部繊維という筋肉。ストレスが溜まると硬くなる部分です。ここをストレッチでほぐしていけば、脳の疲れも徐々に和らいでいきます。

 

脳疲労をとるエクササイズ その1

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①足を軽く広げ、こぶしを握って両手を上げます。

②踵は床から浮かせて、思い切り伸びをするようなかたちで全身に力を入れてください。

③この姿勢を 10 秒ほどキープしたら、一気に脱力。 膝までしっかり曲げて、全身の力を完全に抜き切 ってください。

④同じ動きを 2 ~ 3 回くり返します。

脳疲労をとるエクササイズ その2

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①両手を握りしめ、肘の角度が直角になるように して両腕を肩の当たりまで上げます。

②さらに両腕 を後ろに引っ張り、肩甲骨を内側にぎゅっと寄せま す。

③この状態を 15 秒ほどキープし、一気に全 身の力を抜いて身体を前に倒します。

④ここまでを 2 ~ 3 回繰り返したら、両肩と耳をできるだけ近づ けます。

⑤全身に力を入れたまま 15 秒ほどキープ したら、一気に脱力。身体を前に倒します。

⑥ 2 ~ 3 セット繰り返しましょう。

いかがでしたか? 室内でも、座っていてもできるアクティブレスト。オフィスや通勤時など日常のあらゆるシー ンでとり入れて、脳の疲労をためない工夫をしていきましょう。

 

書籍のご案内

記事の内容をさらに知りたい方はこちらの本をお読みください。
 

About the author

岩崎一郎, 松村和夏, 渡辺卓 

監修者

岩崎一郎(いわさき・いちろう)
脳科学者・医学博士。京都大学卒業後、米国ウィスコンシン大学大学院で博士号取得。
通産省主任研究官、ノースウェスタン大学医学部脳神経科学研究所の准教授を歴任。
帰国後、国際コミュニケーション・トレーニング(株)を設立し、
脳科学を活用した集合知性を発揮する企業研修や経営に役立つ脳科学講演を提供している。


松村和夏(まつむら・わか)
女子栄養大学卒業。管理栄養士、調理師、食生活アドバイザー、ソムリエ資格所有。
看護学校、大学院に講師として勤務するほか、飲食店のメニューアドバイザー、
野球選手などスポーツ選手への栄養指導など幅広く活躍している。


渡部卓(わたなべ・たかし)
産業カウンセラー、エグゼクティブ・コーチ。
帝京平成大学現代ライフ学部教授、(株)ライフバランスマネジメント研究所代表。
職場のメンタルヘルス・コミュニケーション対策の第一人者であり、
講演・企業研修・コンサルティング・教育等における多数の実績を持つ。

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