「競争社会」では自己肯定感を持ちづらい
いまの社会は、自己肯定感を育てることが、とても難しい時代だと思います。それは、社会全体が「自己否定人間」をたくさん作り出すようにできているからです。
それはなぜでしょうか?
一言で言えば、「競争社会」であることが大きいと思います。学業にしても、仕事にしても、私たちは何らかの形で競争にさらされています。すると、必ず成績でトップを頂点にして階層ができてしまいます。
競争社会というのは、基本的にトップの人しか肯定感が得られない社会です。トップの人を頂点にしたピラミッドで、下に行くほど負けた人が多くなります。
現代社会は、負ける人を生み出すことによって成り立っていると言っても過言ではありません。
このような社会では、多くの人が自己肯定感どころか、自己否定感を背負わされてしまうのです。すると、全体としてプラス思考よりも、マイナス思考が強い社会となります。
マイナス思考が優勢の社会は、突出したプラス思考人間を排除する傾向があります。
「出る杭は打たれる」というやつです。
閉塞した社会の空気感というのは、確実に私たちの脳の働きに影響を与えます。
雰囲気や空気感を察知する働きの中心にあるのは「右脳」です。右脳が優勢になると、どうしても社会全体の空気に流され、自己否定的な思考になりがちなのです。
言語的な処理をする左脳を働かせ自己肯定へ
そこで、「左脳」を働かせることでバランスを取ることが必要になります。右脳が非言語的な領域に対して、左脳は言語的な処理をする領域とされています。自己認知も自己評価も、言語を通じて行います。
「私は手先が器用で、モノづくりが得意だ」
「プレゼン能力は人よりも高いものがある」
「周りの人たちとコミュニケーションを取っている分、協力を得やすい」
など、自分の強みを言葉にして再認識するのです。
それによって、右脳優先で自己否定に傾きがちなところを、左脳の言語の働きで自己肯定の方に引き寄せることができるのです。
逆に、左脳があまりにも優先していると、これも正しい判断を誤ることがあります。
ふだんの会話には、交わされた言葉上の意味だけではなく、非言語的な意味が含まれていることが往々にしてあります。
たとえば、上司が部下であるあなたに向かって、「そろそろ自分で仕事を生み出さないとダメだ!」と激を飛ばしたとしましょう。言葉そのままの解釈だと、言われたことだけやっているあなたの仕事の仕方を否定しています。
しかし、そのときの前後の状況や上司との関係性、上司の表情やしゃべり方によっては、違う意味が盛られている可能性があります。
「もう、そのくらいの力があるのだから、頑張れ」
そんな、激励のニュアンスが強い場合もあり得るのです。実際、日常のやり取りでは、このような非言語メッセージが反映されていることがしばしばあります。
ところが左脳では、非言語メッセージをキャッチすることが難しいです。左脳優先で解釈すると、言葉通りに自分が否定されたかのように感じてしまうのです。
その結果、上司があなたに期待をしているのにもかかわらず、「自分は上司の評価が低い」とか「あの上司は全然自分を認めてくれない」と、真意を汲み取ることができなくなってしまうのです。
大事なことは、左右の脳をバランスよく使うことです。
とくに、いまの社会的な状況は、放っておくと雰囲気や空気感のなかで自己否定の方に流されがちです。とくに左脳を働かせることに意識を向けることが必要でしょう。
「脳の名医が教えるすごい自己肯定感」(著:加藤俊徳)より
『脳の名医が教えるすごい自己肯定感』 (クロスメディア・パブリッシング) |