すべての健康は歩くことから
走ることは脳や心、そしてもちろん体にもいい、それはわかる。
それでも、やっぱり走るとなるとハードルが高い。
運動がまり得意でない人や、これまで体を動かす習慣がなかったという人は、そんな風に感じてしまうかもしれません。
では「歩くこと」ならどうでしょう?誰でも毎日、行う「歩く」という行為。今回はそこに着目してみましょう。
「歩く」と「走る」の違い
歩く。走る。有酸素運動の代表的なものとして挙げられるウォーキングとランニングですが、さらにもう少し細かく分類すると、ウォーキング、ジョギング、ランニングと分けられます。
それぞれの違いは何なのでしょう?エクササイズという観点でみると、単にスピードが速いとか遅いというだけではなく、それぞれにメリットとデメリットがあります。では、ひとつずつ見ていきましょう。
・ウォーキング
ウォーキングを定義する上でまず押さえておきたいことは、どんなにスピードを出しても左右の足のどちらかが必ず地面についているということです。両方の足が宙に浮いてしまった時点で、それは「走る」とみなされてしまいます。
例えば、陸上競技の競歩においても、両足が地面から離れると減点されますが、これはあくまでも「歩く」ということにこだわった協議であるが故のルールです。
ウォーキングの場合、常に地に足が着いていますので、足首や膝などにかかる衝撃が小さく、運動が習慣化していない人でも怪我や障害ノリクスが少なくなるというメリットがあります。
・ジョギング・ランニング
ジョギングは、ひとことで言えば「ゆっくり走ること」です。もちろん感覚には個人差がありますので、その点は注意してください。
まず、ウォーキングと決定的に違うのは、両足を地面から離す瞬間が走行周期にあるということです。
両足が宙に浮いた後で片足ずつ着地するため、この衝撃が腰や膝への負担になります。基本的に1㎞の距離を5分以上の時間をかけて走るのがジョギングになります。
そして、このジョギングの延長上にあるのがランニングというわけです。ランニングは1㎞の距離を5分以内とスピーディーに走るため、運動量、消費カロリー量はジョギングやウォーキングに比べて多くなることが特徴です。
辛いときはハードルを下げることも必要
運動神経がない人、ブランクがある人は、最初はウォーキングから開始し、強度を上げられるようになった時点でジョギングに切り替えるというようなプログラムにしてもよいでしょう。
強度のステップアップは競技種目を変更するだけでなく、運動時間でもコントロールできます。
たとえば、もう少し体力のある人であれば、最初はジョギングを5分程度から開始し、徐々に運動時間を増やしていくようなプログラムがそれに当たります。
大事なことは、最大心拍数の70%くらいで運動する習慣を継続することなのです。
ただ、ウォーキングよりもジョギングの方が、自分のペースで走っているだけにもかかわらず、効率よく心臓へ負担がかかり、短時間で有酸素効果が得られやすいのも確かです。
上記をまとめると、効率よく海馬に適度な刺激を与えたい場合は、ジョギングが有酸素運動の中で最も脳を鍛えることのできるといえるでしょう。
研究対象に「歩く」が多いワケ
有酸素運動が脳に与える影響を見ている研究では、なぜかジョギングではなく、ウォーキングを有酸素アイテムとしているものが目立ちます。
これはジョギングよりもウォーキングの方が優れているということではなく、研究アイテムにウォーキングを扱わざるを得ない、いくつかの理由があるからです。
まず、研究の対象者の特性が挙げられます。
研究はできるだけ成果が明確に出るように、普段から運動習慣がある人ではなく、運動習慣のない人を選定します。そのため、運動習慣のない人にいきなりジョギングをしてもらうわけにはいかないので、安全にできるウォーキングが有酸素運動として都合がいいのです。
また、研究対象者の年齢や身体能力も関係しています。これまで「有酸素運動が脳にどのように影響を与えるのか」というような題材をテーマにした研究では、放っておくと海馬が委縮するような年齢層の人が対象者に選ばれていました。つまり、放っておくと脳が衰えるのですが、有酸素運動をすることで脳がよみがえったという結果が出やすいのです。そのため、高齢期の方たちを対象者とする研究が多く、その方たちの体力を考えるとジョギングは適さないだけなのです。
運動を研究する場合、種類は違っても、運動強度や運動頻度をそろえることができるので、ウォーキング・ジョギング・ランニングという区別は特に必要ありません。自分の身体能力や生活習慣に合わせたものを取り入れるとよいでしょう。
ウォーキングからはじめてみよう
走るのは素晴らしい。体にも脳にもいい。走った方が得をするに違いない。それでもやっぱり、走るのには勇気がいる。
そう感じたなら、まずはウォーキングからはじめてみてください。あなたの中の意識を変えるのは、その最初の一歩かもしれないのですから。
「走れば脳は強くなる」(著・重森健太)より
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