良い睡眠は仕事の疲れを取るために最も必要な要素の一つです。しかし、疲労・ストレスが持続すると、寝付けない、起きられないなどと睡眠に悪影響を及ぼし、心身の健康を損なう原因になります。
そこで今回は、書籍『「辞める人・ぶら下がる人・潰れる人」さてどうする?』(上村紀夫著)から、社員の「睡眠の質」をチェックし、メンタル不調に対応していく方法を紹介します。
「睡眠の質」から社員のメンタル悪化に対処する
メンタルの悪化具合は睡眠の質で測ることができます。
睡眠不足な社員への対応:生活リズムの改善を
メンタル不調を疑う方がいる場合、睡眠にとくに影響が出ていないのであれば、様子見として経過観察します。睡眠時間が足りていない場合、自身で時間を増やせるのであれば、生活改善を行い、十分な睡眠時間を取るよう指導し、様子見をします。
睡眠の質が悪い社員への対応:病院への受診が必要に
問題はここから先です。「寝付くのに1時間かかる」「2時間おきに目が覚めてしまう」など睡眠の質が悪化すると、もはや自力で改善は難しくなります。薬による治療を受けることが最善策となるため、クリニック受診をおすすめします。投薬しながら様子見をしても改善しないときは、就業制限や休職を検討する必要が出てきます。
ストレスが原因で「睡眠障害」を引き起こすメカニズム
最も警戒すべきは「疲労の突き抜け」です。
「忙しい業務で疲れたら、よく眠れるのではないか?」と思う方もいらっしゃいますが、むしろ逆です。
仕事の疲労がやがて「過緊張状態」を引き起こす
例えば、疲れが蓄積しはじめのころは、「3時間しか眠る時間は取れないが、ぐっすり寝られる」と言っていた人でも、疲労の蓄積が継続していくと、緊張のスイッチが入りっぱなしとなり、自律神経失調症の一種である「過緊張状態」になっていきます。
その影響で睡眠の質が低下し、「寝る時間があまり取れない」だけでなく「寝つきが悪く、途中で目が覚めてしまう」など睡眠の質の悪化が起こります。
疲れが取れないので“イライラ”が加速する
その状態が継続すると、精神状態に影響し、感情的な発言・行動が目立つなどメンタル不調が進行。周囲から見ても「ちょっと最近、おかしいよね」と言われるような言動が見られます。
疲労が溜まり、睡眠の質の悪化が起きているときは、このような「疲労の突き抜け」現象に陥っている危険があり、注意が必要です。
社員のメンタル状態は「ちゃんと眠れてる?」と声かけしてチェック
では、疲労が溜まっているであろう社員に、どのように調子を確認したらいいのでしょうか。言動がいつもと違う人に「ちょっとお前、おかしくないか?」と声をかけても「いいえ、大丈夫です」と反応する人がとても多いのです。全く自覚がない中で、「ちょっとお前、おかしくないか?」と言われたらムッとするかもしれません。
まずは、「ちゃんと眠れてる?」と声をかけてみてください。先程のメンタル状態についての質問とは異なり、睡眠状態については正直に話してくれることが多いため、結果的にメンタル状態の把握につながります。
「睡眠の質」をチェックして睡眠改善につなげるには
「このごろ、よく眠れている?」と声をかけて、「それがいまいちで」と返ってきたら、睡眠の質をチェックしていきます。
「夜中に起きたりする? 寝付きが悪い? 朝、起きられない?」といった点を聞き、睡眠の質の悪化を確認したら、「自力での改善は難しいので、睡眠改善を目的にクリニックを受診してみては?」と促してみましょう。
メンタル不調のサインは「寝過ぎ」に現れることも
また、睡眠障害のほとんどが不眠ですが、過眠という症状が出ることもあります。新型うつなどで見られる症状で、普段よりも長く眠ってしまい、かつ起きたときに疲れが取れてない、というサインにも注意が必要です。